絶望《アペルピスィア》

神を愛した


全能で美しく、他の追随を許さない完璧な神を愛した


この世界に産まれ堕ちた時から、

全能神あなたを見てきた


貴方は私の全てだった


華よりも儚く、夢よりも幻想的で、

空よりも広大で、大地よりも雄々しく、

孤高で気高く、麗しく、


完璧だった



なのに、あの娘によって変わってしまった


なぜなの?

なぜ貴方はあんな人間の小娘に心を許すの?

なぜ、あの小娘を特別そうに愛すの?


貴方の愛は全てに等しく注がれるべきもの


そんな貴方の愛を見守り、愛した


独り占めになんてしないで、

ちゃんと愛したのに


なんで、なんでこうなるの


私はどこで間違ったの??


こんなことになるなら、

貴方の目を塞ぎ、世界から遠ざけて、

煩わしい愚民共の声など聞こえぬよう

耳を塞いで仕舞えば良かった


そうすれば、

うつろばかりを写す貴方のまなこ

少しでも映してもらえたかもしれない



許し難い、この現実を

私は受け入れるしかないだろうか


あの娘と私の違いはなんだというの?

神と人である以外、何が違うというの?


なんで、貴方の瞳はあの娘を映して輝いているの?

なんで、貴方の指先はあの娘の頬に優しく触れているの?

なんで、貴方の声は優しくあの娘の、名を呼ぶの……?

なんで、なんで、なんで、

貴方の耳は澄ましてあの娘の、名を呼ぶ声を聴くの……?


私ですら、

名前を、呼ばれたことないのに…

名前を、呼んだことなどないのに……


名前を……


名前……あぁ……

わかって、しまった…



私は、神を愛して、

あの娘は、彼を愛した


これが全てを分かつ分岐点ポイントだったのね



なんて絶望なのかしら


こんな、簡単なことも分からず

盲目的な自己満足な愛に浸り、

踊り狂った私は、なんて滑稽なのかしら


愚かしくに愛憎に染まり、踊り狂った末、

貴方を失う結末を迎えるなんて


まるで喜劇コーモディア



……こんなくだらない舞台は、もう、降りましょう



退場の跡に、貴方への愛を置いて

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