2日目:閣下

2021年9月18日:姉


 うちの姉は、良くも悪くも姉らしくない。

 外面は「仕事を颯爽とこなすキャリアウーマン」だが、家に帰ると完全な「末っ子」なのだ。

 今日は夏の暑さがぶり返した日で、姉は汗だくになりながら帰ってきた。手を洗って、早速冷凍庫に手を掛ける。時間的には夕食時なのに、この後の食事も気にせずチョコレートアイスを手に取った。

「今日はこれ食べる! あんたは?」

 当然かのように私を向いたが、丁重に「夕飯があるので」と断った。実は先程おやつに食べた。

「じゃ、食べちゃうね」

 誰への申告なのか、その後意気揚々と開封し、頬張りながら自宅内のどこかへ姿を消した。

 夕食だからと姉を呼びに家を探し回ったら、薄暗い廊下で姉は洗濯物を畳んでくれていた。

「お姉ちゃんありがとう〜」

 声をかけた時、ちょうど姉はたたみ終わるところだった。

「ご飯? 行こっか」

 立ち上がり、灯りの元へ出てきた時、その姉の姿に私は驚愕した。

「デー●ン閣下じゃん」

 つい口を出た言葉だったが、灯りの元へ出た姉の口元は、見事にデー●ン閣下のごとくチョコレートが塗装されていたのである。

「大人になってそんな口汚す人初めて見たわ」

 夕食の時も、私のデザートであるイチゴに熱い視線を送ってきたので譲ったが、またそれを幸せそうに食べるのでこっちも幸せになってしまう。

 そんな魔性のギャップ萌えを発動してくるのが、うちの姉である。

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