恋獄(れんごく)
kaku
恋獄(れんごく)
夜と昼が巡り合い
辺りが朱色に染まる逢魔刻
夕闇と同じ色をした一つの扉が
私の目の前に現れる。
ムカシ・ムカシ
古キ国ノ・若キ・王ガ
一人ノ・魔物ト・恋ニ・落チタ
その扉の向こう側
若く目隠した王が
王座に座り
その王の膝の上には
まだ幼き顔立ちの
薄衣をまとった少年がいた
ダガ・ソレハ・禍ツ恋
国ヲ・滅ボス・禁忌ノ恋
互いの手を闇色の鎖で繋ぎ
抱き合うその姿
立ちすくむ私を見て、彼らは微かに微笑んだ。
「お久しゅうございます、姉上。それが、今生でのお姿ですね」
「今生も、私達のことをお忘れではなかったのですね、フィーレ様」
魔物ト・トモニ
ソノ・
「いいの…‥? このままで」
イイノ・デスカ・コレデ
遠き昔にも
問いかけた言葉は
深き闇の中に消えて行く
「ええ。これが、私達の望むことですから」
エエ・コレガ・私達ノ・望ミ
幾度も聞いたその答えは
遥かな
変わることはない
やがて、王と少年の微笑みを
私に残して
朱色の扉は閉じて消えて行く
夕闇に一人残された私は
朱色の空に一つの言葉を囁いた
恋獄(れんごく) kaku @KAYA
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