第4話

 なんだってこんなことになってしまったのか。

「お久し振りですね!ソータさん!」






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 8月13日日曜日。午後11時43分。シャーペンの芯が切れた。予備のものを探したがなぜか空ケースしか出てこない。空ケースぐらい捨てろよ昔の僕!

 こう見えて僕は受験生なので勉強しないと話にならないのだ。目指している大学に入学するにはまだまだ学力が足りない。

 と、いうわけで今僕はシャー芯が欲しい。いや受験生ならシャー芯買っておけって話なんだけどね。

 コンビニで売ってるかな。買いに行こうか。

 椅子から立ち上がりかけたところで僕は動きを止める。待てよ待てよ。コンビニ?4日前コンビニに行って何が起こった?レティシアとかいう女の子とその兄貴に会ってそれで……。

 あ、鉛筆!鉛筆使えばいいじゃん。えーっと、鉛筆鉛筆……。

 ……ふぅ、無いなあ。

 そりゃそうだ。シャーペンユーザーの僕は完全なる少数派なのにそれよりも使用者が少ない鉛筆がうちにあるわけがない。

 しょうがないかぁ、コンビニ行かないと駄目か……。

 とても行きたくない。だが行かないとそれはそれで困る。うーん、あの時は深夜だったから、もしかしたら今は鉢合わせしないのかも。

「行くか……」

 仕方ない。僕は覚悟を決めて部屋を出る。サッと行ってサッと帰ってこよう。







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 シャー芯を買ったところまでは良かった。それはもう怖いぐらいに上手くいった。上手くいきすぎていた。

 問題は帰りだ。上機嫌に鼻歌なんか歌っていた僕を殴りたい。

 前方から女の子が歩いてきていた。2つ結びを揺らしながら歩いているのは紛れもなく、レティシアだった。

 バチッと音がするくらい見事に視線が合う。お互いにフリーズ。

 先に動いたのはレティ。あの感じの良いにこやかな微笑みを浮かべながら近づいてくる。

「こんばんは。お久し振りですねソータさん!」

 もちろん僕は即行逃げようとしたけれどレティの笑顔の圧に負けた。

「ひ、久し振り……」

「こんなところで話すのもなんですから移動しましょうか」

 意気揚々と歩き出すレティを追いかけながら話すのは決定事項なんだ、なんて考える。

「……ここは?」

「私たちの本部である協会が入っているビルです」

 30階建てくらいのビルに入る僕ら。

「ソータさんはここに来るの初めてですよね?ログパスの提示をお願いします」

「ああうん。いいよ」

 僕はポケットから携帯端末を取り出して受付にあった読み取り機にかざした。

「端末型のものをお使いになれられているのですね」

「こっちの方が慣れてるっていうか。君はピアス型?」

「はい、お兄ちゃんとお揃いなんです!」

 レティが嬉しそうに言うと同時に読み取りが終わったようで、画面には『No problem. Thank you.』という見慣れた文字が。

 ログパスとは、その人の個人情報が全て載っている持ち運び可能なコンピューターのようなもので、ログパスから情報を読み取ってその人が安全かどうか調べられるのだ。僕の使っている端末型からピアス型、イヤリング型、指輪型など様々なタイプがある。

「それじゃ、行きましょうか」

 絶対彼女には会いたくなかったけど、会ってしまったものは仕方ない。いろいろ気になることもあるし。

 僕は歩を進めた。もうあとには戻れない。

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