現実逃避の旅に出た大学生と、その彼が旅先で出会った中年男性の物語。
ゴリゴリのホラーです。淡々とした語り口が魅力の、読後にすっと背筋の寒くなる怪談話。
おじさんの独特の語り口というか、それも含めての話運びのうまさが魅力的です。
なんとなく「こういうこと?」と読めてしまう部分と、だからこそ「それで、どうなるの?」と気にさせられる部分の、そのバランスのようなものがとても巧み。おかげでまるで釣り込まれるようにぐいぐい読んでしまいました。
お話そのものは間違いなくホラーであるにも関わらず、『逃避』というテーマの処理のされ方が綺麗で気持ちいところも好きなところ。
主人公の逃避とおじさんの逃避、その共通点だったり違いだったり。
あと、単純におじさんの造形が好きです。絶妙にこう、なんというか、アレな感じが。大好き。
しっかり怖い話でありながら、何か怖さとはまた違った後味があるのも嬉しい作品でした。