第43話 転生者の件
サヤがコクアに聞く。
「ちょっと待って! コクアちゃんって転生者なの? 何処からの転生なの? それに二百八十三年って······」
サヤの質問にコクアが答える。
「えっと、私はアルキメテウス系星雲の第三惑星、ヤキュウからの転生者です······ って言うのはウソで、地球という星の日本という国から転生しました。前世の名前は
コクアの告白(ややこしいな)に俺達は驚く。名前からして、そんなに昔の人には思えないからだ。
今度はマコトが聞いた。
「コクアちゃんって、前世は何年生まれなの?」
「はい、私は西暦1985年に生まれて、2006年に世界に惜しまれつつ、人に刺されて亡くなりました」
世界に惜しまれつつはどうでも良いとして、年上なのは間違いないな。向こうで生きてたら三十六歳か······って、アカネさんと同い年なのか!
そこまで考えた時にコクアから逆に質問がきた。
「えっと、皆さんも転生者なんですよね? お名前を伺った時にそう思ったんですけど······」
「いいえ、私達はこの世界に巻き込まれて日本から召喚されたの。それより、コクアちゃん。転生って事は神様に会ったの?」
エルが返事をしながらそう聞いた。
「皆さん、転移された方だったんですね。私は神様かどうかは分かりませんが、会ったというよりは声を聞きました。私は死んだと認識してから自分の体はない状態で、何処かも分からない真っ暗な場所で神様と思われる方と声のみで話をしました」
「そう、そうなんだ。でも何でダンジョンコアになったの? それに二百八十三年って本当なの?」
エルが続けて聞くと、コクアは苦笑しながら答えた。
「実は転生させてくれると聞いて、望みはあるかと聞かれた時に、次は人じゃなくて、食事も排泄もしない、動く必要もない、長寿の者に転生させてくれって頼んだんです。そしたら、『あい解った、ソナタの望みにピッタリな者がある』って言われて気がついたらダンジョンコアになってました······ それが今から二百八十三年前の事になります。ただ、外の世界の事は全く知らない訳じゃなくて、時々ダンジョンの魔物を外に探索に行かせてその目を通して世界を見てました。それで百年位時間を潰しましたかね······ そしたら
そこまで聞いて、俺はコクアに言った。
「俺達は西暦2000年代に地球にいた者ばかりだ。そして、コクアも2006年までは地球にいたんだろ? それなのに時間の経過が違うから違和感を感じるんだ」
「あっ、そうなんですね。皆さんも2000年代に日本に生きてらした方達なんですね。うわ~、それなら聞きたい事があるんですけど、【こ○亀】や【ゴ○ゴ1○】ってまだ連載されてますか?」
俺達はそれを聞かれて転けそうになった。聞きたいってソレか。漫画の連載についてなのか······
そう思ったが、正直に教えてやった。さすがに女性三人は読んでなかっただろうし。
「○ち亀は残念ながら連載を終えたぞ。○ル○13はまだ連載を継続してた筈だ」
「うわー、こち○って終わったんですかぁ······ 最終話まで読みたかった······」
ガックリ落ち込むコクアを見て苦笑いする三人の女性。そこでサヤが名案を思い付いたかのように言った。
「
サヤのその言葉を聞いて、コクアが叫ぶ。
「ソレです!! 教えて頂いて有り難うございます」
そして、そのまま
「待て待て、まだ用事は済んでないぞ」
「えっ、何か用事が有りますか?」
コクアが不思議そうに俺に聞いてくる。
「このダンジョンの事だよ。コアの無くなったダンジョンはどうなるんだ?」
俺がそう聞くとコクアは合点がいったというように頷いた。
「ああ、そうでした。忘れてました。コアである私が居なくなったら、溜まった魔素が魔物を際限なく産み出して氾濫が起こっちゃいます。それは困りますよね。」
うお、危ねぇ。確認して良かった。
「それを止める為に何か方法はあるのか?」
「はい、あります。ちょっと待って下さいね」
そう言うとコクアは目を瞑り静かに呼吸を繰り返す。暫くして両手を胸の前に出すとビー玉より一回り大きな宝珠が現れた。それを静かに台座に置くコクア。
「はい、これでこの子がマスタートウジを主としてこのダンジョンの新たなコアになりました。私の欠片とマスタートウジの魔力を利用して作られた私達の子になります。大事に育てて下さいね。あっ、二人の正妻さんが怒ってますが、セッ○スして子作りした訳じゃないから怒らないで下さい······」
「それは分かったけど、言い方には気をつけましょうね」
顔は笑ってるが目に怒りを滲ませたサヤがそう言った。俺としても子供と言われても実感が湧かないので怒られても困るしな。
「それで、育てるってどうすれば良いんだ?」
「はい、この子には私の知りうる全てを注ぎこみましたが、まだ自我はありません。ですから、マスタートウジがこのダンジョンの状態をどうしたいかを伝えればその通りに実行するだけです。今の状態をキープしたければそれをこの子に手を置いて伝えて下さい」
うーん、効率良くレベル上げをするために俺達以外が入れなくなっているからな······ それでは他の冒険者も困るだろうし、良しこうしよう。
俺は新たな宝珠に手を置いて伝えた。ダンジョンを地下十階までとして、地下一階~地下五階はE級~D級冒険者が攻略出来るレベルに。地下六階~十階はD級~C級冒険者が攻略出来るレベルへと変更する。そして、各階に転移装置を設置して入口にも設置する。五階と十階にはボス部屋も作り、余っている魔素を利用して宝箱を五回に一回出現するように設定した。その時に俺の魔法力が少し吸われた気がした。コクアに聞いてみた。
「俺がダンジョンの仕様を伝えたら魔力が吸われたけど、毎回そうなるのか?」
「いえ、そうではなくてマスタートウジの魔力を吸収して少しずつ成長していきますから、仕様変更に伴い栄養を頂いたのだと思います。年に一度で良いので、この子に魔力を与えてやって下さいね。三年ほどで自我が目覚めると思いますので」
「ふむ、そうなのか。分かった。それと、魔力を与えすぎるとどうなるんだ?」
「成長が早まるだけで、悪影響はありませんよ」
「うん、それも分かった。さてと、それでだ。今すぐ
「えーーー、早く○ち亀の続きを読みたいのに······」
「少し位遅くなってもこ○亀は逃げないから、大丈夫だ」
そう言って俺達は無空間でエーメイさんの所に戻った。
既に皆が起きていて、外で朝食を一緒に食べていた。戻った俺達に見知らぬ女性がいるのを見て不思議そうな顔をされる。そこで、俺は説明をしてコクアに
「
「おっと、私の黒歴史をご存じな貴女はアカネさんでしたよね······ ひょっとして【チェーンナックルのアカネ】?」
おっと、凄い通り名が飛び出したぞ。スケ番か?二人ともスケ番なのか?
俺のそんな思いを余所に盛り上がる二人。
「やっぱりそうなのね。会えて嬉しいわ、向こうでは会えなかったから」
「私は貴女の噂を聞いて怯えてましたよ。アカネさん」
「良く言うわ。当時の貴女は私を潰してやるって息巻いてたって聞いたわよ」
「それは手下の手前でそう強がってただけです。伝説の男、ケンジすら倒した貴女の実力は良くわかってましたから······」
少し離れた場所で聞いていた俺達はビックリしてケンジさんを見た。そこには苦笑しているケンジさんがいた。
「まあ、お互いにこんな所で会ったのだから仲良くしましょう」
アカネさんがそう締めくくると、ホッとしたようにコクアも頷いた。
その日は一日皆で過ごし、ゆっくりとした休日を楽しんだ。明日はいよいよ城へと向かう。決戦の日だ。これで、決着をつけてサヤとマコトと落ち着いてイチャラブな日を過ごせるようにするぞ。
決意を新たに俺は今晩も二人を相手に頑張るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます