EP4「作戦会議」
「ほな、とりあえず現状を整理しよか?」
真面目くさった顔で桜が皆の顔を見渡した。
堂々と組んだ腕には鈍く光りを放つ手錠がぶら下がっている。
6人は一つの部屋に集まるとようやく腰を落ち着けた。
若干1名ふかふかのベッドにダイブし、顔を埋めたままピクリともしない新顔がいるが、残りの5人の表情は真剣そのものだ。
オムライスも、頭の中にはご飯、お腹空いた、おむのおむ、しかないが顔だけは真剣である。
それはそうだ。お預けをくらったまま、はや数時間もたっている。
静かに真面目な顔をしているのが奇跡とも言える。
「まずはこれからどうするか決めなあかんな」
ジリが会話を誘導するように落ち着いた声をあげる。
「当然、目標は日本に帰ることやろ?」
飴ちゃんの言葉に咲が真っ先に頷く。
「でも、こんな状況で朝起きたら元通りでしたってならんでしょ。実際ぴのさんは昨日からこの世界におる訳でしょ?」
ジリの言葉に、布団の主に視線が集まる。
「……今は、夢の世界にいるみたいです」
咲が小さく苦笑をもらす。
「まぁ、なんにせよ、一朝一夕ではどうにもならんやろな」
桜が相変わらず仁王立ちのまま考え込む。
「とりあえず課題は2つやな。1つは日本に帰るまでの間、生活して行く為の方法。もう1つは日本に帰る手段。明日からとりあえず2手に別れて行動してみん?」
飴ちゃんの言葉にオムライスは桜の横で腕組みをしながら、真剣な顔でウンウン頷く。
考え込んでいたジリが片手を上げながら飴ちゃんを見て、ちょっといいっすか。と背筋を伸ばした。
「どしたんジリ」
「一個気づいた事があって」
皆の視線がジリに集まる。
ベッドの上の白い塊がうぬ〜と声を上げ、もぞもぞと動く。
一瞬たじろいで瞳を揺らしたジリだったが、すぐに唇を引き結んだ。
「そもそもここに来た原因って、あのゲームなわけやないですか」
「せやろなぁ」
飴ちゃんがオムライスにちらりと視線をやりながら相槌を打つ。
「てことは、俺らのいるここって、多少なりともゲームと関係あると思うんすよ」
「ゲームの中って事?」
「いや、ゲームの中や無かったとしても、あのゲームが唯一俺らとぴのさんの共通点やないですか。さっき聞いた話では、ぴのさん配信してなかったわけやし」
「たしかに。ほんで?それがなに?」
「もし仮に。もし仮にっすよ。ここがゲームの中やとして、そうやとしたらこのゲーム作ったんは、地球人なわけですよ」
「うん」
話の展開が読めない飴ちゃんが急かすように組んだ腕を指先でタップする。
「ほんなら、この世界の価値観とか常識とか、あと……設定とか?地球とそう変わらんはずじゃないですか?でも……」
論点が読めた咲は、オムライスと桜の奥にある窓に目を見やる。
相変わらず異様な月がそこにある。
咲につられるようにして皆が窓の外を向き、沈黙が起きた。
「関係……あるかも知れんなぁ」
チャリ、と鎖が音を立てた。夜が深まっていく。
5人は今後の動きを再度確認し、二組に別れた。
飴ちゃん、オムライス、桜の3人はこの世界で生計を立てる方法を考える事になった。
まずは当面の宿代もしくはそれに変わる何かを見つける。
咲のたっての希望で皆の衣類1式はぴのの戦利品により揃える事となった。
とにかく明日の課題はこの世界の市場を知る事である。
咲、ジリ、ぴのの3人の役目は日本に戻る方法を調べる事だ。
とは言っても、日本に戻る方法があるのかどうかすら分からない。
もしその方法があるとすれば、恐らくその突破口となるであろう点、月が2つある理由について探る事から取り掛かることにした。
「って事でいい?ぴのちゃ?」
飴ちゃんが掛け布団にくるまった白い塊に問いかけた。
布団からひょこりと顔を出したぴのが寝ぼけなまこで飴ちゃんを見る。
「なんてー?聞いてへんかったー」
「オムもう限界!お腹すいたー」
世話のやける2人である。
咲が重い皮袋を半ば強引にぴのから預かり、扉に向かって振り返る。
「じゃあ皆さん。外に出て、どこかのお店にでも食べに行きません?」
6人は部屋を出て夜の街に繰り出した。
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