第65話 王都に出発の件

 翌朝、失恋のショックを引きずるタイサンから、ある提案を受けた。

 自分と一緒に王都に行かないかと言ってきたのだ。俺は途中にある町にも寄ってみたかったが、ナッツンはここから国に帰るらしく、話相手をしてあげてくださいと俺達に言ってきた。

 俺は妻二人と相談してそれを受ける事にした。護衛依頼としてギルドに出してくれるそうなので、報酬も手に入るしな。


 そこで暫く自分のステータス確認をしてなかった俺は久しぶりにステータスの確認をすることにした。

 最後に見てからレベルもかなり上がったし、スキルも増えたようだから、確りと見ておこう。


 名前:トウジ

 性別:男

 年齢:三十二

 職業:【無職】神級職

 称号:【を極めかけし男】

 配偶者:サヤ・マコト

 レベル:29

 生命力:6,980 魔法力:3,015

 体力:4,278 魔力:1,425 器用:2,853 敏捷:3,980

 攻撃力:7,280(無敗刀むはいとう+680)

 防御力:5,490(竜牙の鎧(強化版)+1,200)

 スキル:【

 無音むおん:

  (味方)自身や対象者(物)が発するあらゆる音を消す グループを認識して使用可能

   (敵)相手を喋れなくして魔法詠唱を出来なくさせる 詠唱が必要なスキルも同様 また、音を聞こえなくする

 

 無効流むこうりゅうLv.MAX:

  刀を用いる剣術 斬れないモノはない 斬撃無効を無効にする(ややこしい)


 無毒むどく:

  (味方)自身や対象者(物)の毒を消す 消せない毒はない

   (敵)自身や対象者(物)から消した毒を無限箱に保管でき、その効力を変化できる 毒を敵の体内に送りこめる

 

 無臭むしゅう:

  (味方)自身や対象者(物)の匂いを消す

   (敵)どんなに嗅覚に優れた者でも、匂いを感じなくさせる

 

 無空間むくうかんLv.MAX:

  自身が行きたい場所までの空間を無くす 自身を含めて十二人まで同時移動可能


 無機むき:

  生命が無い存在を無限箱の素材を使用して作成出来る 形は自由自在


 無影むえい:(New)

  対象者(物)を光の一切無い場所に閉じ込める


 無我むが:

  を捨てて、自身が望んだ者とパーティーを組める


 無在むざい:

  無いのにる、るのに無い状態 敵のあらゆる感知、攻撃無効 但しこちらからも何も出来ない 


 無有むうLv.3:(New)

  そこには無い筈の空間を有る状態に出来る 五十立方メートル


 無傷むきず:

  自身や対象者(物)の傷を完全に消せる 欠損も復元する


 無汚むお:

  自身や対象者(物)の汚れを消す


 無謬むびゅうLv.MAX:

  対象者(物)を確認でき、論理的に判断する 自分の居る場所を中心に半径二十キロで敵味方の居場所が分かる


 無病息災むびょうそくさい:(進化)

  自身や対象者(物)の病(しゅ)を消す

  消せない病(しゅ)はない

  体の老化を遅らせる

  心の病は治せない


 無痴むち:(New)

  (味方)対象者の壊れた心を治す

     (癒すのではなく治す)

  (敵)対象者の力が自身よりも低い時に対象者の心を壊す 期間なども任意で決めれる

 

 無限箱むげんばこ:

  形のない箱で、何でも入れる事が可能 容量は無限はてない 内部は自動整理(解体)される

 

 無碍灯むげとう:

  起点を中心に半径五センチメートル~百メートルの範囲(選択可能)を照らす、何ものにも妨げられない尽きない灯り 不死者はこの灯りにより昇天する


 金精コンセイ様の祝福:

  尽きない精(性)力(永久)

  女性喜ぶ左右の手指(意思を込めて触るだけで快楽が生まれる しかし、魔法力を消費する)


 

 うん、自分でも思うが色々と考えさせられるな。俺のスキルは何処に向かっているのだろう? そして、称号が増えてるし。『を極めかけし男』って何? 極めた先に何が待っているのか······ 考えてみたけど、分からない。分からない事は分からないと言う事が分かったという事だ。(ややこしいな。)

 そのうちにサヤとマコトにも相談してみようと考えて俺はスキル表示を止めた。

 まあ、取りあえずは王都に行ってみよう。そして、妻二人と楽しもう。そう考えてスキルについては取りあえず放置する事にした俺は、妻二人とともにタイサンのいる宿屋に向かう。

 宿屋では朝からバタバタと兵士やメイドがせわしなく動いていた。俺達の顔を知っているメイドがタイサンの居る部屋に通してくれた。



「やあ、お早う。トウジ殿、サヤ殿、マコト殿。今日はもう少ししたら準備が整って出発するそうだけど、良いかな?」


「ああ、こっちはいつでも構わないけど。一つ提案が有るんだけどな、聞いてくれるか?」


 俺は丁寧な言葉遣いは要らないとタイサンに言われたので、くだけた口調で話をしている。


「クフフフ、勿論だよ。トウジ殿。」


「俺達も馬車を持っているんだが、タイサン陛下には俺達の馬車に乗って貰って、王族ですって宣伝してるあの専用馬車には兵士長にでも乗って貰ったらどうかな? あ、俺達の馬車は乗り心地は良いぞ。引っ張るのはゴーレムだし」


「ゴーレムなのかいっ! それは凄い、是非見せてくれ! さあ、今すぐ見よう!」


 途端に興奮しだしたタイサンをドウドウと宥めて、


「そんなに慌てなさんな。もう少しで見せれるんだから、ちょっとだけ辛抱してくれよ」


 と落ち着かせた。しかしそこで俺の無限箱から顔だけ出したトウサマがタイサンに話しかけた。


「魔道具【師】の方とお見受けする。どうか、我らを見て改造したりはしないようにお願いしたい」


 俺はビックリしたが、タイサンは落ち着いていたのに興奮がぶり返してトウサマの顔に近づいていく。メイドが陛下、危険ですとか言ってるが聞こえてないようだ。


「やあ、はじめまして。僕はタイサンという、しがない魔道具【士】だよ。君はトウジ殿のゴーレムなんだね。自我を持つなんて素晴らしいね」


「しがないなどと謙遜される必要はないと思うが? 貴方から感じる暖かい魔力の波動は我が主から感じる波動とは違うが、我には心地好い。自我は我が主が心から願ってくれたのが良かったのだと思う。誕生した時には芽生えていた」


「ほうほう、そうなんだね。それは凄いなぁ。ねえ、君は体のサイズを変えられないかな? 出来れば道中で君と話をしたいんだけど、あっトウジ殿、こちらの方の名前は?」


「えっと、トウサマだけど······」


「トウサマ、何て頼りになりそうな響きなんだ。良い名前だね、それでトウサマ。どうかな?」


 トウサマは表情は変わらないが俺の方を見ている。俺はトウサマに頷いた。


「主の許可が出たので、サイズを変えよう。そうだな? これぐらいで良いか?」


 そう言うとトウサマは全身を無限箱から出しながら、小型犬ぐらいのサイズになった。

 いや、俺が頷いたのは無理だと思ったからそう言えば良いぞって意味だったんだけど。まさか、サイズ変えれるの? 産みの親だけど知らなかったよ、トウサマ。今度ちゃんと話をして、何が出来るか確認しよう。


「おお、そのサイズなら話をしやすいね。良し、それじゃ出発しようか?」


「待て待て、まだ自分達の方の準備が済んでないだろ? 一緒に出なきゃ意味がないから」


「あっ、そうか······ それじゃ、トウサマ。準備が出来るまでここで話をしよう。良いかい?」


「分かった。魔道具【師】殿」


「ああ、僕はさっきも言ったけど、タイサンだよ。名前で呼んでくれると嬉しいな」


「タイサン殿、これで良いか?」


「うんうん、本当は殿も要らないけど、まあ妥協するよ。クフフフ」


 そして、自分の世界にタイサンが入ったので、俺達は兵士長に会いに行った。

 兵士長には陛下は俺達の馬車に乗ってもらい、王族専用の馬車には影武者として兵士長や兵士が乗って欲しいと伝えた。陛下も既に了承しているとも伝えたら、兵士長はシブシブながら納得してくれた。


 そして待つこと三十分。遂に準備が整い、町を出る事になった。町を出るまでは陛下も王族専用の馬車に乗る。小さくなったトウサマも一緒に乗る。話はまだ終わらないようだ。俺達は馬車の周りを徒歩で着いていく。無謬で見る限り敵意ある存在は居ないようだ。

 町の人達に馬車の窓から手を振りながらタイサンは口を動かしている。実はトウサマに質問していると知らない町の人達は陛下ーっと言いながらにこやかに見送ってくれた。


 門を出て町が見えなくなってから、俺は馬車を出した。すると、コズキとウズキが出てきてくれた。俺は二頭を撫でながら馬車に繋いだ。

 皆が興味を持った目で見てくるが、その前にトウサマを連れてタイサンが近づいてきた。


「これが、トウジ殿の馬車かい? おお、このゴーレムがトウサマの群れの一員だね。素晴らしいね、この肉体美はどうだ! 後でトウジ殿とも話をしないとね。それよりも、この馬車は見た目が小さいけど、私と私の世話をしてくれるメイドが三名も一緒に乗るけど、大丈夫かい?」


「ああ、大丈夫だ。気にせずに乗ってくれ」


 俺は今日の為に中を改造した。馬車の中は今や一軒の家と言っても過言ではない。

 入ると玄関になっていて、靴を脱いで貰う。すぐ目の前にはリビングが広がる。その広さは二十畳だ。扉が三方にあり、奥の扉は寝室で十二畳。右の扉は十メートル廊下があり、左右に二つずつ扉がついている。それぞれ右からトイレ、風呂、左は客間が二つだ。

 リビングの左の扉はキッチンだ。


 先ずはサヤとマコトが三人のメイドを連れて中に入る。そして、数分後に興奮しているメイドを一人連れてサヤがタイサンを迎えに出てくる。


 俺はその間に馭者席に座り、出発の準備をした。中からタイサンの驚きの声が俺にだけ聞こえた。その声を合図に俺は馬車を出した。

 さあ、王都に向かおう。



 

 




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