第83話 神様のお願いの件

 二柱の神は俺達に向かって話しかけてきた。


 ん? そういや俺がかけたスキルが解除されてるな? 何でだ?


「先ずはその疑問に答えようかな? 一応僕も無の男神ではあるから、何とかトウジくんのスキルを模倣できるようになったんだよ。いやー、苦労したよ。凄いね、トウジくんのスキルは」


 考えが読まれてしまった。まあ、ここは神様の領域テリトリーだし、しょうがないか。それじゃ、俺が有の女神メノミを見て良い女だなぁなんて思ってるのもバレてる訳だ。良し、堂々と妄想しよう。


「いや、ソコは少しは遠慮してね……」


 注意されてしまった。


「まあ、あまり脱線するのも何だし用件を言うよ。今、この世界では封印されていた神が封印を解かれて、邪神、魔物、魔獣を使って侵略してきている訳だけど、実は封印されていた訳じゃないんだ。アレはこの世界の創造神で、有の女神メノミが自分のモノにならないと分かったから、闇堕ちするまでの間、別の世界に行ってただけなんだ。自分がかけた有の女神メノミの封印が解けたのを察知して、更に戻って来ても僕も有の女神メノミも見つけられないから、腹いせにこの世界の人を消そうとしているんだよ」


 続いて有の女神メノミが言う。


「今は国々と、B級以上の冒険者達が世界各国で頑張ってくれてるから、誰も犠牲者が出てないけれど、相手は創造を司る神だから邪神も魔物も魔獣も幾らでも創造出来るの。だから何れは人々に犠牲が出だすわ」


「そうなる前にトウジくんの出番なんだ。君にしか出来ない事をお願いしたいと思ってね」


「俺にしか出来ない事ですか? 何かありますか?」


「うん、明確に指示を出せたら良いんだろうけど、神にも制約が多くてね。明確には言えないけれど、トウジくんなら世界中の人々を護れるんだ」


「俺なら護れる……」


 俺は目を閉じて考えた。深く深く、己自身についても、スキルについても。


 そして、俺は理解した。確かに護れると。その時だった。俺は内側から変わったのを感じた。そう、覚醒したんだ。俺のまとう雰囲気が変化したのをサヤとマコトも感じたのだろう。


「「ト、トウジ…… だよね?」」


 心配そうにそう言ってきた。俺は微笑みながら返事をした。


「安心してくれ、サヤとマコトとᕼしたいのは変わってないから!」


 俺の名台詞にはサヤとマコトだけでなく、有の女神メノミからもツッコミが入った。


「「「助平!」」」


 いや、不安そうだったから場を和まそうとしてだな…… 無の男神オノミは苦笑いして黙ってるし。フォローしてくれよ。


「さて、今ならトウジくんも分かったよね。先ずはお願い出来るかな? それが終わったらもう一つのお願いを聞いて欲しいんだ」


 フォローは無かった。


 まあ、取り敢えずは先ずやるか。俺はこの世界を思い浮かべる為に無謬を使用した。そして、全大陸の全人類を、全建物、全飲物、食料を対象にスキル無碍を使用した。ソコで、無の男神オノミと有の女神メノミが人々に語りかけた。


『人々よ、聞きなさい。我は無の男神。安心しなさい。貴方方は今なら邪神や魔物、魔獣からは見えなくなっている為に、攻撃される事はない』


『そして、更に聞きなさい。我は有の女神。復活した神は我ら二神が再び封印します。二日後には元の生活に戻れますから、それまでは我慢しなさい』


『『我ら二神が約束しよう! 人々よ、今はそのまま、待つのです! 必ずや貴方方は守ります! 二日後に貴方方はその答えを知るでしょう!』』


 圧倒的な神力だな。どうやら人々も神の声を聞いて落ち着いたようだ。さて、もう一つのお願いは何ですかね?


「二日後って制限をかけてましたけど何か理由があるんですか?」


 サヤが二柱の神に聞いた。


「うん、今から僕と有の女神メノミが創造神を止めに行くんだけど、二十四時間後に君達三人にもその場に来て欲しいんだ。もしも僕達が創造神を止められなかった時には、悪いけど君達三人と、もう二人の計五人で創造神を止めて欲しい。その時は創造神を滅しても構わないからね」


「私達は戦いに行く訳ではないの。話合いに行くのだけれど、決裂した時の事も考えてお願いしてるの。頼めるかしら?」


 俺はサヤとマコトを見た。二人が頷くのを確認してから、俺は聞いた。


「俺達三人以外に二人って言いましたが、その二人は今ドコに?」


「ココであって、ココじゃない空間に一人ずつ呼んで同じ話をしているよ」


 うん、神様ってやっぱり凄いんだな。俺はそう再認識した。


「分かりました。それじゃ、二十四時間後に俺達は勝手に向かえば良いんですね?」


「ええ、それで大丈夫よ。二人は二人でそれぞれが自分達で移動してくれるから」


「はい、それまではココに待機してれば良いんですか?」


「いいえ、自由に動いてくれて構わないわよ。今なら高給素材が取り放題なんだし」


 おお、そう言えばそうだった。けど他の冒険者に悪いかな。だから少しだけにしておこう。序に最近俺の無窮箱に篭って出てこないテツも運動させよう。そう思い、俺達は二柱の神に言った。


「それでは二十四時間後に」


「「よろしく」」


 その言葉と共に俺達は何もない大地に立っていた。そして、二キロほど先に魔物の気配がある。


「テツ、出ておいで。少し運動しよう」


 マコトがテツに声をかけたら、尻尾をフリフリしながら巨大バージョンでテツが出てきた。俺はマコトに注意した。


「SS級未満でな。それ以上は俺とサヤでキレイに狩るから。素材を大切に」


「えーっ、テツだってSSS級とじゃれたいと思うよ」


「トウジ、こうしよう。一体だけなら、SS級とSSS級、X級と戯れても良しにしてあげよう」


 サヤがそう言うから、俺はテツの目を見て一体だけだぞと念押しした。ワンと返事をしたが本当に分かってるだろうか。不安だ。


 まあ、取り敢えずは素材を集めよう。今なら取り放題なんだから。俺達は魔物の気配に向かって進み、そして狩って狩って狩りまくってしまいました。他の冒険者の皆さん、ごめんなさい。反省します。だって、S級が意外と少なくて、五百体。SS級が千二百体。SSS級が同じく千二百体。X級が三千体。Y級が二千体。そして何と! Z級が五千体も居たんだよ。そりゃ、我を忘れて狩ってしまうよね。


 もうこれだけで左団扇の生活が出来るけれど、俺は後々の事を考えて、他の集団の元に向かって、同じ様に狩って狩って狩りまくった。まあ、役に立つかどうかは分からないけれど。

 そして、素材にもならない邪神達は皆、無影に閉じ込めた。中でジッとしているから、死んでるかと思ったけど、どうやら何かを聞いているらしい。

 まあジッとしてるなら良いかと思い放っておいたら、中の邪神の数が減っていた。


 ん? どういう事だ? 逃げられたのかと思い、俺は暫く目を閉じて自分のスキルを視ていたら、邪神達からよこしまが消えて、神になって何処かに消えていた。そして、俺は更に深く深くスキルを視てみたら、邪神達が聞いているのはどうやら仏法のようだ。


 良いのか? 仏の教えで悟りを開いて神になるのは。俺は考えるのをココで放棄した。だって、何か触れてはイケナイ気がしたから。


 それからも凡そ五時間かけて狩って狩って狩りまくって、俺達も無碍により姿を消して、時間が経つのを待つ事にした。二人とは、もう二人って誰だろうな? なんて話をしながら食事をして休む事にした。大事の前だから、二人とは五回戦で止めておいたぞ。誰か五回戦で我慢した俺を褒めてくれ!

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