Vier

 モードレッドはオベロンの提案を呑み、謎の騎士とともにカンタベリーまで退却した。アーサー王は軍勢を強めつつ、いずれここまでやって来るだろう。万全の態勢を整えなければ、痛手を負うのは目に見えていた。

「モードレッド卿。全ての成り行きは、どうか私にお任せください。我々を苦しめる敵兵は、私が責任を持って排除します」

 イセは可愛い声で言い放つと、他の騎士とともに天幕を張りに行く。背格好こそは子どもだが、行動はすでに大人のそれだった。

「どうだ、やつの様子は。中々頼りになりそうだろう?」

「どうだかな。口だけは立派なようだが」

 ひらひらと飛び回るオベロンを一瞥し、モードレッドはすでに張られた天幕の中へと入った。アーサー王軍が優勢とは言え、こちら側も決して太刀打ちできない人数ではない。ランスロットを信頼し、アーサー王に不信を抱いている騎士たちが、未だ彼の傍に控えているからだ。

「口だけかどうかは、じきに分かるぞ。貴様も楽しみにしていろ」

 オベロンはそう言いながら、面白そうにクスクスと笑った。彼が背中を震わせると、羽から落ちる美しい金の粉が、モードレッドの肩に降り掛かる。

「……ふん」

 妖精の態度からは、遊び半分の意図が滲み出ている。苦境に片足を突っ込んでいるモードレッドにとって、彼の様子は不快以外の何物でもなかった。……しかしその心境も、数日後には一変することになる。

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