第四回 この世で最も美しいものは。


 ――鏡よ、鏡よ、鏡さん。

 この世で最も美しいものはなあに?



 それは美しくも、澄んだ心。……そのために、心の鏡を磨いているの。より鮮明に。昨日よりも今日、今日よりも明日へと。近づいてくるの、私の求めていたイメージへと。


 それは、私の描く白雪姫。

 ならば、私の描く白雪姫そのものの、イメージを兼ね備えた子。


 そして、嫉妬するほどの、美しい子。その子こそが千佳ちかだった。


 同じクラスとなったのは、中等部三年生。千佳と瓜二つとも思える双子の姉、梨花りかよりも、私の持つ白雪姫のイメージは強かった。彼女以外に誰も考えられない程だ。



 私が『新解釈の白雪姫』の執筆に着手したのは、この年の春……四月に見た千佳の影響が、脳内の大半を占めていたから……リピートする、イメージ映像。それを執筆するのだけど、靄が覆うの。いつの日からか、クラスは二つに分かれて、その頃からだ。


 千佳とは別のクラス……


 何故そうなったのかといえば、コロナによる感染拡大防止のため。私達の学園は中高一貫で、高等部に進学する道もあるのだけど、別の高校を志望する生徒も少なくはない。普通に受験生なのだ。なので午前と午後の交代制や、曜日で分けるなどしたなら、とても年間の授業が覚束ないとのこと。六月から中等部三年生は二クラスから四クラスとなった。


 一クラス二十四人いたクラスメイトが十二人に……


 そして夢のような時間も終わったの。その途端だ。想い出が繰り返されるように、まるで春から冬へ戻るように、いじめが……解凍された。現実が動き出したように。


 私は、そう思うことが辛かった。


 負けたくなかったの、今度こそ。だから笑顔を絶やさないの。……いつの日か、心の鏡が、私の飾らない笑顔を映すまで。その時に私は、千佳と同じようになれるから。



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