あんまり子供っぽくないですよね

 外で待っていながら、キコリは「さっきのはどういう意味なんだろう」と考えていた。

 まさか泊めてくれるという話ではないだろう。

 そんな関係になった記憶はないし、そういうことになるとも思えない。

 と、なると……。


「なんだかんだで借金させて奴隷労働……」

「何を人聞きの悪い事言ってるんですか」


 ゴン、と頭を叩かれてキコリは思わず振り向く。

 すると、そこにはまるで冒険者のような装備を纏った職員がいた。

 明らかにオーダーメイドと分かる鎧と兜、手に持つのは両刃のバトルアクスと、なんとキコリと同じ丸盾だった。


「じゃあ、行きますか」

「え、何処へ?」

「何処って。貴方の宿代稼がなきゃ。そうでしょう?」


 スタスタと歩いていく職員に慌ててついていき、キコリは目を白黒させる。


「え? なんていうか。いいんですか?」

「何がですか?」

「特定の冒険者に肩入れとかってマズイんじゃ」

「ふむ」


 ピタリと立ち止まると、職員はキコリをじっと見る。


「昨日見た時にも思ったんですけど……あんまり子供っぽくないですよね」

「え」

「商品を見る目が、詳しくない割にこなれてるっていうか。憧れで選ばない辺り、妙に大人びてるんですよね」

「それは……まあ、1人で生きなきゃですから」

「今のもそうですよね。『特定の冒険者に肩入れ』がどうとか、言ってる事が中央の役人みたいです」


 やってしまった。キコリは「またやってまった」と、嫌な汗をかくのを感じていた。

 公平がどうのっていう概念自体があまり一般的ではないのを知っていたはずなのに、また余計な事を言ってしまった。

 どうすればいい。考えて、しかし言葉は出ない。


「え、と……」

「まあ、良いか悪いかで言えば良いんです。見込みがありそうなのに肩入れするのも仕事の内ですから」

「そうなんですか?」

「そうですよ。肩入れの仕方も人それぞれですけどね。ワリの良い仕事を紹介したりとか」

「それなら、職員さんはなんで俺に」

「アリアです」

「え?」

「私はアリアです。どうぞよろしく」

「え、あ、はい。よろしくお願いします」

「さっき自己紹介したんですけどねー」

「ご、ごめんなさい」

「いえいえ、構いませんとも」


 キコリの返事に笑うと、アリアは再びスタスタと歩き出す。


「さ、行きますよキコリ。私が狩りっていうのをレクチャーしてあげます」

「はい! あ、でもまだ理由聞いて……」


 追いかけるキコリに、アリアは振り向いて笑う。


「ちょっと好みなのでツバつけとこうかなーって」

「ええっ!?」

「冗談です。さあ、行きますよー!」

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