訳アリ品ってことですか

 幾つかの依頼を確認すると、キコリは再びミルグ武具店へと向かう。

 暇そうに欠伸をしていたミルグはキコリを見ると「ん?」と声をあげる。


「片刃のバトルアクスか。つーか、ウチの品だなソレは」

「あ、そうなんですか?」

「おう。委託に出してたやつだ。それなら俺が相談のってやったのによ」

「なんかすみません」

「いや、いいさ。アリアへの義理もあるんだろうしな」


 言いながら、ミルグはキコリが差し出した古い斧を受け取る。


「で、古いのを売りにきたってわけだ」

「はい。えっと……売れますか?」

「んー。まあ、売るのは正解だ。さっきも言ったが、こいつはそろそろ限界だからな」


 ミルグは斧を軽く撫でて「ふむ」と頷く。


「ま、次に木にぶち当てただけでも欠けただろうな。持ち手も結構限界がきてる。元々古そうだし仕方ないとも言えるが……」

「貰い物だったので……」

「そうか。ま、買い取り額はオマケして400イエンだな」

「ありがとうございます」

「いいってことよ。で? ついでに何か買っていくか?」

「うーん……防御をもう少しどうにかしたいなって思ったんですけど」


 並ぶ鎧を見ながら、キコリは考える。

 やはり、もう少し防御を強化したい。

 しかしアリアの話を聞いた後ではチェインメイルを買うのは躊躇してしまう。

 そもそも買えるかという話もあるが……。


「それなんだがな。丁度いいのがあるぞ」

「え?」


 ミルグの後をついていくと、ミルグはキコリに店内に飾ってあった服のようなものを示す。

 見た目は少し厚手の服に見えるが……一体なんだろうか?


「クロースアーマーだ。ま、布鎧だな」

「布の鎧、ですか?」


 防刃服みたいなものだろうか、とキコリは思う。確か前世でそういうものがあったはずだ。


「着ていりゃあ、弱い斬撃や刺突程度ならどうにか出来る代物だ。モンスターの毛で作った糸で作った布だから、少しばかり丈夫っていうオマケつきだ」

「凄そうですけど、高いんじゃないですか?」

「そう思うだろう? ところがこいつは2000イエンだ」

「やっぱりそれなりのお値段なんですね」


 頷くキコリにミルグは「おいおい」と呆れたような声をあげる。


「言っとくが、すげえ安いんだぞ。余ったモンスターの毛を色々混ぜてるからこその価格だ。本来、こういうのを買おうと思ったら倍以上はするもんだ」

「訳アリ品ってことですか?」

「そこまでアレじゃねえよ。どっちかというと賄いみたいなもんだな」

「なるほど……買います」

「よし、良い判断だ」


 別にキコリは高級品だの規格品だのにこだわる性格ではない。

 安く良いものが手に入るのならば、それが一番いいに違いない。

 そういう考えの持ち主なのだ。

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