第7話 婚約破棄 アドリアン視点
生徒会活動の方はメンバー同士の関係も悪くなく、特に大きな問題は発生しなかった。
自分を含めて成績順で選ばれただけはあって、それぞれ自分の役職をきちんと責任を持って務めている。
容姿だけで判断して”こんな奴の指示には従えない”なんて言う者がいなくて助かった。
ワーズ学園は貴族子女が通う名門学園で、このワーズ学園の生徒会で生徒会役員として選ばれ、活動していたということは、貴族社会において大変なアドバンテージになる。
本人自身の名誉は言うに及ばず、実家にとっても自分の子が生徒会所属というのは名誉となる。
特に卒業後に王城勤めの文官を志望する生徒にとっては、ここで生徒会役員に選ばれると配属先も人気のある花形部署に配属されやすくなる。
私達の中では、二コラとアレクシスは将来文官を目指している。
どちらも家は継げないという事情から文官を目指しているらしい。
生徒会活動は放課後に行われ、学園行事の企画運営が主な仕事になる。
各学期ごとに何かしら行事があるので、大体は教師から預かった予算を元に学園行事を成功させると言って過言ではない。
お茶会やダンスパーティーなど貴族的要素が絡む行事が大半なので、トラブルを起こさないよう気をつけねばならない。
生徒会活動をするにあたり、教師や生徒の意見を聞きに行ったり、行事の宣伝の為に校内に掲示物を貼ったり、行事の開催予定場所の下見をする時に、副会長のフローレンス嬢とばかり行動していたら私とフローレンス嬢、二人で一セットと認識されるようになった。
言い訳になるが、フローレンス嬢を連れていると職務上都合が良かっただけで、別に二人で一セットの認識になるように狙った意図はない。
フローレンス嬢はこの件について気づいているだろうに何も私には言って来なかった。
私とフローレンス嬢は生徒会長と生徒会副会長という関係からはみ出た関係ではなかった。
はみ出た関係ではなかったけれど、彼女に対して仄かな好意は持っていた。
生徒会は割と順調だったが、ユージェニー王女殿下の件はあまり状況は良くなかった。
それと言うのも王女殿下は見た目の良い男子生徒に近づいて、取り巻きを作っているようだから。
しかも王女殿下の身分が高い為、取り巻きになった男子生徒の婚約者は男子生徒には注意出来ても、王女殿下に自分の婚約者を取り巻きにしないで欲しいというような注意が誰も出来ない。
この状況はよろしくないと思い、一度注意しに行く。
注意する為に会いに行った時も殿下は普通に取り巻きに囲まれており、私が来たことを認識すると顔を顰めた。
「ユージェニー王女殿下。王女殿下の行動は私の耳にも入っております。今すぐそのような行動はおやめになりますよう」
「なんでわたくしがあなたの言うことを聞かなくてはならないのよ! わたくしは王女よ? 好きにして何が悪いのよ!」
「王女殿下。このままだとあなた、女子生徒の友達を作るどころか女子生徒は誰も相手にしなくなりますよ。それでもよろしいのですか?」
「わたくしを自分に引き留めておけない自分の情けなさが浮き彫りになるからそんなこと言っちゃってるだけでしょう? あなたに心配されなくても王女たるわたくしには女子生徒は逆らえないんだから気にすることはないわ。あなたに付き合ってる時間が無駄よ。皆行きますわよ」
王女殿下は取り巻きを引き連れて去って行った。
やはり話は通じなかった。
この後も幾度となく注意はしたが、一向に聞く耳を持たず、全くの無駄足だった。
その内に王女殿下はある一人の男子生徒に入れあげる。
その男子生徒はクレメント・グラミリアン。
グラミリアン男爵家の長男だ。
ただし、グラミリアン男爵家は黒い噂が絶えない家で、まともな家ならお付き合いを遠慮する家だ。
これまでの注意の結果から言って私が言ったところで素直には聞き入れないことはわかっている。
何度注意しても聞き入れてはくれない王女殿下に、もう何かを言う気力はなかった。
注意を聞き入れず痛い目を見てもそれはもう本人の責任であり、自業自得だと言っても良いだろう。
そう思った矢先にダンスパーティーで婚約破棄された。
これで王女殿下からやっと解放されてほっとするが、その後フローレンス嬢に婚約を提案されて驚いた。
けれど、初恋の少女で、外見が地味で根暗でも嫌な感情を出したりせず受け入れてくれた彼女とならばと思い、申し出を受け入れることにした。
こうしてフローレンス嬢と婚約することになった。
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