第9話 雨降りの後の朝
「んーっ! スッキリしたー。やっぱ、どうしようもない時は泣くに限るね」
正午前のまばらな駅のホームで
そして、ケラケラと笑いながら『思いっきり泣いて元気になる
思わず夕子の口から言葉が漏れる。
「
なんら事態は進展も好転もしていない。ただ、二人の地縛霊が肩を抱き合わせガン泣きしただけである。もちろん、解決の糸口も見出せていない。
もしも解決の糸口、つまり地縛霊が成仏できる方法が
――それでも、
目を赤く腫らせて屈託なく笑うその姿は、雨露をたっぷり含んだ森の木々が朝日を受けて一斉に光り輝き、森全体が黄金色に染まるそんな雨上がりの森の朝を連想させた。
(この
そう、彼女はお日さまのようだ。――無邪気な明るさで人に
夕子は生前、自分のために温かい涙を流してくれる友人に出会ったことがなかった。それが、ようやく今になってそのような友人を得ることができたのだ。
嬉しくて心が震える。この温もりを忘れたくない。味わうように嚙みしめるよう
夕子がしばらく余韻に浸っていると、遠くから
「ねぇー、夕子? あたしは人を引っ張ることができるんだろ。でもさー、やっぱり誰にも触ることも引っ張ることもできないよ。なんで?」
「私だって解らないわよ」
切り替えの早い
これを能力と言うのなら、何らかの発動条件があるのだろう。彼女はシャープなあごに手を添えて、地縛霊が物体に触れることができる条件について考える。と、その時――
(んっ⁈ なにこの匂い?)背後から強烈な臭気を感じ、夕子は顔をしかめながら振り返る。そこに一人の男がいた。
男は、おぼつかない足取りで強烈な酒臭さを振りまきながら、夕子のすぐ脇を通り過ぎた。
ボサボサの頭と生気なくサンダルを引きずるようにして歩く姿、それと、強烈な臭気。夕子は説明のつかない違和感を感じ取った。
夕子が感じた違和感とは、
「その男なんか違う! 気をつけて」
胸騒ぎを覚えた夕子は思わず
「おう、おっさん! 酒臭えんだよ。真っ昼間から酔っぱらうとはいいご身分じゃねえか。ああーん?」
むろん、
「むをっ⁉ くっさー! ったく、このやろ!」
「ダメっ!
夕子の悲鳴に近い声が
「んっ、あれっ⁈ 触れた。――やったー! 夕子、触ることができたよー!」
ついに人に触れることができた。
夕子は表情を失い呆然と立ち尽くしている。
表情を失った夕子と目が合った瞬間、自分が何か取り返しのつかないことをしてしまったのではないかと不安がよぎる。
「
夕子は、誇らしげに襟元を掴んでいる
それを目にした途端、言いようのない悪寒が背筋を駆け抜け、慌てて右腕を引き抜く。――否、引き抜くことができなかった。
「ウソっ・・・・・・。なんで⁈」
(どうせ投げてる人生なんだ。このまま投げ捨てちまえ)突然、
どうやら、その思念は
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