第108話 - 挑発
「失敬だなぁ。盛大に、派手にお出迎えしたのに」
那由他ビルの屋上には鹿鳴組34代目組長・鹿鳴那由他の死体を初め、鹿鳴組59名の死体が横たわっている。彼らの血が整備されたコンクリートを赤黒く染め上げる。足場はほぼ血で埋めつくされて、白色のコンクリートはところどころ剥き出しになっているだけである。そのため、歩を進める
「そこらに転がっとるのは社会のクズ共に間違いはないが……。少々やり過ぎじゃな。不愉快極まりない」
その言葉を聞いて
「そうだよ、
「え〜、キミあっち側なの? キミの場合、ありがたいでしょう? 使える玩具増えてるんだからさぁ」
「
「アハハ。確かに」
(……このビル内の生き残りは
鈴村は頭の中で
「そろそろワシらの相手もしてくれんかのぉ」
仁はゆっくりと2人に声をかける。
「あぁ〜、ゴメン、ゴメン。お爺ちゃんでしょ? ボクの〝
「死にたいの?」
(へぇ……)
一方で、
「ワシは吉塚仁という者じゃが……」
仁は周囲の惨状を一通り見渡した後に
「ワシのォ……4年前に娘夫婦を亡くしたんじゃ。そしてお主の言う〝彼女〟とは十中八九みずのことじゃろ? 可愛い孫まで亡くすわけにはいかんのじゃよ」
仁のサイクスはそのまま静かに広がり、やがて
「なるほど、なるほど。瑞希ちゃんのお祖父ちゃんか」
その言葉を聞いて仁は腑に落ちない表情を浮かべて
「コンテナターミナルにおった仮面の若い
笑いながら
「ククク、自由行動がモットーなんだよね、ボクたち」
「その通り」
「あっ! あのお爺ちゃん、瑞希ちゃんのお祖父ちゃんよ」
「知ってる」
「ねぇ、仁さん」
「ボクらがやってること、仁さんにとっても悪い話じゃあないんだよ?」
「その亡くした娘さんとまた会えるかもしれないんだよ?」
仁の眉間に
「キミら家族全員がサイクスをなるべく使わないようにしていたり、姉妹だけになった時に側にいてあげなかったりしたのも全部警戒していたんだろう? 彼女たちの中にあるであろうサイクスが共鳴しないように」
仁は
仁は目を開いて目線を下からゆっくりと上げ、
「その話を知っている者はごく僅かなはずなんじゃがなぁ……。まぁ良い。それよりも……」
仁は一度言葉を切って語気を強めて尋ねる。
「その場合、みずはどうなる?」
その問いに対して
「一度で二度おいしい的な?」
「下衆が」
仁はそこで初めて自身のサイクスに明確な敵意を込める。その瞬間、周囲の木々がザワめき立ち、野生動物がその異様さを察知して一斉に走り出す。
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