第42話 - JESTERは笑う
––––樋口の首が宙を舞う。
瑞希は、一瞬何が起こったのか理解できなかったが、樋口の首が体育館の床に転がったのを見た瞬間、吐き気を止めることができずその場に膝を突きながら倒れ込み、そのまま嘔吐する。
「あら? もしかしてこういうの見るの初めて?」
「うっ……うっ……」
瑞希に
「可哀想にねぇ。でもこれからあなたはこういった場面に多く遭遇するのよ」
そう言いながら
「
「おっと失礼」
––––もっともそれはある意味で幸せなことなのかもしれない。
花はそう思いながら瀧の方を見る。
「お前……何のつもりだ?」
瀧が怒りの表情で
「キミたち警察はこの樋口兼を追っていたんだろう? 小野建設で多くの無実の人々の命を奪った酷い男だからねぇ。だから協力してあげたんだよ。これで世の中が少し平和になっただろう? ってことで見逃しておくれよ。もう何もせずに帰るからさ。お互いWIN-WINだろう?」
「てめぇ……おちょくってんのか? 俺たちは奴を捕まえて罪を償わせなけりゃいけねぇーんだよ!」
「4人」
「あ?」
少し間を空けて
「彼は4人を殺した。そして負傷者が9名。13名もの罪無き人々に被害を与えた。さらに13番駅では無差別にサイクスを奪い、キミたちにも襲いかかった。普通なら死刑の可能性は高いだろうねぇ。だけど最初の殺人は一見、後天的に生じたサイクスによる暴走と判断されて実刑を免れるかもねぇ。殺意を証明できるかい? そもそも司法の場でその後天性超能力を証明するのも難しいだろうし。時間がかかるだろうねぇ」
「……」
「死刑となるにしても時間がかかるし、後天性ってことで刑が軽減されたり最悪実刑無しかもねぇ。なら今殺しちゃった方が良くない? キミならよく分かるだろう?」
2590年代後半からサイクスを持つ超能力者が出現して以降、様々な変化と混乱が続いている。その一つが司法の場における超能力にによる犯罪の判決である。特に後天性超能力者による犯罪でサイクスの暴走に対する判断はかなり困難で、長期化することが多い。
「お前が……」
瀧が敵意を剥き出しにしたサイクスを放出し、怒りに満ちた表情で
「お前が司法を語るな!」
瀧が
「ねぇ、
目の前で残虐な方法で簡単に奪われた命、そして平然と笑う
「計画とは違うけどねぇ」
「でも私たちノリで計画なんて変わるじゃない」
「壊しちゃダメだよ? それとボクの獲物だよ」
「分かってるわよ、そんな勿体無いことしないわ。性癖は壊しちゃうかもだけど」
「まだ15歳の女の子なんだから勘弁してあげなよ」
「あらぁ、こういうのは若い頃から覚えるのが良いのよ」
––––〝
和人が放った炎の矢がジェスターの右腕を直撃する
「ああああああああ!! 熱い! 熱いいいいいい!!!」
––––トスッ
鈍い音が和人の後ろで音が鳴る。気付くと和人は背中から宙に浮いた右腕の持つナイフで貫かれて吐血していた。
「!?」
「何ちゃって」
さっきまで悲鳴を上げていたのが嘘のように平然と直立して
「あら、残念。
「坊や。レディーが話している間は黙って聞いておくものよ」
唇に人差し指を当てて忠告する。
その時、轟音が鳴り響く。
そこには意志持つサイクス、〝
本来術者である樋口を失った時点で消失するはずのサイクスが動き始めた。
「ほう。これは興味深い」
「少しは役に立つじゃないか、樋口くん。じゃあ後はよろしく」
2階席の窓が開き、風でカーテンが盛り上がる。カーテンが元の位置に戻った時、既に
「もう、せっかちねぇ」
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