強そうだけど

「は、ははは……勝った。勝っちゃったよ……」


 どう考えても勝てる相手ではなかった。

 実力差は明らかで、オークがキコリをナメて2度目のバックステップをしていなければオークの勝ちだっただろう。

 あの場で鉈剣を振り下ろすだけで、オークが勝っていたはずだ。

 けれど、勝った。生き残ったのはキコリだ。

 勝利の余韻に浸ろうとしたキコリは……視線の先に、こっちを見ているゴブリンがいるのに気付いた。

 放たれたゴブリンの矢が、キコリの隣の木に刺さって。キコリは反射的に立ち上がる。

 腰にある最後のナイフを投げるとゴブリンは慌てたように木に隠れ、その後ろの木にナイフが突き刺さる。

 けれど、その隙があれば十分だ。キコリは走り、斧を引き抜いてゴブリンへと襲い掛かる。

 ガン、と。まるで木を切るようなスイングがゴブリンに突き刺さる。

 

「ギ……!」

「まだいたのか!」


 こん棒持ちのゴブリンに、キコリは斧を構え襲い掛かる。

 防御しようと上に構えたこん棒は、しかし振りおろされる斧の重みに耐えきれずにゴブリンの頭を強く殴りつける。


「ゲアッ……」


 よろけたゴブリンを、斧で叩き割る。オークに比べれば、容易いことだった。

 キコリは投げたナイフを回収してゴブリンの魔石2つを抜き取ると、オークの魔石も抜き取る。

 それはゴブリンの魔石よりもずっと大きな……そんな魔石だった。


「凄い……これならきっと高く売れるよな」


 魔石の相場はまだ分からないが、少なくともゴブリンや角兎のと同じ1000ということはないだろう。

 とはいえ……もう1度オークを倒せと言われても、きっと無理だろう。

 兜を被っていたとしても、今転がっている鉈剣を振るわれれば諸共真っ二つであろうことは間違いない。

 そう、その鉈剣も今回の成果の1つだ。

 キコリは鉈剣を持ち上げてみて、軽く溜息をつく。


「強そうだけど……大きすぎるな」


 オーク程のパワーがあるならともかく、キコリの筋力ではマトモに振り回せないだろう。

 振り回したとして、その辺の木にひっかけてしまう未来が見えるようだ。

 これは売ろう。そう考えて、キコリは今日の戦果を計算する。

 角兎の魔石が2個、オークが殺したやつも含めゴブリンの魔石が5個、オークの魔石が1個。弓と矢、矢筒が1セット、オークの鉈剣が一振り。すでに持ちきれない程だが……。


「この弓矢って、売れるのか……?」


 まあ、持ち帰って聞いてみよう。

 そう考え、キコリは英雄門を潜り町へと戻っていく。

 まず行くべきはミルグ武具店。そこで重たい荷物を処分するつもりだった。

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