耳長少女C

お前さえ生まれて来なければよかった

お前さえ居なければ没落しなかった

お前さえ居なければ


「なんで?」


言葉を出せば、周りは口を塞いだ


神童と呼ばれ、持て囃された

然しそれはまやかしで、正しいことを言えば否定できなかっただけ


「なんで?」


まるでお人形だと、私の周りは言葉を並べる


「なんで?」


綺麗に整った髪色は黒

だけど綺麗なんて言葉、誰にだってぶつけてた


祖父が

祖母が

父が

母が

弟が

犬が


「私は、犬以下じゃん」


理解すれば、その後は簡単だった


まずは、犬

名前はアーキー

胴の中のものを全て出してあげて、綺麗に揃えた


「私は弟以下じゃん」


弟の名前はサラヤ

少し難しかった

荒かったけど中身を出したらサラヤは笑ってた

綺麗に揃えてあげた


「お母さん以下、お父さん以下」


反発してきたけど、2人が静かになったら中身を取り出して綺麗に揃えてあげた


お父さんの肺だけ黒かった


「おじいちゃん、おばあちゃん以下?」


2人はいつも静かだから直ぐに動かなくなった


中身はみんなよりスカスカだったし、血の量も少なく感じたけど綺麗に揃えてあげた


「私を認めてくれるのは、私だけ」


黒い髪が、黒色の耳にかかる

黒い髪が、黒色の乳房を隠す

黒い髪が、黒色の鼠径部を隠す



━━━━━━━━


全裸のまま、起き上がった


「ったりィ……夜か」


夜型の私からすれば、太陽は天敵のようなものだ


廃墟の病院の硬いベッドは、身体を固くした


「……私は、私を認める」


毎朝、起きた時に言うルーティン


「私だけを認める……うん、よしっ」


遠くに光る魔都には、死の希望が満ち溢れていた

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