第111話 - 好戦的
サイクスの最大量は超能力者各個体の
その例外が覚醒者である。第一覚醒でサイクスの
一般的に年齢を重ねることでヒトの身体機能は低下していくものの、サイクス量は変化しない。その代わりに一度に扱うことのできるサイクス量が減少し、出力が減退することで超能力者は程度に差があれど弱体化していく。
(やはり仁先生の動きが昔に比べてキレが無い)
鈴村は襲いかかる死体の人形を相手にしながら仁が
(仁先生が全盛期……いや、10年ほど前でもあそこまでキレは悪くないはず……! 加えて久しぶりの命を賭けた戦闘。少しお身体への負担が大きいか?)
鈴村は
(それでも相変わらずサイクスのコントロールは素晴らしいな。おそらくもう少し時間が経てば、動きのキレは良化するだろうが……)
鈴村は仁のサイクスの扱い方に感嘆した後、正面に立ちはだかる
*****
「
「アハハ。確かに」
※第108話 「挑発」参照
*****
(奴らの会話からして、こいつの超能力は死体を操作する以外にもあるはず。察するに人間を強制的に操作する超能力か。現在、死体を操っているように糸状のサイクスで操る類のものだと予想できる。操作されている者の超能力を自由に引き出せるのかどうかで厄介さが変わるな)
鈴村圭吾は基本的に人命救助・戦術補助・情報収集に長けており非戦闘要員である。しかし、その超能力の応用力から戦闘においても十二分に力を発揮する。
(場所がここで良かったな。建物の至る所に銃器が用意されている)
––––〝
鈴村は那由他ビル内からコンバットナイフ2本を召喚する。その2本を
(頭を潰すだけでは止まらないか)
––––面白い
鈴村は拳銃を召喚して操作されている死体に向けて発砲する。サイクスが込められた銃弾は威力を増して頭部を直撃し、貫通する。それでも動き続ける死体を見てさらに発砲を続ける。放たれた銃弾は2体の心臓を貫通、残りの2体に接続する糸状サイクスを直撃する。瞬間、
(心臓の破壊、又は糸状サイクスを攻撃すれば動きが止まるな……。そして操作されている死体には2種類存在する)
サイクスが生成される仕組みとして、まず心臓でフィジクスが生成されてそれが扁桃体に到達することで初めてサイクスは生成される。超能力者は死後、心停止によってサイクスの元となるフィジクスの生成が停止するため、サイクスそのものが消滅する。
しかし、
(非超能力者の死体はサイクスを纏っていない分、攻撃力は大したことがない。超能力者の死体は奴のサイクスを纏っているために攻撃力が高い)
(奴が一気に操ることができる死体は指の数、つまりは5体が最大。単純な命令しかできないのか、単純な打撃攻撃と陽動が行われるのみ。迅速に詰んでみせる)
非戦闘要員である鈴村が戦闘において力を発揮する理由はもう1つある。
––––彼は見た目やその冷静さとは裏腹に好戦的である
(生きている者を操作する可能性も考慮する必要はあるが、今の状況で俺が操作されるほどの隙を作るなどほぼ有り得ない)
鈴村はサイクスを纏っていない個体に関してはほぼ無視し、サイクスを纏った死体に対して〝
非戦闘要員は基本的に受け身の戦闘を好む。徳田花の戦闘スタイルは正にその典型で、相手の出方を見てそこから最適解を見出して優位に闘う。しかしながら、鈴村は標的に対して積極的に関与する。彼のサイクスの基本性能の高さがそれを可能とし、攻勢に出ながら持ち前の分析力で相手を圧倒する。ゆえに早期決着が多い。
「一直線に俺の所へ来たね」
––––〝
あらかじめめ呼び出した椅子や机に対して鈴村は〝
––––〝
「生きたものも操作できるのは予測済みだ」
鈴村はノスリをほぼ見ずに心臓に接続しているであろう糸状サイクスにナイフを投げ付ける。そのまま手にコンバットナイフを持って
「!?」
無視していた非超能力者の死体が突然サイクスを纏って鈴村に右の拳で殴りかかる。鈴村は不意を突かれたものの余裕を持ってそれを防御、再び態勢を戻そうと試みる。
(後天性超能力者か!)
後天性超能力者とは生成されたフィジクスが扁桃体へと到達しないことでサイクスが発生しない個体である。
その時、上空から黒い影が鈴村の左肩を突き刺す。
「!?」
先ほど鈴村が投げ付けたナイフで糸を断ち切ったはずのノスリが鈴村を強襲したのだ。
「俺の左手は死者の心臓を、右手は生者の脳を司る」
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