第6話
店を後にして,歩いて40分家にようやく着いた。今日はなんかいろんなことがあって疲れたので家に帰ってまずお風呂に入ることにした。
お風呂は今日の疲れを一気に落としてくれて気持ちを落ち着かせてくれた。しかし,冷静になって初めて『本の紹介ってなにするんだ⁉』︎となった。まぁ結局何にも思いつかず普通に貸すことにした。
ちなみにその本っていうのは恋愛ものなのだが,バトルもあるというものである。それらの要素は両方とも丁寧に描かれている。それに,それはシリーズが長く巻数も結構出ていたので追っていくのが少し大変だった。それでも,追いついてしまうともう続きが気になってしまって,一時期それの展開をひたすらに考えてしまっていたことがある。今思えば,“そんなことになるなんて”という展開がたくさんだったように思う。
そんなことを考えたながら,着替えてリビングへと向かった。
「ふぅ〜お風呂気持ちよかった」
「そう,それはよかったね」
母が料理を作りながら言った。ちなみに今日はとんかつだ。
「お風呂入れておいてくれてくれてありがとう」
お風呂に入っていて思ったのがそれだった。
「そんなんはいいから,手伝って。夏樹,やることなんてないでしょ?」
「うっうん。何にもないけど…やりたくはない」
「そんなのどうでもいいから,早く皿とか用意しなさい」
私はそれを聞いて,『あっ料理しなくていいのか』となった。
「はーい。どの大きさにする?これそれともこれ?」
食器棚から大きい皿と小皿よりは大きい中くらいの皿を取り出した。
「こっち」
母は大きい方を指差して言った。
「はーい」
そう言って,小さい方を食器棚に戻した。そして,大きい方の皿を4枚用意した。これはもちろん,私たち家族分である。
「じゃあ,夏樹キャベツ盛り付けちゃって」
母はそう言って,キャベツの入ったビニール袋を取り出した。
私は「これくらいでいい?」と聞きながら一つの皿に取り付けた。
「うん。それくらいでいい」
そんな感じに用意していると,姉と父が次々に帰ってきた。
「ただいま」
「お姉ちゃんにお父さん。おかりなさい」
「もう,ご飯できてるの?」
「うん。もうできると思う」
「へぇ〜もうお腹すいた」
姉の由依はそう言って自分の部屋へ向かった。
父の方はというと黙って自分の部屋に行き着替えて来ていた。
そうして,一家全員がリビングへと集まり今日も夕食が始まった。
「いただきます」
そう言って私はトンカツを食べ始めた。
『サクッとしていてとっても美味しい…」そう思うと箸が止まらず,気づいた時には既に一切れになっていた。その一切れを大切に食べ,私の今日の夕食は終わりを告げた。
「ごちそうさまでした」
私は満足そうにそう言った。そうして,その後リビングでテレビを見ていた。
そんな時,姉の由依が「そういえばだけど,夏樹今日〇〇っていうお店行って来たよ」と言ってきた。
「えっ…⁇どうしていったの」
「なんとなく。夏樹がお店の名前を出すなんて珍しいなって思って…」
「そっそうかな?そんなこと…ないと思うんだけど…」
その時の私は動揺をしていた。その時心臓の音がバクバクと聞こえて,顔も熱くなっていたからそう感じる以外の何者でもないものだった。
「ほら,返答が動揺してるってことは何かあるでしょ」
姉は私の方をニヤニヤして睨みつけていた。
「本当に,何にもないから」
私はそれ以外の返答が思いつかなかった。
「ほんとうに〜何にもないの?なら,今度一緒にそこのお店に行こうよ」
「えっ?それはダメ…絶対にダメ」
椅子から立ち上がって姉に叫んでいた。
「なんで?何にもないんでしょ。だったら行こう」
「そっそれはそうなんだけど,嫌なものは嫌なの」
姉はそれを聞くと楽しそうにしていた。
「へぇ〜なんか余計気になっちゃうな」
私は,こういう時に姉は少し意地悪だと思う。姉は勘が鋭く今までも私が隠しておきたいっていうことに関して痛いところをついてくる。それに,ギリギリを攻めてくるからほんとうに私の思っていることが分かってるのか分かっていないのかが曖昧なのだ。恐るべし姉である。
「気にならなくていいよ」
そうそっぽを向いて答えた。
「あっそう。ならまた今度教えてよ」
これ以上はもう喋らないのかと諦めたのかそこでこの話は終わった。
私は内心『絶対にヤダ』と思っていた。
姉はその後,お風呂に入りとっとと自分の部屋に戻って行っていた。
私はというとそのあともテレビを見続けていたが,さっきの動揺でテレビの内容は全く入ってこなかった。
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