第4話
次の日は朝からよく晴れていた。
『ふぅ〜今日も朝が始まる。気持ちのいい朝だ』カーテンを開けて外の景色を見るとそう思った。
私はそのあといつもの日課である朝の散歩に出かけた。朝の散歩はダイエットのためにしている。食べるのが好きなのに運動しなかったおかげで太ってきたと感じたからだ。
私はいつもの散歩道である土手に降りて,横に流れる川の音を感じながら前へと進んでいく。その時風を切っているような感じがしてとても気持ちがいい。今は春だけど夏になると余計にそう感じる。
そんなことを考えながら,どこに行くでもなく進む。私はそんな時間が好きなのだ。
そうして進んでいくと私はふとした瞬間『ぼっ〜と』していたらしい。
「うっわぁ。イタッ…」
前から来た人に気づかずぶつかってしまったのだ。それに加えて勢いよく後ろに尻もちをついてしまった。
「ごめんね。大丈夫?」
そう言って,その人は私に手を差し伸べてくれた。
「ありがとうございます。こちらこそごめんなさい。前を見ていない私が悪いんです。気にしないでください」
そう言って何度も頭を下げた。
「それはお互い様だよ…って夏樹ちゃん?」
私はそう言われて改めてその人の顔を見た。
「えっ⁉︎谷口さんですか?」
谷口さんはラフな紺色のジャージをかっこよく着こなしていた。またお店の時とは雰囲気が違くて『カッコいい』と改めて思った。
「そうだよ。初めて会ったね」
「そうですね。いつから歩いているんですか?」
ちなみに私がこの散歩を始めたのが大体1年前である。もしかしたら,その時からあっていたかもしれないと思うと何で早く気づかなかったのだろうと思ってしまう。
「別にいつからとかそんなんじゃなくて,たまにここを歩いているって感じなんだ」
「そうなんですね。いいですよね。この雰囲気を感じるのって」
素直に思ったことを言った。
「うん。なんか心が落ち着くよね。落ち込んだりした日の後に来ると余計そう感じるよ」
「そうですよね。まぁ私は毎日のことですが…」
「いつも歩いているんだ。大体この時間?」
「はい。なんとなく運動不足だなって感じて…」
そんな中で目を合わせようとするとどうにも恥ずかしくて見れない私がいた。
「そっか。がんばってね」
「頑張りますよ」
その後もなかなか会話に中身を入れることができないまま時間だけが過ぎていった。
「ごめんね。もう少し話したいんだけど,この後予定あってもう帰らないといけないんだよね」
そう言われて私も時計を確認した。
「あっ…私も時間やばいです」
「じゃあね。夏樹ちゃん。お店で待ってるから」
「あっはい。すぐ行きます」
それが谷口さんとの最初の約束だった。約束って言っていいのかわからないけど…
それにしても,こんなに早く時間が過ぎてしまっていたことが今までになかったから私は驚きを感じた。
それから家の方向へと方向転換して帰った。もちろん,歩いてではなく走ってだ。
「はぁ,はぁやっと着いた〜」
なんとかこの後の予定に間に合う時間に家に着くことができた。
「ふぁ〜夏樹,朝から元気だね」
あくびをしながら来た寝起きの姉にそう言われた。
「そっちの方がいいでしょ。お姉ちゃんより健康だと思うけど」
「まぁ,そうだけど…意外と痛いところついてくるよね」
「そんなことないよ。もう私支度しないといけないから行くね」
私はそう言って自分の部屋へと向かった。そして,改めて谷口さんのことを思い出していた。
そうしてると母が私の部屋へと入ってきて,「ご飯の時間だからとっとと食べちゃいなさい」と言ってきた。
「はーい」
一階のリビングで朝のテレビ番組を見ながらご飯を食べた。
今日のご飯は味噌汁,ご飯,それに鮭の焼いたのだった。鮭はツヤツヤとした脂が乗っているのに加えてしょっぱくてとてもおいしかった。
そんなこんなで学校に向かわないといけない時間になっていた。学校までは電車とバスを使って行っている。
今日は友達の咲と待ち合わせをしていた。
「おはよう。ごめん。咲待った?」
「おはよう。そんな待ってないよ。気にしないで。じゃあ早くしないと遅れるから行こう」
「うん。ありがとう」
私と咲は高校時代からの友達で,いつも一緒だった。私の高校は3年間クラス替えがなかったので余計にそうだった。
「そういえばなんだけど…」
重たい口調で咲が口を開いた。
「なに?なんかあったの」
「実は…私彼氏できました」
さっきの口調とはうって変わって喜びに満ちた声で言った。それについて,おめでとうという感情よりも驚きの方が隠せなくなかった。
「本当に?できたの。すごいね…」
「だから,これからは少し夏樹と会う時間少なくなると思う」
「気にしないよ。それにしても,咲にできるなんて思っても見なくて驚いた。おめでとう」
「ありがとう。夏樹もなんかあったら教えてね」
「わかってるって」
そう言いながら,いえそうにもないなと思うこともあるのだった。
それから授業を数時間受けた後,咲は彼氏の元に行って私は1人悲しく家へと帰るのだった。
『はぁ…すごいなぁ。咲は。私はなにやってんだろう?』そんな自問自答をしているといつの間にか,あのカフェの前まで来ていた。
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