第46話学校行事
「今日は体育祭と文化祭の役割決めをする!!」
美田先生が教卓のに手をつきながらそういうと、クラスの全員がキョトンとした顔をした。
「本校は毎年2学期に学校行事を集中させているのは入学説明会で聞いているだろう?10月上旬に体育祭、11月中旬に文化祭をそれぞれ行う。」
全員がコクコクと頷いたのを確認し、美田先生は話を続ける。
「クラス対抗の行事なので、体育祭で優勝、そして文化祭で最優秀賞をとったクラスに賞金がもらえるんだ!!」
「「「「!!!!!」」」」
渚を除くクラス全員の目が野獣のように鋭く光った。
「賞金はそれぞれ1000万円!!!合計2000万!」
「「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」
「そしてそれを山分けだ!!!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」」」」
「気合い入れていけぇ!!!!!」
「「「「うおっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」
美田先生の掛け声に全員が立ち上がり、クラスのボルテージが最高潮に達した。
もはや狂気とも思える雄叫びに渚は席に座ったまま顔を引き攣らせていた。
「...この状況どうすればいいの」
勢いに乗り遅れた渚の呟きはクラスの雄叫びにかき消された。
「ん“ん“!!それでは改めて今日は体育祭と文化祭の役割決めをする。」
美田先生があたかも何もなかったかのように話し始めた。
クラスのみんなも先ほどとは打って変わって真面目に聞いている。
「まず体育祭の出る競技を決めるんだが、これは全員で話し合いながら決めてもらう。個人種目が[100m走][騎馬戦][クラス対抗リレー][借り物競走][障害物競走]だ。他に全員参加の種目で[全員リレー][綱引き][玉入れ]がある。ここに4月の50m走タイムの一覧があるからそれを元に話し合ってくれ。決まった後で文化祭の出し物を決めるぞ。」
先生が話を終えると学級委員の佐々木さんが席を立ち、教卓の前に立った。
「それじゃあ種目ですけど、皆さん何に出たいですか?」
佐々木さんの言葉に全員がガヤガヤと話し始めた。
「俺騎馬戦で上がいいなぁ。」
「私借り物競争がいい!!」
「障害物競走が楽かな...?」
渚も達也と香織と話しはじめる。
「僕は100m走にしようかな...」
「まぁ渚だったら何に出ても1着になりそうだもんな。」
達也の言葉に香織が一つ訂正を入れる。
「でも渚ちゃん、騎馬戦は苦手だったよね?中学の時も練習で早々に負けてなかった?」
香織の言葉に渚と達也は揃って「あ〜…」と声を揃えた。
「あれは苦手というか...呼吸が合わなかったんだよな...」
達也の言葉に香織が理解できないといった表情を浮かべたので、達也がさらに説明する。
「渚の得意分野って身体能力を生かした個人戦じゃん?渚の全力についていける奴なんていないし、渚が他に合わせると有象無象となんら変わらなくなるんだよ。さらには容姿のせいで渚の騎馬の下になるやつは恥ずかしがるし、逆に渚が騎馬になろうとすると上のやつが萎縮しちまうんだ。だから渚は本番では出場させてもらえなくなった。」
「何それ悲しい...」
達也の詳しい説明に香織が眉を下げて悲しそうな顔をした。
話を聞いていたクラスメイトも香織と似たり寄ったりな顔をする。
「でもその分個人種目にはたくさん出たから!!」
渚はなんとか弁解しようと方向を変えた。
「久里山さんの50mタイムは...3秒56!!??」
佐々木さんの読み上げたタイムに篠原兄弟を除くクラスメイトが目を剥いた。
「あー渚?お前それ本気じゃなかったろ?」
「いや本気だよ?50mだと短くて加速する前に終わっちゃうから...走り出しからトップスピードを出すのはなかなかうまくできなくて...」
「ほんっっっとに久里山家の身体能力ってバケモンだよな...紗良だって得意じゃないって言っときながら50m走俺といい勝負じゃんか。」
「「「!!!!????」」」
達也の言葉にクラスメイトが驚愕する。
「まぁ本人が得意じゃないっていってるんだから得意じゃないんだよ。」
渚の言葉にクラスメイトたちがこそこそと話し始める。
「なぁ、これ俺らのクラス優勝じゃね?」
「久里山さんだけで勝てるでしょ。」
「篠原兄妹も運動神経よかったよね?足もめっちゃ速かったし...」
「「「「.....」」」」
クラス全員が一斉に渚たちに頭を下げた。
「「「「クラス対抗リレー、お願いします!!!!」」」」
「え?」
「は?」
「うぇ?」
3人の惚けた声は静かに消えていった。
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出場種目は渚、達也、香織が[100m走][クラス対抗リレー]に出場し、その他に渚が[障害物競走]、達也が[騎馬戦]、香織が[借り物競走]に出場することに決まった。
クラス対抗リレーは男女2人ずつ出場するため、もう一人の学級委員である西澤くんが出場することになった。
「よろしくね西澤くん。」
「っっあぁ!任せろ!」
渚が声をかけると西澤くんは顔を赤らめてそう答えた。
その瞬間周囲の男子から殺気を感じたが、渚が周囲を見渡すと特に異変はなかった。
「よし。体育祭の種目は決まったから文化祭の出し物決めんぞ〜」
全員の体育祭の出場種目が決定したところで美田先生の声が教室内に響いた。
「さて、文化祭の出し物は学生の範疇であれば特に縛りはない。しかし賞金と私の昇給がかかってるのでつまらないものにはするなよ?賞金を獲得できるクオリティでお前らがやりたいものをやれ!!」
美田先生の私欲ダダ漏れの激は思いのほかクラスの心に響いたようだ。全員が気合いのこもった顔をしている。
「それではなんでもいいので案を出してください!!」
佐々木さんが教卓前でクラスに声をかけると全員がそれぞれ案を出し始めた。
「たこ焼き!」
「タピオカ!!」
「焼きそば!!」
「ラーメン!!」
「人探しは?」
「お化け屋敷!」
「演劇!!」
「喫茶店..とか?」
「同人誌販売!!」
「占いの館...フフッ」
「ゲーセンとかどうよ!?面白いんじゃね!?」
「縁日が一番だろ!!」
次々に挙げられる案を西澤くんが黒板に書き留めていく。
あらかた出尽くしたところで佐々木さんが話し始めた。
「じゃあ明日の同じ時間に投票を行うから、それまでに決めておいてください!あと各クラスから男女一人ずつミスコン・ミスタコンの出場権があるのだけど、このクラスは誰がいい?」
ミスコン・ミスタコンとはミス・コンテストとミスター・コンテストの略称である。
佐々木さんの言葉に全員が口を揃えて
「「「「篠原兄妹がいい!!!」」」」
「「えっ!!??」」
達也と香織は揃えて戸惑った声をあげた。
「うちのクラスはこの兄妹がいるから無敵だよな。」
「学校内綺麗ランキングの2トップがいるからな。
「勝確だな。」
クラスの雰囲気が決定を匂わせ始めたところで佐々木さんある提案をした。
「ちょっと待って。ミスコンなら久里山さんはどう?」
「佐々木さん!?」
思わぬ指名に渚が悲鳴を上げた。
「男子だった時にはミスタコンに出すわけにはいかなかったけど、女子になった今ならミスコンに出てもいいんじゃないかな?」
佐々木さんの言葉にクラスの反応は...
「久里山さんは...なんというか...」
「淀んだ空気とか邪な視線に晒したくないというか..」
「「「ねぇ?」」」
「...それって僕はどう反応したらいいのさ」
なぜかクラス内で保護対象となってしまっている渚の声に反応する人はいない。
そこで佐々木さんが最終判断を下した。
「ミスコン・ミスタコンは篠原兄妹に決定!!!」
「「ええぇぇぇぇぇ.....まぁいいけど」」
後日の投票でこのクラスは喫茶店をやることになり、ひとまずは体育祭の練習に入ることになった。
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