第49話ギルド結成!!
【】
「おーい!これそっち持っていってー!!」
「「はーい!!」」
体育祭前日の火曜日、体育祭の会場準備に駆り出されている渚たち。
太陽が燦々と照りつける中、天幕を張りながら話をしていた。
「う〜ん...」
「達也ってば、まだギルドの名前決まらないの?もう1週間経つんだけど?」
香織の質問に達也の顔が渋くなる。
「いやぁ、俺が考えたら厨二っぽい名前になってしまってな...」
「たとえば?」
「...『神光の楽園』とか」
「...別にいいじゃないの。こういうのは厨二全開の方がっ....かっこいいんじゃないの....ふふ...」
「ほんとに良いと思ってるならこっちを向いて話せや。」
二人の言葉に渚が口を挟む。
「僕が良いやつを考えようか?今いいやつを思いついたんだけど...」
「いや!俺が頑張るから!!!渚はなンンンンにもしなくていいからな!?」
「そ、そうよ!渚ちゃんは大丈夫だから!!」
「そ、そうなんだ....」
全力で拒否された渚がしゅん...としたところで声がかけられる。
「久里山さん!これ運ぶの手伝ってー!」
「あ、はーい!」
タタタ..と駆け出す渚をみながら達也と香織は小声で話す。
「ネーミングセンスのない渚がつけたらとんでもない名前になっちまうからな...」
「この前なんて教室の金魚に『たらこ』って名前つけようとしてたからね...」
渚の芸術センスの無さは絵や歌だけではなく、命名にも現れていたようだ。
「そういえば...達也の装備って銀の全身鎧だったよね?“勇者“の二つ名の通りに」
「不本意だがそうだな」
香織の言葉に眉を顰める達也。
「今のところ達也のギルドに入る予定なのは私、渚、紗良に皐月、あとカエデっていう女の子。達也以外は全員女の子なわけだから...」
「...なんか嫌な予感がするんだが?」
香織がにっこりと微笑み、
「“勇者ハーレム“なんてどう?」
「お前は俺をどうしたいんだ!!?俺が嫉妬で殺されるぞ!?」
ガクッと項垂れる達也だが、気を取り直してパイプ椅子を抱えた。
「達也が考えると厨二っぽくなるし、渚が考えると残念になるから...私がアニメの知識を応用していい名前を考えようかな。」
香織が指をくるくるさせて考え始め、すぐに思いついたようだ。
「『空蝉の
香織の考えたギルド名に思わず達也は声をあげてしまう。
「おおぉぉぉ...すごくいい....」
「それとギルドハウスなんだけど、私いいところ見つけたんだ。」
香織の言葉に達也が目を輝かせた。
「まじか!!帰ったら案内してくれ!!香織の選出なら問題ない!誰かに取られないうちに俺らで登録してしまおう!!」
急にやる気を出した達也がパイプ椅子をたくさん担いで走っていった。
「篠原くん!危ないからそんなにたくさん持って走らないで!!」
準備に参加していた教師が達也に声をかけるが、その声はどうやら聞こえなかったようで達也はダッシュで走り抜ける。
「とりあえず明日の体育祭の準備が終わってから色々調整しようかな...」
「あれ?達也はどこいった?」
渚が戻ってきてキョロキョロと達也を探す。
「達也はトチ狂ってどっかいったよ?」
「あ、そうなんだ。」
「渚ちゃんは?手伝いは終わったの?」
香織が問いかけると渚はコクンと頷いた。
「運ぶものは全部終わったからね、あと向こうで組み立てる入場門で最後じゃないかな?」
校庭の反対側に顔を向けていた渚は大きく伸びをした。
「ところで、乙倉くんがなんかこっちを睨んでる気がするんだけど...」
渚の言葉に香織が校庭の反対側に顔を向けると、彼はすでに他の方向に顔を向けていた。
「うーん、気にしても無駄じゃない?どうせ渚ちゃんに何かちょっかい出せるわけでもないんだし。2年前に家に圧力をかけてきた時もどうにかなったし。」
「あぁ、あれはお父さんがむしろ圧力かけ返したからね。」
「あ、そうだったんだ...」
「僕も詳しいことは知らないんだ。あとは任せとけって言われてたし。」
「そ、そうなんだ...パパさん何したんだろ...。」
香織が顔を若干青ざめさせていると、
「今日は紗良も皐月もゲームできるみたいだからギルド結成出来そうだね!」
「...そうだね!」
渚のニコニコした顔を見てたら色々とどうでも良くなった香織は、渚と二人で他に準備がないか教師に聞きに行くのであった。
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「私はその名前でいいと思うよ!」
「右に同じ!」
「師匠と同じギルドに入れるなんて光栄です!名前もかっこいいと思います!」
ギルド名『空蝉の城』というネーミングに対してのシルにメイ、カエデの言葉にフレイヤがホッと息をつく。
「それにしてもフレイヤさんのネーミングセンスは凄いですねぇ、お姉ちゃんとは天と地ほどの差があるよ。」
「も、もうそれはいいじゃん...」
「いくら考えつかないからって『強めの人達』って名前はないでしょ!もう少し捻れ!」
シルの責め立てにナギは肩を縮こませて小さくなる。
だって、とナギが反論を始めた。
「フレイヤとロイはイベント2位と3位だし...一般のプレイヤーの中では強めじゃん。ギルドの名前にピッタリだと思うんだけど...」
「ナギ姉ちゃん...」
「やめて!そんな憐れみの目で見ないで!!」
メイの視線にいたたまれなくなったナギは両手で顔を覆い、イヤイヤと頭を振る。
フレイヤはそんな様子のナギから視線を外す。
「そんなことより、ギルドハウスに案内したいんだけど」
そんなこと!?と声を上げ、地面に膝をつくナギを放っておいてロイ達4人はフレイヤの後ろについて行く。
「それで、フレイヤが見つけたところってどんなところなんだ?」
ロイがフレイヤの後を歩きながら問いかけると、フレイヤは「そうだねぇ...」と考え、
「断崖絶壁のすぐ上にある大きめの家でさ、窓からは海が見れるんだよ!大きめの家だから集会もできるし、生産職専用の部屋も地下にあった。」
他の人に取られる前に早く取りに行こう!と走り出すフレイヤに全員が慌ててついていくのであった。
※※※
「ここがそう?」
「うん」
フレイヤに案内され、ナギ達の目の前には大きなお屋敷が建っていた。
3階建で領主が住んでいそうな大きなお屋敷、白を基調として茶色の装飾が施されており、玄関は両開きの大きな扉がついていた。
「早速中を案内しましょう!!」
フレイヤが張り切って中を案内し始めた。
大きなリビングにダイニングキッチン、会議室、執務室など、どこの金持ちが住むねん!というツッコミを入れたくなるような綺麗な内装に誰もが言葉を失ってしまった。
「料理スキルを獲得すればこのキッチンで料理も作れるんだよ!」
「一人ずつ寝室もあるから、ログアウトの時は自室からできる!!」
「ぜひおすすめだよ!どう!?」
フレイヤのおすすめに多少引き気味になってしまったが、冗談を抜きにしてもこのお屋敷は素晴らしいとロイは思っていた。唯一あるとすれば人との交流場所である最初の町から多少の距離があるということだけだ。
しかしやたら入団希望者が来られても困るし、少し遠い方が選別できていいのかもな。
「俺はいいと思うぞ!」
「「「私も!!」」」
ナギ以外の4人が賛同したところでフレイヤがナギに視線を向けるとナギは優しく微笑んで周囲を見渡していた。
「ナギちゃん....?」
「....あ、どうしたの?」
「いや、この家どうかなって」
「うん、いいと思う。なんだかすごく落ち着ける家だから毎日でもログインしたくなるよ。」
聖母のような雰囲気を醸し出すナギに若干面食らいながらも賛辞を受け取れたので、ロイの最終決定のもと登録を行うこととなった。
玄関の扉にギルド証を押しつけ、ギルド名を入力したのちにメンバーを登録していく。
『空蝉の城』
ギルドマスターはロイに決まった。
こうして正式にギルド『空蝉の城』は稼働を始めたのであった。
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