第二回 出会いは春、満開な桜の下。


 ――珍しく季節を感じた一時。コロナ禍で、唯一、春を感じた瞬間だ。



 春は卒業シーズンと、お別れのイメージもあるのだけど、桃色の、桜色の出会いの季節でもあるの。私には窓から零れる清々しい青色のイメージ。合わせたらアオハル。


 ……駆ける。少しでも前向きに。


 それは登校前の儀式ともいう、コロナ禍から始めたこと。朝のジョギング。すると彼方から、向こう側から、……はて? 何処かで会ったような、そんな顔ぶれが、女の子が、


 黄色い半袖Tシャツと青いショートパンツ姿で走ってくるの。髪型はボブ。どうしようと思いながらも、今の私なら……との思いで、声を掛けてみることにしたの。


「……お、おはようございます」と。


 自分でもわかる程の小さな声。囁く程度の。……でも、その子はニッコリとして、


「おはよう、出雲いずもさん。君もジョギングしてるんだね。

 えへへ……僕と同じだ。ねっ、ここから一緒に走らない? この公園はコースなんだ」


 と、話しかけてきたの。……ボクッ娘。女の子だけど、自分のことを『僕』という女の子。私のクラスに二人いる。双子の姉妹。どちらも星野ほしのさんだけど、……下の名前、


千佳ちかだよ、妹の方」


 と、言ってくれた。じゃあ、あなたが千佳……

 とはいっても、見た限りでは見分けがつかない程に、星野さん姉妹はソックリだ。


「あの、星野さん……」


「あっ、千佳でいいよ、星野さんはクラスに二人いるし。姉の方は梨花りか。間違っちゃっても気にしないで。よくあることだから。……じゃあ、君のことも下の名前で呼んじゃうけど、……ええっと、ごめんね、下の名前何だったかな?」


天気てんき。天気の子の天気……」


「いい名前だね、天気ちゃん」


「あの、また一緒に走ってね、千佳ちゃん」という具合に、簡易的な自己紹介となった。



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