第43話 - 怨念
「ちょっと
体育館の屋根上に1人直立する
「いやぁ〜ごめんごめん。もう1回戻って瑞希ちゃんを連れて行けば良いんじゃないの?」
「ん〜そうしたいけど面倒な状況でしょ?」
体育館では〝
「ククク……面倒かどうかは置いておいて面白いことにはなっているよ♪」
「ほらねぇ。でも『怨念』が見られるだなんてラッキーね」
「まぁ、最近は超能力者も増えてきたし、『怨念』の事例は多くなってきたけどねぇ」
「樋口くんの怨念って考えたら、あの場でサイクスを持つ者を片っ端から喰っていくでしょ? 面倒よ」
「その通りだねぇ。彼の場合、超能力者への恨みが根幹にあるから超能力者のサイクスを奪おうと動くだろうねぇ。ボクらも例外じゃあない」
––––〝怨念〟
超能力者が深い恨みを持って死亡した場合、その怨念がサイクスに影響を与えて暴走する。残されたサイクスは、超能力者の肉体を依り代としてその怨念を晴らすために動き続ける。
「ね? ただ肉体を破壊するだけなら簡単だけどそれを止めるにはサイクスを使い果たさせるか、その目的を果たさせるかでしょ? 面倒よ」
「まぁね。瑞希ちゃん危ないかもね」
「……」
「そのために残ったんでしょ?」
「ま、多分大丈夫だと思うけどねぇ」
「あぁ〜でも私が守ってあげたかったわ」
「本当お気に入りになったねぇ」
電話の向こうで
「あんなに純粋で可愛い子だなんて聞いてなかったわよぉ」
「ククク……これから期待だねぇ。後は和人くん。彼も〝覚醒〟候補だねぇ」
「あの坊やも強くなるわね。私の瑞希ちゃんほどではないけど」
「
「ウフフ……今あの子は檻の中で無理でしょ? 面識もないしね。それに私、人のもの欲しくなっちゃうの」
「キミって相当だよね」
「やぁ
#####
〝
(これは〝怨念〟!)
花はすぐに状況を理解し、分析する。
(樋口は超能力者に対して恨みがあったはず。奴の
花はすぐに倒れている瑞希を横抱き、いわゆる『お姫様抱っこ』の形で抱きかかえてその場から離脱する。
「徳田! そのまま瑞希を連れて外へ行け!」
花は瀧の指示に頷くと、そのまま体育館を脱出して外で待機する愛香と玲奈の元へと急ぐ。
(土田と伊藤は超能力者じゃないから直接攻撃を受けることはない。俺がサイクスをなるべく多く放出してあれの気を引く。その間に和人と協力して攻略するか)
瀧が和人の方を見ると和人は何も言わずに頷き〝レンズ〟を使いつつ観察を始めた。
「土田、伊藤! 樋口の死体に向かって撃ち続けろ!」
土田と伊藤の2人が拳銃で銃弾を浴びせる。〝
「!?」
伊藤と土田には銃弾が樋口の胴体に当たる直前で止まっているように見える。
「2人ともしゃがめ!!」
〝
「ッッッ!!!」
直前の瀧の号令により2人はしゃがんで躱しにかかったが伊藤の右肩を掠め、土田の左足に銃弾が当たる。
「土田さん、伊藤さん、大丈夫ですか!?」
和人が負傷した2人にすぐさま声をかける。
「大丈夫だ!」
すぐに土田が答える。2人の様子に安心した瀧が、強烈なサイクスを一気に放出する。その圧力は超能力者ではない伊藤と土田にも感じられるほどに強力なものだった。
「す……凄い……!!」
「何だ、このプレッシャー!?!?」
和人、伊藤、土田は瀧の様子に驚愕する。その圧倒的なサイクスに反応した〝
「来い!!」
その時、〝
「何!?」
窓から様子を見ていた
「おや……?」
〝
「ククククク……」
「
「確かに樋口兼は超能力者に対して恨みを抱いていた。小野建設での扱いの差や超能力を利用した仕事の様子は非超能力者から見ると楽しているように見えるしねぇ。だけど……」
〝
「その根幹には妹への恨みや劣等感があったわけだねぇ。あの子、兄に対して酷い扱いをしていたみたいだしね」
「〝
「ソウダ」
「回数的にはあと何回?」
「アノ娘ハ俺ノ
「ってことはあと5回だねぇ」
〝
2階席に横たわる凛の目から一筋の涙が溢れ出る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます