A Girl Looking For The Night 第1話

 暗い。くらい。くらい。

 空気と空気の間を縫うように闇が立ち込める。黒より黒い、暗澹あんたんとしたこの暗闇に対抗するべく煌々こうこうと輝くネオンが私は好きだ。

 勿論もちろん暗闇の方も私は同じくらい好きである。まあ端的に言えば暗闇とネオンが争いあっているのが好きということである。一体どちらがあの時間帯の支配者となるのか。古来から人類と共に生きている闇か、将又はたまた人類の発展により産まれた光か。至極楽しみである。

 ああほら。夜が、始まる。







 ▽








 ▽








「馨ちゃん」

 私を呼ぶ声に手元の端末から目線を上げる。

左右そう。遅かったじゃない」

「ごめんね、ちょっといろいろあって」

 私は首を振って歩き出す。後ろから左右がひょこひょこついてくるけれど、なにしろこいつは180近くあるからついてこられる身としては少しだけ怖い。

 時刻は23時37分。高校生は補導される時間帯だけど、左右は背のお陰で普通に成人済みに見えるし、私は私で化粧をしているので大人っぽく見えているはずだから問題無い。髪型や服装も友人に見せるのとは全然違うからこの格好で私だと分かるのは多分友人の中では一人だけだろう。

「今日はどこ行く?」

「そうねぇ……。西側とか行ってみましょうか」

 そのまま私は西へ歩を進める。

 左右とはインターネットで知り合った。昔はネットで知り合った人に会ってはいけない、なんて言われていたらしいけど今そんなことを言えば、時代錯誤もはなはだしいというかなんと言うか。

 ログパスの普及により個人の特定が簡単になった。匿名でインターネットを使用することも出来なくなる。その代わり、個人情報は今までの比でない程に厳重に守られるようになった。コンピューターだけでなくAIなどの様々な媒体ばいたいを使って何重にもバックアップが取られ、間違っても個人情報の流出が起こらないようになっている。

 個人情報が流出したという事件が起きたことも無い。それをした人間も同じように個人情報をさらされるから。

 そういうわけでネットの危険性はほぼ無いと言っても過言ではない。だから私は今左右と行動を共にしている。

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