第35話 憑依されてる件


 地下二階に進んだ女性陣とエーメイ。


 エーメイがここでの注意事項を言う。


「この地下二階ではリンガ共より女性に対してイヤらしい奴らが居るんじゃ。そう、皆もよく知る小コンセイと大コンセイじゃあ! 奴らは女性に対して魅了の力を持っておる。だが、今の皆のレベルであれば、小コンセイの魅了は跳ね返す事が出来るじゃろう。ただし、大コンセイのは分からん! じゃからよーく注意して進んで、大コンセイのエリアに入る前に小コンセイで耐性を養うんじゃ」


 エーメイがそう言った傍から小コンセイが現れた。だが振り向き様に大剣を振ったエーメイにあっさり両断された。


「まだワシの話の途中じゃろうが! 邪魔するな!」


 振り向き様にエーメイが振った剣は小コンセイに届いていなかったが、剣を振った事による衝撃波が飛び小コンセイを両断した。それを何事もなかったかのように話を続けるエーメイ。


「そこでじゃ、皆には」


「「「「イヤイヤイヤイヤ!」」」」

 

 ツキミとフィオナ以外の女性から突っ込みが入る。不思議そうに女性達を見るエーメイとツキミとフィオナ。


「えっと、何かありましたか? 皆さん」


 フィオナが代表して皆に聞く。


「イヤ、フィオナさんも見たよね。お義父とうさんの剣が届いてないのに小コンセイを両断したのを!」


 エルがそう言うと、ツキミが返事をする。


「それが何か?」


 当たり前の事を何を聞いているんだという風なツキミの返事にサヤが突っ込む。


「ツキミさん、それが何かじゃないです。スキルや魔法の発動もなく剣風だけで両断するなんて、今まで見た事がないです!」


 サヤの突っ込みにフィオナが返答する。


「サヤさん、皆さんも。ご存知なかったですか? エーメイは剣を振った事による衝撃波でワイバーンも倒しますよ」


 続けてエーメイ自身が言った。


「いや、すまんのう。驚かせてしまったか。ワシの剣技は初めて見た人は大抵驚くからのう。ツキミやセレちゃんには幾度か見せた事があったもんじゃから······」


「エーメイ様、あの邪竜クワゼーロを退治された噂は本当なのですか?」


 アカネがエーメイに尋ねた。


「おお、あの大きな蛇な。アレなら確かにワシとS級冒険者のパーティーで退治したぞ。ワシの名前は伏せておくように冒険者ギルドと冒険者達には言っておったが、噂になっておったか······」


「はい、私達家族はそのS級冒険者の人達と交流がありまして、その時にエーメイ様の名前は出てこなかったのですが、恐ろしく強い人に助けてもらったとおっしゃっていたので。その技を聞いた時にはそんな事が出来る筈はないと半信半疑でしたが、今実際に目の当たりにしました」


「ワシに惚れたかの~、アカネちゃん?」


 調子にのってそう言うエーメイ。


「クス、私はこの場に居ないので言わせていただきますが、夫ケンジに心底惚れておりますので、エーメイ様には尊敬の念しかございません」


 キッパリそう言われ落ち込むエーメイ。しかし、気を取り直したのか、ここで宣言をした。


「よし、この地下二階はワシが殲滅しよう。皆は後ろで見ていてくれ!」


「「「「「「イヤイヤ!」」」」」」


 さすがに突っ込みを入れる女性達だが、エーメイは無視して先を進み始めた。それはまるで道を予め知っているかのように。


 仕方なく後を着いていく女性達。小コンセイのエリアを抜け、大コンセイのエリアに入り暫く進んだ所でツキミが言った。


「あなた、そちらは地下三階への階段の方向じゃないです。ここを左に行かないと階段には行けません」


「この道で良いんじゃ、ツキミよ。この階のコンセイを殲滅するにはこちらに行かねばならん」


 エーメイはそう言ってずんずん先へと進む。納得は行かないが着いていく女性達。

 そして、前方に巨大な扉が見えてきた。その前で立ち止まり、喋り出すエーメイ。


「ここじゃ! この扉の中に地下二階の、いやこの洞窟の全てを牛耳る魔物、【金精コンセイ様】がおられる!」


 そう言って扉を開けて中に入るエーメイとそれに続く女性達。中は三十メートル四方の部屋で、一番奥に男根を模したような金色に輝く巨大な像がある。そちらに向かって歩いて近づく一行。

 その時に、アカネがエーメイの【おられる】という言い方に引っ掛かりを感じて、イヤな予感がしていたので、わざと開けていたのだが、その扉が静かに閉まった······



・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・



 俺達はようやく地下二階にたどり着いた。地下三階では倒した魔物はまだ復活してないようで、打ち漏らした魔物が数匹出てきただけだったので、それほど苦労はしなかった。チーズーさんの案内で、進んで最短ルートをとっているのだが、露払いもテリャーさん、バーグさん、チーズーさん、マクド君がしてくれてるので、俺は簡単に自分のステータスを確認しておいた。


 帰って落ち着いて見れば良かった······。気になるスキルが生えていたのだが、今は早く洞窟を出ようという事で、皆が先を急ぐ。


 俺はLvが上がった無謬を使って地下二階を見てみた。無謬は鑑定だけではなく、その効果範囲にいる自分の親しい者や敵対する者、等が分かるようになっていた。すると、女性達がまだ地下二階に居ることを知る。そこで俺はケンジさんとエイダスに声をかけた。


「エイダス、ケンジさん、女性達はまだこの地下二階にいるみたいだ。俺がちょっと様子を見に行ってくるから、二人はユウヤとナッツンと一緒にこのまま洞窟を出るまであの四人についてやっててくれるかな?」


「ああ、それは良いが何故トウジにはこの階にまだいると分かるんだ?」


 エイダスから疑問の声が出た。俺が説明しようとしたら、ケンジさんが喋りだした。


「トウジ、アカネもそこにいるなら大丈夫だぞ。大抵の事はアカネが対処出来るからな。それに死の危険がある場合には天運が働くからな。更にエーメイのオッサンもついてるだろうから、大丈夫だと思うけどな」


 俺はそう聞いたが、先程言いかけた言葉と共に返事をする。


「エイダス、スキルのLvが上がったら分かるようになったんだ。効果範囲内の敵味方の位置が分かる。ケンジさん、その場所に皆に死の危険は無さそうだけど、何かイヤな感じがするから迎えに行こうと思いまして。俺一人の方が移動も早いですし、イザとなれば皆を敵に知られない様に逃がす事も可能ですから。それに、エーメイさんが俺のスキルでは居ないんですよね。何かあったのかも知れません」


 俺がそう言うとケンジさんは、心配そうに言い出した。


「俺の大事な家族をほっぽりだして何をしてるんだ、エーメイのオッサンは?」


「それを確認するためにもちょっと様子を見てきますよ」


「よし、トウジ。こっちは任せてくれ。エルや他の皆を頼むぞ」


 エイダスの返事に片手を上げてから、皆と別れて道を進んだ。




・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・




 その頃、金精コンセイ様を前にしたエーメイは女性達に激を飛ばす。


「皆、油断をせずに総攻撃じゃ! 金精コンセイ様のこのお体を壊してしまうのじゃ!」


 言い方に引っ掛かりはあるが、それに従う女性達。アカネはまず皆に防御魔法を唱えた。


「白き守りの障壁よ、皆の盾となれ! 【聖障壁ホーリーバリア】!」


 女性達を白い光が包む。それを待って、マコトが先陣を切って攻撃した。


「輝く王の猛る剣よ! 敵を打ち砕け! 【剣打乱舞ダンスドゥクープドッエペ】!」


 マコトの魔法が直撃した金精コンセイ様は、ピンク色の煙を出して辺りに広げた。それを見たエーメイがいう。


「効いておるぞ! ドンドン行けい!」


 女性達は煙を吸っても体に影響が出なかったので、次々と攻撃を当てて行く。


 戦闘が始まって十五分。辺り一面に広がるピンクの煙の中、遂に金精コンセイ様が壊れた。

 反撃がなかったので、女性達の攻撃の全てが直撃していたので、十五分かかったのは長すぎる位だった。

 そして、エーメイの雰囲気が一変した。


「グフフフ、我が封印を解いてくれて有り難う。花嫁達よ」


 エーメイの言葉に疑問を感じながら、アカネがいう。


「エーメイ様、一体何をおっしゃっているのですか?」


「グフフフ、気づかぬか? エーメイはおらぬ。我が依り代になってもらったのでな。さて、我も久しぶりの肉体を得て逸っておる。それ、その様な物騒な物を脱ぎ捨てて、我に奉仕せよ」


 エーメイの口からその言葉が出ると同時にエーメイが光り輝き、全裸になる。それを見た女性達は抗いがたい官能の波を体に感じてしまう。


 そして、まずはツキミが装備を解きはじめ、フィオナが続こうとしていた。それを見たサヤが叫ぶ。


「ツキミさん! フィオナさん! くっ、何なのこのイヤらしい波は······」


 エーメイの肉体を乗っ取った何かは言う。


「無駄じゃ。我の艶煙エンエンをアレほど吸い込んだのじゃ。耐えられるモノではない。さあ、無駄な抵抗は止めて、官能の波に身を任すのじゃ」


 そこにトウジがやって来た。進化した無色、【無在】を使用して存在を消して。


 トウジは一目見てエーメイがエーメイじゃなくなっていることに気付きながらも、ツキミとフィオナの下着姿に興奮していた······













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