第85話 漸く終わった件

「スキル【有効ゆうこう】!」


 ケビン(アキヒト)がスキルを発動した。そして、


「今なら滅するつもりで攻撃したら全て有効になる筈だ。いくぞ!」


 と俺に声をかけてから創造神に斬りかかった。いや、何それ、格好良いスキル。けどコレで分かった。ケビン(アキヒト)は俺の【】とは真反対の【ゆう】のスキル持ちなんだと。

 でもヒジリもそうだったような…… まあ後から考えよう。俺も直ぐにケビン(アキヒト)に続いて滅するつもりで創造神を攻撃した。


 俺達二人が斬った後に消えて逝く腕や体の一部。


「ワシはメノミを愛しておるっ!! グワーッ、き、消える! ワシが消える! ワシが消えたら世界が消えるぞっ!!」


 その言葉にハタと攻撃を止める俺とケビン(アキヒト)。既にもう頭しか残ってないがどうしよう…… ソコでオノミとメノミ、ヒジリ、サヤとマコトが駆けつけた。そして、オノミが俺達に言う。


「トウジくん、アキヒトくん! 世界は消えないから安心してくれ。この日の為に僕とメノミは手を打ってきたんだ。既にこの世界は創造神から外れている」


「トウジくん、アキヒトくん。オノミが言う通りよ。創造神が消えても世界は残るわ」


 それならと俺もケビン(アキヒト)も躊躇せずに頭を斬った。そして、創造神が消えた。


「フウー、終わったか」


「ああ、終わったな。そして、始まりだ!!」


 その言葉と同時に俺に斬りかかって来たケビン(アキヒト)。俺はその刀を受け止めた。鍔迫り合いの状態になる。


「オイオイ、どういうつもりだ? 俺はお前に攻撃される謂れは無い筈だが?」


「いやー、悪いな。あんたに無くても俺にはあるんだ。あんた無回流のトウジだろ? 俺は有界流うかいりゅうのアキって日本で言われてたけど、聞き覚えは?」


「ああ、お前がそうなのか。聞き覚えはあるが、やっぱり攻撃される謂れは無いな」


「フン、眼中に無いって感じだな。俺は事あるごとにあんたの名前を師匠から聞かされて、いつか出会ったら斬ってやるって思ってたんだ。この世界に来た時にはもう会えないと思ったけど、あんたも来てくれたからな。折角だから腕試しだ。どちらが上か、試してみようやっ!!」


 言葉に力がこもり、押し込んでくるアキヒトだが、俺はソレを受け流した。そして、一足一刀の間境まで下がる。気合を込めてアキヒトを見据え、アキヒトが気付かぬ内にアキヒトを一刀両断にした。


「いやー、アキヒト!!」


 ヒジリが叫んで飛び出して来た時には、俺の無傷で怪我一つ無い状態だったけどな。


「いやー、負けた、負けた! 俺では遠く及ばない様だな。流石はあの師匠がべた褒めするだけはある。けど、諦めた訳じゃないぞ。俺も修行してまた再戦を挑ませて貰う」


「いつでも良いぞ」


 俺が返事をした瞬間に、ヒジリとアキヒトが真っ二つになった。驚愕しつつも俺は二人が死ぬ前に無傷をかけ、無碍もかけた。そして、ソコには創造神が立っていた。


「ワシはメノミを愛しておるっ!! 貴様、オノミの眷属よ! ワシを邪魔しおって! 許さん! 許さんぞーっ!!」


 こりゃヤバイ。さっきよりも神力が溢れかえってるし、持ってる剣も良く斬れそうだ。俺はサヤとマコトにも無碍をかけて隠した。


「全く、あんたみたいなのを地球じゃストーカーって言ってな。接近禁止命令が出るんだよっ!!」


 言って俺は創造神を斬った。が、斬り飛ばす事が出来ない。こりゃ困ったな。俺は考えながら攻防を繰り返していた。

 ソコにアキヒトが現れた。


「オイ、あんたのスキルに無有むうは有るのか?」


「ああ、有るぞ」


「良し、それならもうコイツは滅するのは無理みたいだから封じ込めようや。俺が先にスキルを使用するから、間髪入れずにあんたもスキルを発動してくれ」


「ああ、分かった」


「行くぞ! スキル【有無ゆうむ】!」

「スキル【無有むう】!」


「なっ、何じゃっ! ワシが、ワシが…………」


 そして創造神は封じ込められた。 ……らしい。うん、良く分からないな。俺は素直に聞いた。


「で、何がどうなってんだ?」


 それに答えをくれたのはオノミだった。


「アキヒトくんのスキル【有無】は有って無い状態を作る。一方、トウジくんのスキル【無有】は無いけど有る状態を作る。二つのスキルが合さってかけられた創造神は、神すら知らない空間に封じ込められたんだ。もう二度と出てくる事は出来ないだろうね」


 うん、やっぱり良く分からんが、出て来れないなら良しとしよう。そして俺は無碍を解いた。


「トウジ、良かった」

「トウジ、やっぱり凄い」


 二人が俺を手放しで褒めてくれる。うん、嬉しい。そして、ヒジリがアキヒトの元に行き、


「ア、アキヒト、あの…… 」

「何て顔をしてるんだ、ヒジリ。これからお前も俺の修行に付き合ってくれ」

「うん、喜んで!!」


 顔を赤くして嬉しそうにしているヒジリはやっぱり女の子なんだと再認識した。胸部装甲が俺の好みじゃないから良かったと思う。


 そんな中、オノミとメノミが俺達に言う。


「五人とも、有難う。コレで世界は救われたよ。そして、サヨウナラだ。元々、僕達も創造神が創造した神だから、創造主が消えたら僕達も消えるんだ……」


「そして、この世界にも新たな神が必要だから、トウジくん、よろしくね…… 私達はあと少しで消滅してしまうから……」


 何て言ってやがるが、誰が神なんかになるか。俺は言ってやった。


「あと少しってどれくらい時間があるんだ?」


「もう、時間は無いよ。恐らくこうして喋ってる間に消え…… ないね? どういう事だろう? 分かる、メノミ?」


「えっ、オノミに分からないなら私に分かる訳無いじゃない! でも、どうして消滅しないの」


 ソコで俺は答えを教えてやった。


「二人にかけた【無病息災】はしゅも消し去る。言ってみれば、創造神との因果関係も一種の呪に当て嵌まるから、消しておいたんだ。ソレに今やこの世界中の人々が二人が救ってくれたと考えて信仰しているんだぞ。その信仰心が二人に新たな力と役割をもたらしていると思うぞ。俺は神様なんて柄じゃ無いから、二人にはそのままこの世界の神として仕事をして貰わないと」


 俺がそう言ったら、メノミが俺に抱き付いてきた。


「トウジくん! 有難う!! コレでオノミと目眩めくるめく官能の高みを目指せるわっ!!」


 いや、神様の仕事をして下さい。今は俺も何も言えないが。そんな俺達の間をサヤとマコトが割って入った。


「「女神様でも、トウジを誘惑しちゃダメだよ!!」」


 ソレが全てを終えた言葉になった。












※作者より


 長らくお付合い頂きまして有難うございました。【俺のスキルが無だった件】、これにて完結となります。

 恐らくはこの終わり方に納得の行かない方も居られるかと思いますが、この続きは読み終えた方の想像にお任せしたいと思い、この形になりました。

 文字数も三十万文字を超え目標達成致しました。また、新たな作品も執筆しております。他の連載中の作品共々、新作を投稿した際にはよろしくお願い致します。 

 

  


 

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