EP7「成果報告2」

「じゃっ。ほなまた宿集合な」

「わかりました。お気をつけて」



「日本に戻る方法を探す。ってざっくり決めましたけど、俺ら具体的に何したらいいんでしょね」

ぴのが頭の後ろに手を回しながらつまらなさそうにジリの方を振り返る。

「さーぁ?あ、あそこのおじさんに聞いてみる?日本ってどっちですかーって」

咲とジリはにっこりとぴのを見つめる。

「あ、とりあえずあそこの教会に行ってみませんか?昔の文献とか見つかるかも知れませんし」

ジリの指す方向には白いレンガに蔦の蔓が張り付いている古い教会と思しき建物がそびえたっていた。



教会に入ると三人は手分けしてこの世界の歴史を紐解ける本を探した。

「あっ!!この本!」

ぴのの声が教会の書室に響き渡る。

周りの視線がぴのに集まり、ぴのは普段にもまして小さく縮こまった。

声のトーンに気を使いながらとことこと、ぴのが一冊の本を持ってくる。

表紙には「91 お冷セット大盛で―読み間違えから始まる恋―」と書かれたポエム集だった。

作者の名前は柊響。

「ぴのさん。それ……あれ?いや、まぁええですわ。とりあえずそれは必要ないですから戻しときましょか」

「ぴのさん戻す場所わかります?受付に持って行った方がいいんじゃないですか?」

「まかしときっ」

告解室から顔を出した中年男性が「またお前か」と言いたげな顔でぴのを睨んでいた。

ぴのは人差し指を口に当てながら抜き足でそっと通路に身を隠す。

「ではジリさん私たちも手分けして探しましょうか」

「そっすね。じゃあ俺はこっち側で」

「はい」


30分後それぞれの探した本を集め、発表会だ。

ぴのは「081 めがんほほといやんほほの類似点に関する考察」「081 まかしときの魔法-ビジネスで信用してはならない言葉-」「071 ワールドチェーン100選」etc...

おおよそ役には立たなそうな本をズラリ、約10冊程積んできている。

数打ちゃ当たる戦法だろう。趣旨は理解できていないようだが。


ジリの持ってきた本は「016 世界のなりたち―リュネット世界の歩き方―」「031 世界情勢51‐2」「044 月の増殖に伴う世界の変化とこれからの私たち」の3冊である。


咲は1冊の古ぼけた文書をもってきている。

大きな書籍の下に隠すように持ってるポップな表紙の本がぴのの目を引く。

「咲ちゃん。それなにー?」

咲がいや。あのっ。と小さく抵抗の素振りを見せるも虚しく、隠していた本を奪われた。

ぴのが掲げた本にはケモ耳の男女が無邪気な笑みを浮かべている。

「えっとねータイトルはー『110 マンガで読める獣人と魔法の歴史①』」

「咲さんは真面目に探してくれると信じてたんすけど」

「えっと。いや。あの。でももう一冊はきちんと選んだんですよ?」

ジリが何かに気づいたように本のある一点に目をとめた。

突然真面目な顔になってポップなケモ耳本をぴのから受け取り、あちこち調べ始める。

「100?やっぱり変ですね3桁ってなんすか」

「救急車や!」

「……パトカーっすね。いや、救急車は119ですし、パトカーは110なんすよ。そうじゃなくて……」

咲が小さく手を打った。

「そっか。10進分類法のはずだから、10で始まる数字があるのはおかしいですね」

「10進分類法なら、10個目は普通じゃないんー?」

「いや、最初は0からなんすよ。だから最高でも99までのはずなんです」

「???うん???」

ジリと咲はこれ以上は時間の無駄だと悟り、話を戻した。

「調べて見ましょう。【10】の分類の主標は……」


「「え?」」

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