第42話 暗躍する人の件

 

 ここはゴルバード王国の東に位置する国、カイン。そのカインの辺境にある村の一つ。その村には始まりの四人を頂点とする、十六人の転移者達がいた。

 拠点として使用している建物には、始まりの四人がいた。先日まではゴルバード王国にいたが、特に用事が無くなったと言われて、この村に戻ってきたところであった。


 始まりの四人は憤っていた。何故なら帰ってきたばかりなのに、またゴルバード王国の国王に直ぐに王国へ来るようにと連絡が入ったからだ。


「俺達を舐めてるのか? あの邪神は!」


「全くだ。呼ばれて行ったら用事が無いから帰れと言っておいて、帰ってきたら直ぐに来いってどういう事だ!」


「どうするんだ? ヒジリ?」


 四人の中でもリーダー格であろう青年に一人が尋ねた。


「そうだね······ そろそろ消えて貰おうかな、あの邪神には。いい加減邪魔になってきたし。僕達もソロソロ本格的にこの世界を楽しみたいしね······」


「おっ、ついに決心したか! じゃあ、あの฿₥₩₮の野郎とも決別だな」


「コウ、そのつもりだよ。けれど、この間は居なかったね? いつも居るのに何処に行ったんだろう······ まあ、いいか。それもあの国王バカに聞けば」


「それで、どうする? 俺達だけじゃなくて彼奴らも連れて来いってことだが」


「ちょうど良いから連れて行こう。それでヒカル、新たに来た五人の様子はどうだい?」


「ああ、あの五人ならばまだ苦しんでいるが、何とか乗り越えそうだよヒジリ」


「そうか。これで僕達も十六人になるね。十分な戦力だね」


「ヒジリ、そんなに増やして大丈夫か? 中にはいずれ俺達にとって変わろうって考えてる奴もいるが?」


「カイ、何を心配してるんだよ。ヒジリのスキルと俺達のスキルが有れば何の心配も要らねえよ」


「コウの言う通りだよ、カイ。僕のスキル【有】があれば誰にも負けたりしないさ。僕達の理想の国を作って面白おかしくこの世界を生きよう」


「それじゃ、彼奴らをよんでくるか。作戦会議だな。₢₰の野郎を消すための」


「居たら฿₥₩₮と℘∅も一緒にね」


 そして、一人が部屋を出ていき三人を連れて戻ってきた。そこで話し合いが始まり、連れ立って七人は部屋を出ていくのであった。





 俺達は順調にレベルを上げていた。ゴルドーさんが始めに作ったのはエイダス用の大太刀だ。

 銘は白焔刀はくえんとうだ。+590の名刀で、斬った敵に白焔の追加攻撃がある。

 そして、エルさんの武器も出来上がった。今まで借りていた乱流刀と同じサイズで更に軽くなった気流刀きりゅうとう+400だ。二人はこの新たな武器に慣れる為に魔境の洞窟の地下五階で連携を確認しながら魔物狩りに力を入れていた。

 防具に関しては皆が今借りているモノで十分だと言うので、そのままゴルドーさんから買い取る事になった。


 そして、レベル上げ五日めに頼んでいた武器が全て出来上がった。


「ふぅー、流石に疲れたぞ。ただ、チーズーとバーグが良く手伝ってくれたのでな、この短期間で何とか作る事が出来たぞ」

 

 ゴルドーさんの言う通りで、チーズーさんとバーグさんの二人はレベル上げには参加しないで、ゴルドーさんの護衛兼手伝いとして残り、二人揃って騎士を止めてゴルドーさんに弟子入りすると言い出した。テリャーさんは少し慌てたが、二人の意志がかたいと見たツキミさんが口添えして、マクド君も認めたので、二人は騎士を止めてゴルドーさんに弟子入りを正式に志願した。

 ゴルドーさんも手伝ってくれた様子から、この二人なら良いだろうと弟子入りを認めた。これからは事態が落ち着くまで、二人の指導をしていくそうだ。


 そして、俺達は魔境の洞窟で時には違う相手とパーティー登録をしながら連携を確かめ、エーメイさんに助言をもらいながら着実にレベルを上げていった。

 コクアはちゃんと仕事をしていた。効率的にレベルを上げれる様に魔物のレベルと数を上げてくれたので、俺達は非常に助かった。

 そして、一週間。その間、ナッツンは城の仲間達と連絡を取っていたが、王妃と第一王子が城を出て外遊に向かったこと。国王が一人で城にいて、宰相であるナッツンをクビにしようと命令したこと。マクド君を廃嫡したことなどを教えて貰っていた。国民は絶望しており、早く戻って来て欲しいと懇願されたそうだ。

 もう暫く二、三日だけ辛抱してくれとナッツンは言って通信を切った。


「キヒヒヒ、トウジさん。お相手達も強引な手を打って来たようです」


「ああ、そうみたいだな。そろそろレベル上げを止めて最終決戦に向かうか。その前に俺はやることがあるから、明後日に城に向かおう」


「マクド様、覚悟は宜しいですか?」


 テリャーさんがそう聞くと、マクド君は


「テリャー、当たり前だ。父の仇をうち、私は国王になる。ナッツンには続けて宰相をしてもらうぞ」


 覚悟を決めた顔つきでそう言った。


「畏まりました。それでは明後日に決行ですな」


「ああ、それで良い。トウジ、それから皆にも力を借りる。よろしく頼む」


 俺達に頭を下げるマクド君に皆が任せて下さいと返事をした。

 さあ、俺は明日の用事がチャチャっと終わるように準備しておくか。


「トウジ、何で明後日なの?」


 サヤが俺に聞いてきた。


「ああ、明日はコクアに依代よりしろを作ってやろうと思ってさ。ほら、魔物のレベルや数を上手い具合に調整してくれてただろ? だから作ってやっても良いかなと思って」


「「「着いて行っても良い?」」」


 サヤとマコトは分かるがエルまで言ってくるとは思わなかった。


「うん、別に着いて来ても良いけど、依代よりしろを渡すだけだからそんなに時間もかからないし」


「えっ! 作ってから行くの? コクアちゃんの意見を聞いて作った方が良いよ、絶対!」


 マコトがそう言うと、サヤやエルまでそうだと言い出した。チャチャっと作ってはいどうぞってする予定だったのだが······ まあ、良いか。


「分かったよ。取り敢えず基本的な部分だけ作っておいて、仕上げはコクアの意見を聞いてから作るようにするよ」


 俺がそう返事をしたらそれが良いと三人が賛成してくれた。

 そして、その夜もそれぞれが愛を確かめあって就寝した。


 翌朝、朝飯を食べる前にコクアの所に行くと伝えてあったので、三人ともちゃんと起きてきた。艶々のお肌で。俺は朝から無病をかけてまわり、それから三人に再度合流した。

 そして、無空間で管理部屋に行く。管理部屋に入った途端にコクアから声がかけられた。


『マスタートウジ、お早うございます。早朝ですが、緊急のご用件でしょうか?』


「お早う、コクア。俺にとっては緊急じゃないけど、コクアにとっては緊急って言っても良いかな?」


『はて? 私にとって緊急ですか? 特に思い当たる事はないのですが······』


「ハハハ、それもそうだな。俺がそう思ってるだけだから、コクアには訳が分からないよな。実はな、コクアのお陰で俺達も思ってた以上にレベルを上げる事が出来たから、そのお礼をしようと思ってな」


 俺がそう言うと、コクアからピンク色の雰囲気が。


『お礼とはひょっとして······ 遂にあの日と同じ快感を! さあ、マスタートウジ。早く私に両手を置いて感じさせて下さい!』


「違うわ!」


 俺は即座に突っ込みを入れた。


『えっ! 違うんですか!?』


 サヤとマコトは呆れ顔になるし、エルからは質問がきた。


「トウジって、機械を感じさせられるの?」


 その言葉にコクアが突っ込みを入れた。


『ちょっと、そこの女! 少し位顔とスタイルが良いからって、勘違いしないでよね! 私は機械なんかじゃないわ! マスタートウジからこの洞窟だんじょんの管理を任されている超優秀な有機生命体よ!』


 その勢いに圧倒されたのか素直に謝るエル。


「ご、ご免なさい······」


『分かれば良いのよ』


不毛な会話を打ち切る為に俺は話を進める事に。


「コクア、前に言っていただろ。依代よりしろを作ってやるって。今日は今まで良くしてくれた礼として、依代よりしろを作ろうと思って来たんだ」


『え、本当てすか!? 本当の本当に!』


「ああ、そんな事でウソは吐かないぞ。だから今から作るから希望があれば言ってくれ」


『やっ······ ヤッターーー!! 希望まで聞いて貰えるんですか。それなら、マスタートウジ、私に両手を置いて下さい。私の成りたい体のイメージをマスターの脳内に送ります!』


 物凄い勢いでそう言ってきたので、俺は素直に宝珠に両手を置いた。宝珠から具体的なイメージが流れてくる。それは······


 年の頃は二十歳位。身長は百五十五センチ。体重は四十五キロ。サラサラのロングな黒髪に顔は小顔。目は二重でパッチリ。鼻筋はまっすぐで、唇は少しポッチャリとした感じでエロチズムを感じさせる。

 胸は推定D位で、腰は高い位置で括れていて、足はホッソリとしながらも女性らしい柔らかさを持っているように······ 


 実際に映像が送られてきたので、金精コンセイ様の時よりはるかに作るのは簡単だった。俺からのサービスで、金精コンセイ様と同じように、生殖機能も完璧に作り人と変わらない体にしておいた。そして、裸のままで出したら三人の女性にジト目で見られるのがわかっていたので、服を着せた状態で、宝珠コクアの前に出した。


『凄い! こんな短時間で私の理想どおりの依代よりしろが出来るなんて······ マスタートウジ、有り難うございます! それでは、申し訳ないですが、私を持ち上げて依代よりしろの胸の上に置いていただけますか?』


 俺は言われた通りに宝珠を持ち上げて作った依代よりしろの胸の上に置いた。

 すると、宝珠は光りながらその胸にスウッと入っていった。そして、閉じていた目が開く依代よりしろ


「やったー! ダンジョンコアに転生して二百八十三年、やっとこの退屈な状態から抜け出せました!! 有り難うございます!」


 なっ、聞き捨てならないセリフが出てきた。転生ですと!!


 





 

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