第4話
悲鳴がグラウンドを駆け抜ける。私と琴音は悲鳴がした方へ、反射的に顔を向ける。
顧問の先生が大声を上げていた。保健室の先生を呼ぶように言っているようだ。小さな人だかりが出来ていて、みんな下を向いている。
私はその人だかりへ走って行く。琴音も遅れてついてきた。人だかりをかき分けて下を見る。香菜が足首を押さえて蹲っていた。
「香菜!」
遅れてきた琴音が声を上げる。保健室の先生が走ってやって来て、香菜の脚を見た。すると、先生の顔が青い顔して、救急車、と叫んだ。
「やっちゃった~」
香菜が余裕綽々と言うような様子で言った。その足首には包帯が巻かれている。
「ホントに大丈夫?」
私は病室の端に置かれていた椅子に座って、言った。
「大丈夫、でも救急車まで来ると思わなかったな~」
香菜はベットに寝転がりながら言った。
「お医者さんに言われた通り、安静にしときなよ?」
「はーい」
私が言うと、香菜は軽い返事を返す。それから、彼女は上体を起こして、私に言った。
「千鶴、ジュース買ってきて」
「はぁ? なんで私が」
「琴音トイレだし、お願い!」
手を合わせながら、香菜が言う。
「安静にしとかなきゃいけないからさ」
顔がいたずらっぽく歪んでいた。
「それ、ずる~」
そう言いながら、私は腰を上げる。病室のドアを開けた私の背中に、ありがとね~、という軽い感謝の言葉が飛んで来た。
病院の廊下を歩いて、自動販売機の前までやってくる。
「コーラでいいよね」
私と香菜と、ついでに琴音の分も買って、出てきたペットボトル二本を指の間に挟み、もう一つを左手で掴んだ。
病室に戻ろうと廊下を歩いていると、電気の消えた病室が眼に入る。
「桜場 海人……?」
私は何となく、その病室に入ってみる。酸素マスクに籠る吐息や、心拍を図る機械の動作音が鳴っているベットに近づき、閉められた白いカーテンを開く。
私は持っていたコーラを取り落とし、口に手を当てて絶句した。
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