罰ゲームでスマイルを注文しただけなのに
鳥野ツバサ
罰ゲームでスマイルを注文しただけなのに
俺は今、某有名ファストフード店の前にいる。
「全員に月見バーガー奢るかスマイル注文する」ことを罰ゲームにした友人達との格ゲー争いに負けてしまったのだ。
そして現在の所持金、74円。奢るどころか自分の分も買えやしない。
つまり、残された選択肢は一つ、スマイルを注文することだ。
「おいw早く行って来いよw」
「あぁ、わかってるよ、スマイル注文してくりゃいいんだろ。ったくもう...」
どうせいつもこんな店には来ないのだ。
そして相手もバイト。
ちょっと失笑されるだけで出禁まがいのことにはならないだろう。
一歩踏み出す。
自動ドアが開く。
「いらっしゃいませ!ご注文をどうぞ!」
「え、えと、スマイルを一つ...」
明るいバイトの声に俯きがちに答える。
「おいwあいつホントにやりやがったぞwww」
店の外から『w』を大量につけた友人の声が聞こえる。
あいつら、覚えてろよ。
沈黙。
恐る恐る顔を上げると、さっきまで明るい表情だった店員は笑っていなかった。くそ、せめて失笑してくれ――
「お客様、その合言葉をご存じでしたか...それではこちらのレシートをもってあちらにお並びください」
え、え?
「あ、はい」
予想外のことに面食らった俺は間抜けな声を上げ、『309』と書かれたレシートを受け取る。
2分後。
「309番のお客様、受取口へどうぞ」
「あ、はい、309番です。」
「あなたですか、『スマイル』を注文なさったのは。」
「...はい」
「そうですか、それでは私についてきてください」
訳もわからず店の奥に通される。
ドアを通り、階段を下り、電子施錠のドアを二つ開けて行きついた部屋には――
――沢山の、
「それではお客様、お好きな『スマイル』をおひとつお選びください」
「え、えっと、これはどういう...」
「お客様、もしかしてこの意味を知らずに注文なさったのですか?」
店員の顔が険しくなる。
「え、ええと、どうもそのようです」
「そうですか、でしたら残念ですが...」
気が付くと遠のいていく意識。
最後に、こう聞こえた。
「スマイル一つ入荷しましたー」
罰ゲームでスマイルを注文しただけなのに 鳥野ツバサ @D_triangle
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