意外と合ってると思うんですがねえ

「というかですねー、貴方まずはポーションじゃないですか?」

「う……」

「そんな明らかにズタボロな身体に防具つけてもマトモに扱えるとは思いませんがねえ」


 そう、ゴブリンとの連戦で高揚したテンションは去りつつある。

 何度もゴブリンのこん棒に殴られた身体はズキズキ痛むが……斬られたわけではないから寝れば治るかと思っていたのだ。


「その、寝れば治るかな、と」

「動けなくなっても知りませんよ。翌日動けないけど宿代払えませんって言っても容赦なく放り出されますからね」

「うぐ」

「そしたらせっかく買った防具も追剥ぎに……」

「いるんですか、追剥ぎ」

「いますよ」


 当然でしょう、と言う職員にキコリは思わず黙り込んでしまう。

 これもセールストークの一種とは分かっている。分かっているが、あまりにもその通りなのだ。


「……一番安いポーション、お幾らですか?」

「高い方が効きますよ?」

「そんなお金はないので」

「1000イエンです」


 ポーションの瓶を振りながら手を差し出してくる職員にお金を渡そうとして……キコリはその手をピタリと止める。


「そういえばポーションも委託販売なら、余所で買った方が安いんじゃ」

「余計な事に気付きますね、貴方も」

「……」


 思わず無表情になって職員を睨むキコリに、職員は咳払いしながら「でもですね!」と声をあげる。


「ポーションにだってギルドの保証がついてるんです。一定以下の品質のポーションを弾く安心の基準があります。無駄に安くて効かないやつとか、高いのに効かないやつとか……貴方、見分けられます?」

「……いえ、無理です」

「でしょう? なら此処で買っときなさい」


 確かに、ポーションで無駄なお金を使っている余裕はない。

 ギルドの保証があるというのなら、見分ける自信ができるまではそちらの方が良いのは確かだ。


「なら、1本ください」

「はい、毎度」


 ポーションを開けて、飲む。

 すると身体の中から痛みが消えていき……ゴブリンに打撃を受けた跡が目に見えて治っていくのを感じていた。


「すごい、これがポーション」

「ま、そのくらいはね。うんうん、明らかに顔色良くなりましたね」


 頷く職員にキコリは「意外と優しい人なのかな……」などと思う。

 しかし、防具の問題は一切解決していない。

 一晩ゆっくり考えてからでもいいのかもしれないが……。

 

「で、他には何か買いますか?」

「オススメって、ありますか?」

「そこの4000イエンの盾ですかね」

「えーと、考えておきます」

「意外と合ってると思うんですがねえ」


 まあ、それはキコリも思う。

 思うが……4000イエンの買い物となると、防御に向いていない盾を買うのは躊躇われたのだ。

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