第28話 「3人のターカス」





私は、どうしてターカスが見つからないのかは分からなかった。まるで、私達の捜査から逃げているみたい。でも、それもいつまでもは続かなかった。


シルバ君が早送りの監視カメラ映像を見続けて、それは私の寝る前も続いていたけど、起きた時には状況が変わっていた。


「お嬢様、お喜びになって下さい!ターカスが見つかりました!」


私はそう言ったマリセルに起こされて、大喜びで居間に行くと、マルメラードフさんは通信をしていて、シルバ君はウィンドウにいくつもあったコマを一つにして、多分、映像の解析をしていた。そこには確かに、ターカスが映っていた。


「ターカス!見つかったのね!」


私は思わずそう叫んだけど、私に近寄ってきたアームストロングさんは、ゆるゆる首を振って、私の肩に手を乗せた。


「ホーミュリア様、事はそう簡単ではありません。ターカスは、“3人”見つかったのです」


私は、何を言われたのか分からなかった。3人?3人ってどういう事?仕方なく、それをそのまま口に出す。


「え?3人ってどういう事なの?」


アームストロングさんは、シルバ君の見ているウィンドウを一度振り返ってから、またこちらを向く。


「見つかったのがターカスなのか分かりません。ポリスの監視カメラに、ターカスと同じ型のロボットが、3人映っていたのです」


「え?じゃあ…」


その時、シルバ君が振り向いてこう言った。


「盗難届を調べましたところ、ターカスと同じ型のロボットが、すべて行方不明です。彼らはどこかへ盗まれ、集められた可能性が高いのです」


「一体、なんのために…?」


アームストロングさんがそれに続けてこう話す。


「ポリスの本部の監視カメラに映っていたので、その日、ポリスで何か不審な事が起きていないか、上層部へ質問して、各部署からコメントを集めようとしましたが、その必要はなかったようです」


「どうして…?」


私は、不安だった。ターカスは一体何をしているのかしら?彼と同じロボットが集められた理由は、何?


アームストロングさんは、腕を組んで私を真っすぐ見た。


「「総監の部屋へ何者かが侵入した」という報告が、すでに持ち上がっていたのです。その日、3人分の“ターカス”がポリスへ入り込んでいた。どうやったのかは分かりませんが、なんの痕跡も残さずに。今、彼らがどうやってゲートを破ったのか、本部で調べているところです。やがてそれが分かれば、こちらへ情報共有がされます」


私は不安が胸を破り、歩行器から立ち上がって、思わず大声を出してしまった。自分の胸を手で押さえ、必死に訴える。


「ねえ…ターカスは何をさせられているの!?一体どういう事!?」


銭形さんがソファから立ち上がり、こちらへ近づいてきた。そして、私の肩を押してやんわりと座るように促し、「私達は、それを調べている。安心する事です」と言った。


「安心なんか出来ないわ!一体彼がどこに居て、何のために何をしているのか知らなくちゃ、私はとてもじゃないけど…!」


座ったまま私は涙を流し、アームストロングさんと銭形さんはあたふたしていた。その時、ソファに腰かけていたマルメラードフさんが、通信を終えたらしかった。


「破壊されていない事は分かった。それでも衛星に映らないとするなら、居場所は地下しかない。それも、かなり深い場所だ」


そんな言葉が飛んできて、私はびっくりして涙が止まってしまった。ソファの方を振り返ると、マルメラードフさんは視線を尖らせ、アームストロングさんを見ていた。彼はこう言った。


「以前の大戦では、地下に潜んだ過激派が引き金となった。私はそれを思い出しているんだがね」





つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る