第40話 スキル上げの為の件


 俺は暴君リザードの巣の入口で皆にお願いがあると言った。それは、無空間スキルの検証とLv上げの為に協力してほしいと言うことだ。

 昨夜、俺のスキルを知ったケンジさん達家族は直ぐに了承してくれた。そして、エイダスとエル夫婦も頷いてくれる。


 エーメイさん、ツキミさん夫婦とユウヤ、フィオナ夫婦、マクド君とテリャーさんは少し考えている。俺は無空間スキルの説明をした。

 行きたい場所の途中にある空間を無くしてくれるので、直ぐにその場所に行けること。Lvが低い為に俺を含めて三人しか同時に行けないこと。そして、確信は無いが、Lvが上がれば一緒に行ける人数が恐らく増えること。

 を伝えて様子を伺う。すると、ユウヤが言ってくれた。


「先生、僕が取り敢えず同行しますから先ずは試して見ませんか? 一人では試されたんですか?」


「ああ、短い距離だけど試してみた。エルの建てた家から防壁の外にだけど、俺一人では何の問題もなったよ」


「それじゃ、先ずは僕と二人で魔境の洞窟の入口に行ってから、ここに戻って見ましょうか。それで大丈夫なら次は僕ともう一人という感じでどうですか?」


 ユウヤは地球でもこんな時はいつも一番に名乗りを上げてくれていた。あの頃に戻ったみたいで俺は嬉しくなる。そこにケンジさんが加わった。


「どうせなら初めから二人を連れて行った方が確実な検証になるだろ? だから俺もユウヤと一緒に行くよトウジ」


 そう言ってくれたので、言葉に甘えて検証させて貰うことにした。そして、二人を無事に連れて帰ってこれたら、懐疑的な他の皆も信用すると言ってくれた。

 何しろ誰も見たことも聞いたこともないスキルなので、慎重になるのも当たり前だ。


 そして、俺は念のために無我を使用してユウヤとケンジさんの二人とパーティー登録をした。


 そしてスキルを発動した。『無空間』

 すると、俺の目の前には魔境の洞窟の入口が見えている。俺はユウヤとケンジさんを見た。二人とも口を開けて呆然としている。そんな二人に俺は声をかけた。


「どうですか? ケンジさん、俺の目の前には魔境の洞窟の入口が見えてますが。ユウヤはどうだ?」


「あ、ああトウジ、俺の目にも見えてるよ」


「僕も見えてます」


「それじゃあ、同時に進んで見ますか?」


「分かった」


「はい」


 俺達三人はせーのと声をかけて一歩を踏み出し魔境の洞窟の入口前に進んだ。すると、確かにそこは洞窟の入口前だった。俺は左右にいる二人を見た。


「凄いな、コレは。本当にもう着いたのか······」


「こ、これは凄いです! 本当に間の空間が無くなったんですね!」


 ケンジさんは呆然と、ユウヤは興奮して喋る。行きは成功だ。これなら帰りも成功するだろうと思い、二人に言った。


「来たばかりですが、戻りましょうか? 皆も心配してるでしょうし、皆にはどんな感じで見えていたのか聞いてみたいですし」


「そ、そうだな。これなら疲れなんか感じないから、皆も喜ぶだろう」


「はい、僕も早く戻って、フィオナに聞いてみたいです!」


 そこど俺はさっきまで居た暴君リザードの巣の入口前を思いスキルを発動した。『無空間』


 俺達三人の目の前では右往左往している皆が見えた。コレは早く戻らないとと思い、二人に頷き先に見えている景色に進んで貰う。少し遅れて俺も進んだ。


 こちらに残った皆は俺達三人が姿を現すと、ビックリしていた。俺はサヤとマコトに聞いてみた。


「俺達はどんな感じで見えていた?」


「トウジとユウヤさんとケンジ叔父さんが一歩進んだかと思うとパッと消えちゃった」


「私はジッと三人の横から見ていたんだけど、サヤが言うようにパッと消えた感じだったわ」


 ふむ、スキルの影響下にある人には行き先が見えているけど、影響下にない人には見えてないんだな。コレは俺一人だと分からなかったことだ。


 無事に戻った俺達を見て懐疑的だった人もどうやら受け入れてくれるようだ。俺は先ずはエーメイ夫妻に移動して貰おうと思い、声をかけた。


「エーメイさん、ツキミさん、先に移動して洞窟前の安全確保をお願い出来ますか? 俺は何往復かしないとダメだと思うので」


「うんうん、ワシにその頼みとはトウジは分かっておるの。勿論、ワシとツキミが安全確保してやるぞ」


 そう言ってくれたので、俺は無我を使って先のパーティー登録を解除してから、新たにエーメイさんとツキミさんとパーティー登録をした。

 そしてスキルを発動。


「おお、コレがケンジとユウヤが見えていた景色か!」


「わあ、洞窟の入口が目の前にありますね」


 俺は二人を促して見えている景色に進んだ。そして、パーティー登録を解除。俺だけでまた戻る。

 今度はマクド君とテリャーさんが興味津々で近づいてきたので、二人を移動さすことにする。

 第二の検証を兼ねてパーティー登録をせずにスキルを発動してみたら、二人にも同じ景色が見えているようだ。どうやら俺が連れて行こうと思うだけで良いみたいだ。

 そして、男二人を連れて移動。また、取って返す俺。そこで一度ステータスを確認してみたら、無空間のLvが3に上がっていた。予想通りに連れて行ける人数が増えた。俺以外に四人になったので、家族を連れて移動することにした。


「うわあ、直ぐそこに洞窟の入口があるね」


「コレは歩かなくて済むから楽になるわぁ」


 マコトとアカネさんが感想を言っている。そんな二人を見ながら俺は言った。


「さあ、後がつかえてますから行きましょう」


「うん、そうだね。行こう、サヤ」


 そして、俺だけまた戻りエイダスとエル、ユウヤとフィオナの四人に最後の検証を頼んでみた。


「四人には悪いんだけど、この巣穴に入って暫く進んだ場所から、魔境の洞窟の入口前じゃなくて、地下一階の入って直ぐの場所に移動出来るか試してみたいんだ。構わないか?」


「ええ、私も興味深いから是非ともやってみましょう。ね、ユウヤ」


「先生、僕の予想では問題なく移動出来ると思います。が、検証することも大切ですから、やりましょう」


「勿論、トウジのやりたいようにやってみましょう。確かめて損はないもの」


「ああ、そうだな。エルの言う通りだ、やってみよう」


 皆から了承を得たので巣穴に入る事にした俺達。俺は中に入るならばとパーティー登録を念のためにしておいた。すると、入って直ぐに暴君リザードか待ち構えていた。それも五体。しかし、レベルの上がった俺達はサクッと狩ってしまう。

 狩った暴君リザードを俺の無限箱に入れて、ここでやってみようとなったので、俺は魔境の洞窟の地下一階を思い浮かべた。


 目の前には地下一階が広がっている。四人にも同じ景色が見えているのを確認して、俺達は進んだ。すると、ちゃんと地下一階にたどり着いている。


「凄いすごい! トウジ、コレは楽だったわ!」


 エルよ、見たか。俺はヤれば出来る男なんだぜ。


「うーん、トウジは人外にまた一歩近づいたな」


 おい、エイダスよ。俺も少しは気にしてるんだから、もう少しオブラートに包んで言ってくれ。


「本当に、トウジさんは神への道に入られてるんでしょうね······」


 いや、フィオナよ。こんな助平スケベ心満載の神なんて······ 居たよ、前例金精が······


「先生、僕も負けないように『先人の教え』を習得しますよ。あっ、今のところ第十二代です」


 おお、ユウヤよ。俺が教えてくれと言ったのは何代目まで居たかだぞ。途中経過は良いんだぞ。


 そして、階段を登り地上に出る俺達。地下から出てきた俺達を見て先に移動していた皆は、洞窟の中にも行けるのか! と驚いていた。


 そして、レベル上げの為に地下五階に向かう事になったが、俺とサヤ、マコト、ケンジさん、アカネさんの五人とそれ以外の人達とに別れて進む事になった。昨日、ケンジさんが設置した魔道具で移動出来るのが、九人だったので俺達五人は俺のスキルで移動することにしたのだ。残りは八人なので魔道具で移動出来る。

 先に八人に移動してもらい、俺達五人は後から行く事にした。八人はエーメイさんのスキルでパーティー登録をしていた。


 俺達五人も俺のスキルでパーティー登録をしてから、皆に言った。


「管理部屋があるみたいだから、そこに先ずは向かいたいけど良いかな?」


「おお、そう言えばトウジは、この洞窟の主になったんだよな」


「うん、行ってみたい。ねぇ、マコトも行ってみたいよね?」


「うん、私も行ってみたい!」


「そこはダンジョンコアがある場所なの?」


 アカネさんから聞かれた俺はそうですと答えた。


「じゃあ、早く行って確認して主認定してもらいましょう。権限を譲られただけで、コアに認定してもらわないと本当の主にはならないから」


 アカネさんがそう教えてくれたので、俺達五人はスキルで管理部屋に移動した。


 管理部屋は二十畳位の広さで、台座に乗せられた宝珠がある。アカネさんはそれを指差して、アレがダンジョンコアよと教えてくれた。

 どうすれば良いのか聞くと、コアに手を置けば良いらしい。

 俺はコアに近づいて両手を置いた。突然、


『アハーン!』

 

 と、艶かしい声が部屋に響いた。

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