パパジウム

 「おかーさん、またお父さんのパンツと私の服一緒に洗濯したでしょ」


 ももかは怒り心頭であった。

 中学三年の彼女にとってお父さんの洗濯物と自分の洗濯物を一緒にされたくないのであった。

 それと寝転んでいきなりぶっーとするのも彼女の悩みの柿の種である。これはそんな彼女の物語。


 リビングのソファでスマホのゲーム、けものの森をやりながらももかはお母さんに聞いてみた。

 「ねぇ、お母さんはなんでお父さんと結婚したの?」


 カチャカチャと台所で皿を洗っていたももかのお母さんが聞き返した。

 「どうしたのよ急に」

 「だってさぁ、お酒飲んで酔っぱらったりプーしたり靴下が臭いじゃん、面白くないオヤジギャグ言うし」


 お母さんはふふと懐かしそうに遠くをみた。


 「パパジウムが素敵だったからよ」


 謎の単語が出てきたのでももかはえっ?とスマホからお母さんに目をやる。


 「なに?パパジウムって?」

 ももかは初めからかわれているんじゃないかとむっとして少し強めに聞き返した。


 「パパとわたしは一緒の会社に勤めていたのは知ってるでしょ?」

 「まぁ、うん」

 職場結婚だと言うことは聞いた事があったがパパジウムという謎の言葉は分からなかった。


 「パパジウムはキラキラしてて感動できるもの。じゃあももかにも見せてあげるパパジウムを……」

 お母さんはももかにウインクしてみせた。


 お父さんが勤めている会社は鉄で出来たケロヨン人形を運ぶ仕事であり重要かつ大変な労力を必要とされる。

 その責任者でお父さんも箱に入った鉄のケロヨン人形を運ぶ。

 その会社の見学を山下さんに頼み(山下さんはこの界隈で顔が広い人なので見学はできたのだ)

 あっ!ももかは思わず声をはっした。


 お父さんの汗

いやパパジウムがキラキラ光っていたのだ。


 ももかはそれがすごくかっこよく見えてお母さんの気持ちが分かった気がした。

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