切望の章

勇者たるもの

魔王という名の悪を殺す

それが俺の役割だ



蒼天は雲のかげりひとつなく、

太陽は燦々さんさんと輝き、

熱を帯びた光を降り注がせる世界


風が心地よく吹き荒れ、海が生命を運び繋ぎ、

大地が雄々しく、森が恵みをもたらす世界


そんな、世界を創り、

これから生まれ来る命に恩恵をもたらす


その為に、

俺は、魔王を殺すのだ



一対多数で天秤が傾いた代表が勇者で

もう反対の代表が魔王


この世界は多数決

天秤が沈み切った方が正義で、

もう片方は悪なのだ


狂っていると思われるかもしれない


でも、俺の愛したもの達の多くは

沈み切っている皿の方にいる


全てを失わないために、俺は選んだ

いや、選ばざるえなかった



魔王を討った後、

きっと俺は脅威となり、

今度は俺が浮き上がる皿に乗ることだろう



例え、そうだとしても構わない


ただ、これから愛する人と、

これから生まれゆく命のために、

俺は捧げるのだ


慎ましく、汚れない魂が、

豊かに生きれる世界を

作るために


だから、狂っていたとしても突き進む

悲しい結末だとしても、悲しむことなく突き進む


真に悲しことは

無力さにくずおれて、

後悔の中もがくことなのだから



前を向いて生きる為、悔いなく生きる為、

俺は使い捨て勇者として魔王を殺し、

勇者という名の殺人者となる





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