第38話 - 月に憑かれたピエロ (ピエロ・リュネール)
––––女子
「
「あの子明らかに質が違うものねぇ。月島ってあれよね?」
「そうそうその月島。ってことで予定変更。あの子で少し遊ぶってさ。ただ厄介なのがいるんだよねー」
「あぁ、あれねぇ」
「あの人、ずーっと見てるよね。お姉さん?」
「いいえ、あの子のお姉さんは車椅子のはずよ。無関係ってことはないと思うけど」
「あらら。樋口くんもう来ちゃったわよ」
「やっぱり言うこと聞かないじゃん。しかもあんなにサイクス放出してたら……」
樋口の異様さを察知した翔子がその場から立ち上がる。
「ほらぁー。一気に警戒態勢入っちゃったよ」
「ウフフ、超能力者になったばかりなんだし、しょうがないじゃない。それにアレは私が相手するわ」
翔子の方へと向かおうとした
––––俺がやる
「あら、
「へー、珍しい」
#####
(あの男、何かおかしい!?)
女子
(あれだけ悪意に満ちたサイクスを隠す気なく入ってくるだなんて……一体誰に向けてるの?)
その視線の先には樋口凛と彼女に手を差し伸べる瑞希がいた。
––––〝
樋口兼の〝
「お兄ちゃ……?」
多くの超能力者のサイクスを喰らい、強化された身体能力を得た樋口は、妹の目の前へ素早く移動し首を掴む。
「惨めだなぁ……凛」
その間、〝
(あれは樋口兼! 瀧さんの報告では樋口の意思とは関係無く超能力者のサイクスを喰う! そしてそれはサイクス量が多い者に優先的に向かう傾向がある。瑞希ちゃんが危ない! あの子は〝レンズ〟を知らないからアレが見えていない!!)
翔子が自身の超能力を発動しようと右手のリングを外した瞬間、突然頭にフルートの音色が鳴り響く。
(フルート!? どこから!?)
頭上に巨大な満月が出現し、その光の中から1人の男が現れる。男は自身の顔面よりも大きい三日月を模した仮面を被る。欠けた部分から包帯が巻かれた左顔面の一部が露出し、冷たい目が覗く。仮面は切れ長の目に大きく裂けた口を持つ。男は宙に浮きながらフルートを奏でる。
––––〝
具現化したフルート(曲によって音色はピアノ、ヴァイオリン、チェロ、ピッコロ、クラリネットに変化する)、〝
奏でられた7音はサイクスの筋となって対象者へと向かい、それに触れた者は意識が月の幻想世界、〝
術者である
(月!? 幻覚!? 精神刺激型の攻撃!? まずい!)
翔子は〝レンズ〟を使用し、咄嗟にサイクスの筋を躱すが既に4音に触れている。薄れゆく意識の中で辛うじてリングを体育館コート内に投げた。
(お願い……!)
月島瑞希、樋口兄妹、
#####
瑞希は、樋口兼が眼前に姿を現した瞬間、反射的に〝
しかし、空気中や地面に現れる残留サイクスによって〝
〝
(やっぱりサイクスを奪う超能力なんだ! 何かがいるのは分かるけど見えない! 予測して動かなきゃ!)
瑞希は少しずつサイクスを削られながらも致命的なダメージを避けつつ、樋口の方へと目を向けると樋口凛が首を掴まれ持ち上げられていた。
(樋口先輩が危ない!!)
瑞希は近くに落ちていたバスケットボールにサイクスを込め、樋口と直線上に立ってボールを投げる。
(真っ直ぐに飛べ!)
手から放たれたボールはただ直線的に飛ぶのみ。瑞希は〝害意〟を込めた〝
「あ? 何だクソガキ」
樋口は妹を投げ捨ててボールを躱し瑞希に殴りかかる。
「〝
兄の避けたボールをキャッチした樋口凛は首を掴まれた際、兄に僅かに残った自身のサイクスの一部を込め、〝
「クソが! 〝
〝
(来る!)
瑞希は〝インナーサイクス〟を行い、サイクスを体内に留め肉体から放出されるサイクスを消した。瞬間、〝
(サイクスを奪われていない! やっぱり!)
〝
––––〝
瑞希は自身に注射器を打って樋口の元へ移動して蹴りを見舞う。その後、即〝インナーサイクス〟を行い〝
「皆んな!? 一体!?」
視線を戻した時、いつの間にか目の前には赤髪の男が立つ。その男は不気味な仮面を被った
「素晴らしい!!!」
バスケットコート内、センターサークル中央に翔子が投げたリングが着地し、冷ややかな金属音が鳴り響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます