俺にも使えるかな
ぐらり、と。大型ゴブリンが背後へと倒れる。
キコリの経験上、頭を割られて生きているモンスターには今のところ会っていない。
大型ゴブリンであろうと、それは同じであるはずだった。
しかしそれでも万が一ということがある。斧を構え、大型ゴブリンを遠回りにしながら……キコリは杖ゴブリンを見据える。
倒れた大型ゴブリンとキコリを交互に見ていた杖ゴブリンはキコリに杖を向けて何かを叫んで。
しかし、何も出ない事に気付き「ギイッ」と悲鳴のような声をあげて身を翻す。
一瞬、罠かもしれないと思った。
けれど、キコリの投げた斧が杖ゴブリンに刺さって倒れたことで「そうではない」と気付く。
「は、はは。まさかさっきの魔法……2回しか使えないのか」
それはそうだ。無限に魔法を……あんな痛いものを使えるというのなら、そんなズルいことはない。
便利で強いものには何かの制限がある。それは世界の摂理だ。
キコリは斧の刺さった杖ゴブリンに近づき……それがすでに絶命していることを知ると「ははっ」と笑う。
「勝った。勝てちゃったよ。ははっ、強いって勘違いしちゃいそうだ」
そんなはずもないのに。オークにマトモに勝てる実力もないくせに。
ちょっと大きなゴブリンや、ちょっと魔法が使える程度のゴブリンに勝ったくらいで調子に乗るわけにはいかない。
キコリは魔石を回収し、杖や斧を拾って。今度こそ帰ろうかと思った時、幾つかの武器がない事に気付く。
「弓が無いな……」
こん棒もない。まさかゴブリンが他にもいて、持って行ったのだろうか?
油断も隙も無いが、そんなゴブリンがこっそり来て武器を持って行ったという事実にキコリはゾクリとする。
「凄いなゴブリン。俺よりよほど度胸あるんじゃないか……?」
実際、先程戦った中にあの大型ゴブリンと杖ゴブリンがいたらどうだっただろうか?
杖ゴブリンの魔法はキコリに致命的な隙を作っただろうし、大型ゴブリンだけでキコリは精いっぱいになったかもしれない。
撃った弓も当たらなかったし、キコリには投げナイフと斧くらいしか手段がない。
こん棒も使ってはいるが、斧を振った方が余程威力は大きい。
そして投げナイフは、あの大型ゴブリンにも弾かれた程度でしかない。
「……」
つまり、キコリの有効手は実質斧しかない。
それもオークレベルであれば通用しなくなる。
ならば、何か他の手段を模索するしかないが……キコリの頭に浮かんだのは、あの杖ゴブリンの使っていた魔法だった。
あれを使えたら、オークにも通用するんじゃないだろうか?
「魔法……俺にも使えるかな」
アリアに聞いてみよう、と。キコリはそんな事を考えていた。
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