第34話 男達が行くの件


 男性陣はそれなりに順調に進んでいた。ユウヤはスライムを斬りまくり、ケンジさんと、テリャーさんはそれ以外を倒していた。

 テリャーさんはレベルが二つ上がったので、チーズーさんと入れ替わり、何とユウヤも上がったので(スライム特典はここでも有効だったようだ)、バーグさんに入って貰う。

 そうしていたら、エイダスも上がったのでマクド君に入ってもらった。


 地下三階の最奥に着いた時には、チーズーさん、バーグさん、マクド君は既に一つレベルを上げていた。

 そして、地下四階に降りる階段の前に見たことがないオロチがいた。ケンジさんが叫ぶ。


「蠱毒オロチだ! 奴はヤバい! 俺以外は下がれ!」


 そう言うとケンジさんは体の周りを白光で包んだ。俺は無謬を使い蠱毒オロチを見た。


 【蠱毒オロチ】

 自分を中心に半径五メートルの範囲を毒で包んでいる。毒の効果は絶大で、効果範囲に入った人は五秒で死に至る。


 そこまで見てケンジさんを見ると五秒たっても蠱毒オロチに攻撃している。どうやらあの白光で毒から身を守っているようだ。

 俺は試しに無毒を蠱毒オロチに使用してみた。死んだオロチから毒を取り出した事はあるが、生きたオロチからは初めて試すのでどうなるか分からなかったが、毒を無事に取り出せた。

 そして、毒を俺に取られた蠱毒オロチはそのまま漆黒だった体を真っ白にして絶命してしまった。

 アレ? 何でだ······ 

 俺のレベルが上がったようだ。それも感覚で三つは上がったと分かる。

 一方のケンジさんは突然死したオロチの前で呆然としていたが、振り向いて俺をみて言った。


「トウジがやったのか?」


 俺は素直に答えた。


「はい、スキルを使って蠱毒オロチの体内の毒を取り出したんですが、それで死んでしまったようです」 


 俺の返事に笑い出すケンジさん。


「ワハハハハー、それはヒドイ! こいつは血中に毒がある。それが体内を流れているから、恐らく血液ごと取り出したんだろうな。しかし、凄いスキルだな、トウジ。俺もスキルの使用時間内に倒せるか不安だったから助かったぞ」


 そう言ってケンジさんは俺にサムズアップしてきた。俺は倒した蠱毒オロチを無限箱に入れてから皆に言った。


「俺のレベル上げはもう目標を超えてますから、後は皆のレベル上げに集中しましょう。それじゃあ、地下四階に行きましょう」


 そうして俺達は階段を降りた。


 地下四階はアンデッド系の魔物が幅を利かせていた。肩で風斬るスケルトン。

 いや、冗談ですけど······ ケンジさんとエイダスによると、このスケルトンは上位種の竜牙ウォリアーで、体のどこかにある核を壊さない限り、骨をバラバラにしても復活するらしい。

 さて、これの相手は剣では難しいと思うがと考えマクド君を見ると、手にした武器は何とハンマーだった。

 いや、ちょっと待って······ さっきまで剣を手にしていたよね······


 ハンマーを振り回して骨ごと核をぶち壊していくマクド君の無双が始まっている。


 真相はナッツンが教えてくれた。マクド君の職業は戦鬼闘士【高級職】らしく、ありとあらゆる武器防具をそつなく使用出来るそうだ。それにプラスして、マクド君は次元箱というスキルを持っていて、その箱の中に片手剣、両手剣、刀、槍、弓、ハンマーなどなど数々の武器を入れてあるそうだ。

 対処する相手によって素早く武器を変えて戦うのがマクド君のスタイルらしい。

 

 なす術なく倒されていく竜牙ウォリアー達。凡そ二百体のうち、百三十体を倒したマクド君は喜びの声を上げた。


「やった! レベルが上がったぞ!」


 それに合わせてチーズーさんとバーグさんは


「「おめでとうございます!」」


 とハモって言う。ケンジさんはまだ上がらないようだが、この階で間違いなく上がるだろうと思う。


 竜牙ウォリアーを一掃して、更に奥に進む俺達の前に現れたのは、死霊ナイトだった。


 そこでケンジさんが、剣に光を纏わせて振るう。それだけで消えていく死霊ナイト。

 チーズーさんとバーグさんはそれぞれの武器に炎を纏わせて攻撃しているが、ケンジさんのように一振でとはいかないようだ。

 マクド君は······ アレは恐らく王家に伝わる聖剣なんだろうな。当たってないのに剣を振った先の死霊ナイトが消えていってる······ まあ、何も言うまい。


 死霊ナイトを倒しきった時にチーズーさんのレベルが上がったそうなので、ナッツンに変わってもらった。


「キヒヒヒ、職業怪盗の技をお見せしますね」


 その笑いはもう止めたのかと思っていたぞ、ナッツン。ナッツンの武器は投げナイフだった。しかも自動で手元に戻ってきている。どうやらナイフが聖銀性らしく、死霊ナイトにも有効なようだ。

 格好エエ。


 更に奥に進むと吸血マミーがいた。当たり前に知ってるように言っているが、全てエイダスに聞いたり、エイダスが知らないのは無謬で確認している。だって、この世界に来てアンデッド系の魔物は初お目見えだから······


 そう言えば、この地下四階は腐臭がヒドイので無臭を使用している。うん、俺のスキルは格好良くはないが、役立つモノばかりだ。自画自賛をしていたら、ケンジさんが叫んだ。


「やっと、上がったぞ! エイダス、変われ」


 そう言って下がったケンジさんに変わり、エイダスが入る。うんうん、中々の連携じゃないか。

 そんな時にケンジさんから声をかけられた。


「トウジ、マクド王子はどうだ?」


 聞かれた俺は素直に答えた。


「武器防具全般をそつなく使用するのは凄いですね。ただ、使用している武器や防具の性能に頼りすぎている気もしますね」


「トウジもそう思うか。俺もそう思う。恐らく剣術は真面目に取り組んでいたんだろうな。型通りだが動きは堅実で悪くはない。が、応用が出来てないように見える」


 そう言ってケンジさんはマクド君を見ている。今は聖剣だろう武器で吸血マミーをシュパッズバッと斬っているマクド君。そこで叫んだ。


「よし! またレベルが上がった! ユウヤ、変わるか?」


「いえ、王子がそのままでどうぞ。今はレベルをもっと上げて下さい」

 

 ん? ユウヤはもう良いのか?俺はそう思いユウヤに尋ねた。


「ユウヤ、確かに二つ上がったけどもう良いのか? まだ上げても大丈夫だぞ」


 ユウヤの答えは、意外なものだった。


「先生、実はスキルが新たに出てきまして、【歴代の教え】というスキルでして、どうも無回流の歴代の師匠達の動きや理念が分かるんです」


 えっ、! 何ソレ! 俺もそのスキル欲しいーー!しかし、大人な俺はそれを顔に出さずにユウヤに言った。


「そうか、それは素晴らしいスキルじゃないか。益々精進出来るじゃないか、ユウヤ」


「はい、先生。それで、今も歴代の教えを脳内で展開しているんですが、まだ二代目の師匠なのでこれからドンドン吸収させてもらおうかと思って」


「一体、何代目まであるんだ? 分かったら教えてくれ」


「はい、分かりました」


 俺は羨ましさを堪えてユウヤに笑いかけた。ユウヤも笑顔で返事をする。

 ケンジさんはそんな俺達を見ながら、剣術流派は良いよな~と呟いていた。そう言えばケンジさんは拳術流派だったのに、この世界での職業が剣術系になったんだよな······

 まあ、そこはしょうがないと諦めて貰おう。


 そして、吸血マミーを倒しきった時にチーズーさんが、言った。


「全員が目標を達成しましたがどうしますか?地下四階を殲滅してから出ますか?」


「そうだな。元々この魔境の洞窟の魔物の氾濫を抑えるのが目的ではあったし。折角ここまできているなら、地下四階は殲滅しておきたいな」 


 ケンジさんがそう言うので、俺達は総力戦で地下四階を殲滅する事にして、チーズーさんに案内されながら先を進んでいった。 


 最奥まで行く時間はチーズーさんによれば三十分程の距離らしいので、魔物を倒しながらでも一時間位だろうと考えて進む俺達。


 実際には五十分程で地下五階へと向かう階段までたどり着いた。そこにケンジさんが魔道具を設置した。


「これで次はここから始められるからな」


 どうやら、入口からこの場所まで転移出来る魔道具のようだ。よし、これで次はここまで歩かなくてすむ。


 しかし、帰りは歩いて戻らなくてはならなかった。入口に設置するのをケンジさんが忘れていた為に······

 大事な事は忘れないでくださ~い······


 俺達は疲れた体を鞭打って、もときた道を戻るのだった。






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