EP15「怪獣たちのいるところ」

ソーエンの街は、どこか商店街を思わせるような人の賑わいだった。

大通りには露店が所狭しと立っており、人々は、港町特有の活気に満ち溢れている。

まるで異国のバザールのようで、貴金属や宝飾品等の高価なアクセサリーが売られていたり、靴や鞄等の革製品、魚や野菜などの生鮮食品の店がそれぞれの区画に配置されていた。

「なんか……初詣の出店思い出しますね」

「日本とは違う感じがするから……もしかして……オムライスの屋台とかって……」

「買わへんで」

飴ちゃんがオムライスを諌める様に言い放った。

オムはしゅんとしながらも、目はキョロキョロと露店の商品を物色している。

「まずは市場の調査……ですかね」

咲が言うより早く、夕暮れ時のスーパーでよく見る母親の、今晩の献立を物色するかのような目付きで飴ちゃんが露店を見廻る。

「え、蜜柑めっちゃ安ない?おっちゃん。このソーセージいくら?」

「おう!お姉ちゃん美人だし……銅銭5枚……いや3枚でどうだ!」

「買った!!」

大阪の下町のようなおじさんとのやりとりを見ながらジリが感心したように頷く。

「へぇ。食品系は結構お手頃な値段っすね。食べるだけならこの街で困ること無さそうっすね」

「あと気になるのは宿の値段ですね」

咲が考えるように歩き出し、皮袋から銅貨を取り出している飴ちゃんの方をくるりと振り返る。


「なぁなぁ。飴ちゃん。見てー?」

「うおっ!?……何してんのオム」

「ふふん。オムこれ買う。ライス3世になる」

飴ちゃんの肩口からニュッと出てきた顔は明らかにルパン3世である。

オムライスはお面を被って上機嫌だ。

「買わへんわ」

飴ちゃんが呆れた顔で点かないライターをカチカチしながら、ブツブツとクレームを入れる。

「…… このゲームの制作者どーなっとんねん。どこに拘っとんねん」

そこに大荷物を抱えた桜が肩で息をしながらようやく追いついてきた。

「ちょっと……みんな……病み上がりの俺に冷た……うぉっ!?オム!それめっちゃええやん!牙狼のんとか無かった?」

「桜?一生寝とき」

「これに関しては、さくそんなに悪くないと思うんやけど……#可哀想な桜」


その時人通りの絶えない通りの喧騒の中でも響き渡る大きな、聞き覚えのある声が一行の耳に入ってきた。

「安いよー安いよー安いかは知らんけど!酒のことなら、まかしとき!」

「まがじどぎぃ!」

「やかまし!ぼけっこ!」

「はげっこ!ぴにょっこ!……どーしたの?お胸ないよ?」

「しばいたろか」

「「「「「あ」」」」」


「ぴのちゃ。何してんの?」

飴ちゃんが喜びと戸惑いの混じった瞳でぴのとりあを見比べる。

「なんかなー。お買い物しようとしてたらなー。おばちゃんに店番頼まれてん」

「おるすばん!!!」

「りあ。お留守番出来んのか!やるやん」

「うっせ!おじい!臭い!近づくな!」

飴ちゃんは1度命までも奪われたのに、未だにりあを全肯定し、可愛がる桜を見て複雑そうな顔で笑った。

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