死と季節を題材にしたO氏による見解の手記
小倉さつき
何者かによる手記
難しい問題だなあ、とO氏はまず口にした。
死を感じる季節はどれに当たるのか、という質問に対し、O氏は大変に悩んだ後、紡ぐように語り始めた。
個人的に「死」単体に対して直感するのは、冬である。
しかし、全ての季節に当てはめることができる。
春は再生のイメージが強い、それはつまり「死からの脱却」の季節。
夏は冬の次に死を感じるが、お盆という行事もある。それゆえに「輪廻転生」もしくは「死からの黄泉がえり」の季節。
秋は一番死とは遠い印象だが、冬眠の支度を始める時期、「死への道程」の季節。
冬は植物も動物も冬眠するから、「静謐な死」の季節。
ほら、すべて当てはめることができるだろう、とO氏は笑う。
すべては生と死の狭間にあるのだ、とも言った。
余談であるが、O氏は梅雨もひとつの季節だと解釈している人物である。
ならば梅雨ならどう当てはめるのかと尋ねると、こう返された。
梅雨は雨が土や草を塗らして形を崩していく時期。
それから、紫陽花は土の性質で色が変わる話から「屍の転がる」季節。
もしくは水が絶えず流れて景色の輪郭がぼやける時期なので「生死の境界が曖昧」な季節、かなあ。
成程、存外「死」とは身近にあるものだと、感じさせられた見解であった。
死と季節を題材にしたO氏による見解の手記 小倉さつき @oguramame
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