第五回 どうしても譲れないものは。


 ――私の信念。正義の叫びにも似た、私の魂ともいえる物語。



 学園でのいじめ……それは、とても身近で教室の中。皆が良いクラスを装う中、その裏側では、密かに行われていた。体育祭の趣旨で設けられた『クラス対抗・駅伝レース』


 それもまた、そのうちの一つ……


 アンカーに指名された。口には出さないけど、SNSでの煽るような内容。そして千佳ちかと並んだ。今はもう別のクラスのアンカー、つまりは敵。どうしても勝たなきゃならないの。でないと、SNSで執筆の妨げをされるから。この『新解釈の白雪姫』だけは譲れないの。――だから、ゴール間近な瞬間、私は誰にも気付かれないように、千佳の足を引っかけたの。ちょっとぶつけただけ……脚が縺れたように、周りからは見えるように。


 案の定、ゴールを目前に千佳は転倒した。


 そのお陰で勝てたの。……でも、とても後味が悪かった。千佳は、きっと気付いていたと思うの。「皆、ごめんね」と思い切り泣いても、私のことは黙っていてくれたの。



 私は……自分が許せなかった。

 千佳を裏切ったことになるの、自分のしたことは。どうしても譲れないこと……


 その夜のことだ。私はSNSを用いて叫んだ。


 ――ついに切れた!


『こんなことしてないで、堂々と私に面戸向かって言ったらどうなの? 私が執筆していることが、そんなに気に入らないんだったら、ハッキリ言ったら? でも、何があっても私には、どうしても譲れないものだから……』


 私は、懸けた青春を捨てられないから。――絶対に!


 その次の日だ。……アカウント攻撃をされた。開かないの、書くと読む……誰の仕業かわからない。またもやSNSだ。顔面蒼白の事態で私は、もう何も考えられないまま学園を出た。早退も何も区別ができないまでに……会うことにしたの、SNSの発信元。



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