第三回 動きだすの、大いなる物語。


 ――喩えるなら、白雪姫。


 私なりの新解釈。千佳をモチーフとした白雪姫。鏡を見て、そう思ったの。



 そこからの執筆となった。参考にできるものは元々の、童話の白雪姫。そして千佳ちかという女の子。私と同じクラスの子。彼女と会ってから……正確にいうなら、彼女と同じクラスになってから。まるで魔法のように世界観は変わって、いじめはスーッと消えた。潜んでいるようにも、そうも思えたのだけれど、SNSによる誹謗中傷も止んだ。


 何があったの? と思える程。

 これまでのことが、嘘のようにも思えて、二通りの世界? 不思議な世界。



 私は読み続けている。


 彼女が執筆している『ウメチカ』を。……その執筆している作者こそが、星野ほしの千佳。そう私は思うどころか確信している。私の持つ直感で。作品のこと、彼女から聞いたわけではないから。そして彼女が、『書くと読む』に登録しているのか、まだ聞いてないから。


 思えば、そうなの。――私は自分から、人に話しかけたことがなかったの。


 きっと彼女もそうだと思っていたのだけど、彼女は自分から声を掛けてきたの。晴れやかなる笑顔も一緒に。天気の子より天気なの。天気の子……つまり私の名前の由来。


 お母さんが付けてくれた名前。だから毎日、鏡で笑顔をチェックしている。


 王妃が見る鏡は「世界で一番美しい人は誰?」なのだけれど、そうなら白雪姫が見る鏡はきっと……「よし、今日も笑顔」なのかもしれない。自分で自分を元気づけられる人。


 私みたいに仮面ではなく、

 私を笑顔にしてくれるような、……きっと、千佳みたいな子だと思う。泣いても、最後には笑顔になれる強い子。だから、私はあなたを目標にした。私はあくまで、ライバル。


 私はね、あなたの王妃。だけど、毒入り林檎は使わない。

 作品のために、あなたをじっと観察するの。なってもらうの、この世界の白雪姫にね。



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