第39話 国王達の思惑の件

 

 城の王族居住区では、三柱の邪神による会話が始まっていた。


「どうやら、魔境の洞窟にいた【助平スケベ】だけが取り柄の邪神は、封印を解かれて何処かに行ってしまったようだな。」


「あら、それはそれは。残念だわ、残り少ない神力を吸出しに行こうと思ってたのに······」


「あんなヤツでも異世界では神として崇められていたようだから、もし出会っても油断だけはしないように」


「「ハッ!」」


 それは端から見ていると異様な光景だった。見た目三歳児が大人二人に偉そうな口を聞いているからだ。


「私もようやくこの世界に顕現出来たからな。長く楽しみたいのだ。しかし、この国もそろそろ出た方が良いな。マクドとナッツンが何やら画策しているようだ。神との約定により、我らは人を殺す訳にはいかぬから、違う国に赴こうと思う」


「お待ち下さい、฿₥₩₮様。愚かなる人どもに我らの力を示してからこの国を出る事をお許し下さい」


 国王が自分の息子に頭を下げる。それを黙って見ていた三歳児は許可を出した。


「良いだろう、但しお前だけだぞ、₢₰よ。℘∅は我と共にこの国を出る事とする」


「ハッ、仰せのままに」


 恭しく三歳児に頭を下げる国王の顔は邪悪に歪んでいた。一方、連れて行くと言われた王妃は三歳児に聞く。


「それで、どちらに向かいますか? ฿₥₩₮様」


「先ずは······ この大陸から出るぞ。この大陸に居てはいずれは奴らに見つかるだろう。だから、違う大陸に行ってまた遊ぼうではないか。人を殺さないように細心の注意を払ってな······ クククク」


 そう楽しそうに答えた三歳児は、待ちきれなくなったのか、王妃に言った。


「では、向かうぞ。℘∅よ」


「はい、฿₥₩₮様」


 そして、部屋からは二人の気配が消えた。後に残った国王はブツブツと独り言を呟きだした。


「฿₥₩₮様の許可はいただいた。後はマクドとナッツン、あ奴ら二人の協力者共に目にものを見せてくれるわ。始まりの四人と、あの三人を使うか。私が殺すのはダメだが、人同士ならば関係無いからな······ クックックックッ、これは楽しみになってきた。始まりの四人は恐らくヤられるだろうが、あの三人ならば或いは·····」


 そうして国王は頭の中で様々な計画を練っていくのだった。




 明けて朝。太陽が目に染みるぜ。

 俺はそんな事を思いながら誰よりも早く目が覚めたので、外に出ていた。そして皆が起きて来るのを待ちながら防壁の中で無限箱の中を確認していた。


「トウジさん、おはよう」


 隣の家からエルさんが爽やかに挨拶してくれた。何故か顔は艶やかで元気一杯のようだ。


「エルさん、おはよう。早いね」


 俺は少しくだけた口調で挨拶をしてみた。これでもし怒られたら元に戻そう······


「あっ、やっとくだけた口調で話してくれた。気になってたのよ。私の方が年下だし、丁寧語で話されるから、嫌われてるのかと思って」


 いや、寧ろ好きです。俺は内心を押し隠してエルさんに言う。


「いや、何しろ知らない世界に連れて来られて、初めて色々とお世話になったから、ついね。でも、これからはこの口調で話させてもらうよ。良いかな?」


「勿論。名前も呼び捨てで良いからね」


「分かった、エル。今日からよろしく。俺も呼び捨てでも良いよ」


「うん、それじゃ、トウジって呼ぶね」


 彼氏彼女にはなれないが、好みどストライクのエルと仲良くなれたのは嬉しい。

 これは浮気じゃないからね。俺は男女間の友情はある派だから。


「さてと、私は皆を起こす前に朝食の準備をしようと思うけど、トウジ食材をもらえるかな?」


 そうエルから言われたので、俺は朝食用に大牙イノシシのミンチ肉を出してみた。エルはそれを見てから言った。


「確かお義父とうさんの家にある畑に玉葱があったし、トマトもあったわね······ 麺がないかお義父とうさんに聞いてみよう。うん、メニューは取りあえず決まった。有り難うトウジ」


「どういたしまして」


 俺が大袈裟に頭を下げたら、後ろから冷気が漂ってきた······ 恐る恐る振り向くとそこにはアカネさんがいた。


「トウジさん、私には冷たいけど、他の人妻とは親しいのね。やっぱり私が若くないからかしら······ 悲しいわぁ」


 アカネさんの言葉にエルは慌てて否定する。


「アカネさん、何を言ってるんですか。トウジとはそんなんじゃないですからね!」


 俺はキッパリ真顔で否定された事に少し傷付いたが、ちゃんと同調しておく。


「アカネさんも、良い加減に俺を揶揄からかうのは止めて下さいよ。本気にしちゃいますよ」


 俺がそう言うとアカネさんはニッコリ笑って、


「一度試して見る?」


 なんて言ってくる。ダメだ、この人はきっと元ヤンさんだ。貞操観念はあるようだが、男を揶揄からかうのが本能のようになってる。そこで俺も対応を切り替える事にした。


「はいはい、機会があればお願いしますね。今からエルが朝食作りを始めるそうなんで、起きたんなら手伝ってやってもらえますか? 俺は皆を起こして来ますから」


「あら、そうなの。それじゃ、手伝うわ。エルちゃん、何をしたら良い?」


 そして、二人で話し始めたので任せて俺は家に入り、先ずはサヤとマコトを起こしに行った。


 寝室に行くとマコトは既に起きていた。サヤはまだ寝ている。俺はサヤを起こそうとするが、マコトに止められた。


「トウジ、昨日はゴメンね。余りの快楽に耐えられなかったみたい。トウジは大丈夫? 欲求不満じゃない?」


 俺は果てた二人の裸をオカズに自家発した事は内緒にして、マコトに大丈夫だよと笑いかけた。


「今日は頑張って耐えるから、またしてくれる?」


 と可愛くオネダリされたので勿論だよと返事をしてから、サヤを起こす為に肩に触る。すると、


「マコトだけじゃなくて、私にもお願いね。トウジ」


 といつの間にか起きていたサヤにもオネダリされた。ん? マコねえって呼んでたのにと思ったらマコトが俺の思いを察したようで、


「私達二人はトウジの妻として同じ立場なんだから、呼び捨てで呼びあおうって決めたの」


 そう教えてくれた。だから、俺もエルとの事を正直に話した。序でにアカネさんの揶揄からかいもね。


「ママったら! 分かった、トウジ。後でお説教しとくね!」


 いきどおるマコトをまあまあと宥めて、朝食作りの手伝いを頼んだ。そのままケンジさんを起こしに行く俺。

 寝室には精も根も尽き果てた風のケンジさんがいた······ 俺は声をかけてみるが返事がない。ただの屍のようだ······ じゃなかった。俺は試しに無傷をかけてみた。が、効果はないようだ。それもそうか、これは【傷を無くす】からな。回復って訳じゃないし。

 どうするか悩んだが、無病を使用してみた。すると、ケンジさんが復活した。

 俺は精も根も尽き果てた状態はやまい状態と同じだと認識できた。次からは俺にも使えるな。あっ、俺は尽きないんだった······


 復活したケンジさんを連れて外に出ると、エイダスにユウヤとフィオナ、エーメイさんとツキミさん、ゴルドーさんにテリャーさん、チーズーさんとバーグさんが揃って朝食作りを手伝っていた。

 が、チーズーさんを別にしてエイダスとエーメイさん、ユウヤの三人も死にかけのような顔色だったので、無病をかけた。顔に赤みが出て、三人とも元気になったので良しとしよう。


 そして、朝食を食べ終えた俺達はまた、ゴルドーさんに留守を頼みレベル上げの為に出掛ける魔境の洞窟に出掛けることに。

 すると、チーズーさんとバーグさんも残ってゴルドーさんの護衛をすると言い出した。

 俺はピンときたが顔には出さずに二人を皆と少し離れた場所に連れて行き、無音をかけた。


「さあ、これでここで話すことは皆には聞かれません。お二人とも、俺の質問に正直に答えて下さいね。ちなみにこの中では俺にウソは通用しませんから」


 そう言いながら無謬で二人を見る俺。

 あっ、ヤッパリ······ 金精コンセイ様、よりによってこの二人にこの祝福は無いでしょうに······

 そう思いながら、俺は二人が正直に言うか試してみた。


「チーズーさん、バーグさん、お二人が金精コンセイ様からいただいた祝福はどんなモノでしたか?」


「わ、私は【肉棒の潤滑】をいただきました」


 と、チーズーさん。顔を赤らめてちゃんと言った。


「自分は、【乙女の快楽】をいただきました!」


 バーグさんも顔が真っ赤だが、正直に話してくれた。一つを除いて······ 俺はそれを指摘した。


「アレ? おかしいなぁ。何か忘れてませんか? 【寝ても覚めてもヤりたくなる】とか······」


「「な、な、な、何故、それを!!」」


 二人が声を揃える。ハア、まあこれは金精コンセイ様から言わば押し付けられた祝福モノだからなぁ······ 二人に罪はないか。

 俺はそう考えて、一つだけ約束させた。


「俺達は出掛けますが、その前に昨日お二人が使われた部屋には無音をかけていきます。そこでなら愛し合っても文句は言いません。が、必ず一度終わればどちらかが、ゴルドーさんの様子を確認してください。ですので、何度でも愛し合って貰っても構いませんが、一度にかける時間は最長で三十分です。これ以上は許しません。良いですか?」


「「はい、分かりました!」」


 二人は俺が認めるとは思ってなかったのだろうが、俺も朴念仁ボクネンジンではないのでゴルドーさんの安全の為に必要ならしょうがないと諦める。最後に念押しで言っておく。


「先程証明した通り、俺は自分のスキルがかかった場所で起こった出来事やウソを見抜けます。部屋にも勿論スキルをかけていきますが、この近辺のありとあらゆる場所にかけていくので、お二人が約束を破れば直ぐに分かりますからね。俺はお二人の騎士道精神を信じていますが······」


 ウソです。信じてないから念押ししてます。ゴメンナサイ。


 そして、俺は皆の所に戻りチーズーさんとバーグさんに護衛を任せた事を伝えてから、揃って魔境の洞窟へと出発した。






 

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