ラピスラズリガールズ 第1話

「毎日人殺してるなぁ~」

「声大きいわよ。みこの声よく通るんだから」

 そう注意すればみこはえへへ、と人好きのする笑みを浮かべる。

 



 聖カトレイア学園。

 私とみこが通う高校で所謂いわゆるお嬢様学校。けれど、ガチガチのお嬢様がいるわけではなく。お嬢様学校っぽいところを挙げるとしたら、別れの挨拶が『ごきげんよう』だってことくらい。なんとなく残っている風習みたいなものだ。

「あ、そうだ聞いてよ!私この間凄い面白い人に会ったの」

「へぇ。良かったね」

「ちょっと!ちゃんと聞いて~!」

 耳元で騒ぐみこ。五月蝿うるさい五月蝿い。

「あのね、仕事で知り合った人なんだけどノン・メイアでね、多分ちょっとだけ年上でね、男の人でね、考え方が私と全然違ってね」

 興奮しながら話すので全く要領を得ないが要はその人が気になるのだろう。みこのことだから今はまだそれに気づいてないと思うけど。

「仕事ってことはその人も“人助け”してるの?」

「してないよ。私は一緒に仕事したいなって思ってるけどあの人は嫌なんだって」

 心底残念そうに言うところから本当に気に入っているのだろうなと思う。




 四条しじょうみこは、ある仕事をしている。それは人によっては嫌悪感を抱く内容のものである。らしい。

 らしいというのは、私は彼女の仕事について詳しく聞いたことはないから。みこが仕事について事細かに話すことは無いし、私が仕事内容を問い質すことは無い。

 それに対して特に思うことは無い。私もみこに話していないことがあるし。

「おにぃだ。どうしたんだろ」

 みこはピアス型のログパスをいじってスクエアを出すと兄から送られたメッセージの確認をした。大方今日は何時頃迎えに行こうか、と言うような内容であろう。

 彼の通う男子校はカトレイアとは正反対の場所に位置しているにもかかわらず、毎日愛する妹を送り迎えするあたり一級シスコンに認定してもさほど問題無いのではなかろうか。まあお互いの位置情報を共有していることに何の違和感も感じていないみこも相当なブラコンであると言えるが。

「ねぇみこ。その仕事で知り合った人のことはお兄さん知ってるの?」

「ん?うん。初めて会った時はお兄と一緒にいたからね。でも友達になったことは言わないでって止められた」

 それは懸命な判断である。あのお兄さんは今でもたまに私をものすごい目でみてくることがある。出会った頃に比べたら本当に頻度が減ったが。みこの想い人もすぐにそれに気が付くあたりなかなかの者だ。お兄さんのシスコン度が尋常でない可能性も否定出来ないけど。







 ▽









 ▽










 みこは私にとって大切な親友だ。

 だからこそ、幸せになってほしいと思う。

 仕事をすることに幸せを感じているみこも好きだけど、やっぱりちゃんと人並みの青春でも幸せになってほしい。

 願わくは、唯一無二の親友に沢山の幸せが訪れますように。

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