第59話クラス対抗リレー〜体育祭終結〜
ついに最後の出場種目である『クラス対抗リレー』が始まる。
達也と香織、渚、そして西澤くんはゼッケンを着て位置についていた。
出走順は西澤くん→香織→達也→渚だ。
「A組頑張れぇ!!」
「優勝狙えるぞぉ!!」
「賞金は俺たちのものだぁ!!」
「篠原くん頑張ってー!!」
他の学年や他クラスの声援と混ざってクラスメイトの声援が聞こえてくる。
それにしても...
「走る人多くない...?」
「そりゃそうだろ?全クラスなんだから。」
スタートラインには各学年の第一出走者全員が集まっていた。
各学年に6クラスあるので、合計18人の生徒がスタートラインにいるのだ。
「こんな持久走みたいなスタートをするリレーなんて見たことないよ...」
「だから選抜4人なんだろうなぁ。」
渚と達也の二人が会話していると、実況の生徒が話し始める。
『さぁ、体育祭の最終種目、クラス対抗リレーが開始します!この種目によって総合優勝がどのクラスの手に渡るのか決まると言っても過言ではありません。各クラスの出走者の紹介は時間の都合により省略させていただきます!一応リレーなので他クラスの妨害等は全面禁止です。走るのはトラック一周、アンカーのみ2周です!』
説明が終わったところで第一走者がスタートラインに並んだ。並んだと言っても持久走のように乱雑にだが。
『位置について...よーい...』
パンっ!!!
スターターピストルの音とともに全員が飛び出した。
走り出しで西澤くんは7位につけている。
「はぁ!はぁ!はぁ!」
「A組見たいなガリ勉集団になんか負けない!勝つのはB組だ!」
西澤くんの背後に位置づけていたB組の生徒が西澤くんを追い越そうとするが、西澤くんも底力を見せ、トラックを走る。
そして1周を走り終えた西澤くんは順位を変えずに香織にバトンを渡した。
「篠原さん!頼んだ!」
「任せて!」
香織はバトンを受け取ると綺麗なフォームで走り出した。
背後にいたB組の生徒を瞬く間に引き離すと一人、また一人と追い越していく。
「篠原さん速え...!!」
「3年生も追い越したぞ...」
「でもあの2年生も早いな...」
クラスメイトが指差した先には、現在1位で独走する2年クルル・フェアリスがいた。
金色の髪を靡かせ、2位と圧倒的に差をつけて走り抜ける彼女。
「あの人早すぎない!?」
香織ははるか前方を走るクルルに視線を向ける。
香織も同年代では圧倒的に足が速いのだが、彼女の速さは格が違うのだ。
「渚ならなんとか追いつけるかしら...?」
香織も徐々に前と距離を詰め、3位にまで上がったところで達也にバトンを渡す。
「1位抜かしなさいよぉ!」
「おっしゃ!任せろぉ!!」
バトンを受け取った達也は勢いよく駆け出した。
(1位は2年生か...って何あの人!?流して走ってるくせに足速い!!)
達也は必死に足を動かし2位との距離を詰めると、すぐさま2位の3年生を追い越す。
「(くそ!1年に抜かされるなんて!)」
達也はそこからさらに足に力を込め、ルークと徐々に距離を縮める。
「...あの人は...確か、幼馴染....だっけ...?」
流して走る2年生ニーナは徐々に迫る達也を見て少し微笑んだ。
「私に追いつこうとするなんて...見どころがある。....さすが幼馴染」
彼女からしたら体育祭の順位などどうでもいいのだが、渚の実力だけは少し気になる。
「...この差でルークに追いつけたらすごいな...」
そう考えてニーナはアンカーのルークにバトンを渡した。
「はっはっはっ...くそ、あんな余裕そうな顔で走られると傷つくな...」
かの女子生徒は明らかに本気を出していなかったが達也はその子に追いつくことができず、結果2位としてバトンを繋ぐことになった。
「すまん渚!頑張ってくれ...!」
「任せて」
渚がバトンを受け取ると、トラックの反対側に走るルークを視界におさめる。
ニーナさん達の走りを見ていて渚はあることに気がついた。
彼女らはおそらく、自分と同等以上の身体能力を持っていると。
走っている姿しか見ていないが、身体の使い方が訓練を受けた者のそれなのだ。
そしておそらく、戦闘面でも渚といい勝負をすると思われる。
これは本気で挑んだほうがよさそうだ。
「あ」
「あ、渚ちゃんマジだ。」
渚の様子が変わったことに瞬時に気づいた達也と香織。
そしてその変化にはニーナ、クルル、ルークも気づき、ルークはそこから真面目に走り始めた。
渚は獲物を狙う肉食獣のように目を細め、地面に足跡がつくほど踏み込んだ。
ズドン!!
次の瞬間、大砲のような爆音とともに渚の姿が掻き消えた。
「「「「「え」」」」」
観客が唖然として渚の姿を探すと、猛スピードで校庭を駆け抜けルークを追いかける渚。
気がついた時には渚はルークの真後ろで走っていた。
「...あなた速すぎません!?」
「あなたに言われたくないですよ!!」
走りながら尋ねてくるルークに渚は勢いだけで答えた。
一周を走り終え二周目に差し掛かると、ルークも少し本気を出し始めた。
「このまま逃げ切りますよ!」
ルークから微かに威圧を感じた渚は咄嗟に速度を上げる。この時の渚は以前路上でバイクを追いかけた時のようなスピードを出していたが、ルークはその速度でさえも難なく追いついていた。
「「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」
校庭に響き渡る渚とルークの声、足元の地面から巻き上げられる砂。
渚も徐々にルークに追いつき、斜め前の位置から横並び、そしてとうとう追い越した。
「うらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
渚が咆哮をあげながら爆走し、ルークとの差が徐々に開いていく。
その状態のまま渚はゴールテープを切った。
「「「「「いよっしゃうあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」」
渚がゴールテープを切った瞬間、クラスメイト達が盛大な雄叫びをあげる。
ルークを抜かし1位となった渚のクラスは見事体育祭総合優勝を果たしたのだった。
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