第23話 第一王女様の件


 翌朝、二人がまだ寝てる時間にスキルを解除して、俺達二人は起きて家を一旦出た。


 そして、今帰ったかのように音を立てて玄関を閉めて家に入る。入ってから、家には再度無音をかけた。


「おーい、ユウヤー! 起きてるかぁ!」


 そう大声を出しながら居間に行くと、隣の台所からサヤが出てきた。


「アレ? ユウヤ? ううん、トウジさん?」


 フィオナさんだった。


「おはよう、フィオナさん。思ったよりも早く片がついて、今朝帰って来たんだ。しかしそのままだとややこしいなぁ。変装を解除しても良いかな?」


「えっ? ナッツンさんが居ないですけど、解除出来るんですか?」


 俺は無病をフィオナさんにかけてみた。

 う~ん? 変装って一種の呪い? って考えての事だった。

 そして予想通りに変装が解除されて、ボンッ、キュッ、ボンッのナイスバディが、少し小さめのサヤの服の下に現れた。

 ええ眺めや~。眼福ですな。ウシシシッ。

 

 ハッ! 後ろから殺気が! 

 サヤさんや、見てないですよ。俺は見てないです。本当です······


 俺は慌てて後ろを向いた。


「フィオナさん、私の服では少し小さいみたいだから、着替えてきて下さい」


 無表情で俺を見ながらサヤがそう言う。

 サヤの言葉にハッとして自分を見たのだろうフィオナさん。


「す、直ぐに着替えて来ますね」


 そう言うとバタバタと出て行った。


「トウジ~、やらしい目で見てたね~。やっぱり胸が大きい方が良いの?」


 サヤが俺にそう言うが、全力で否定する。


「そそそ、そんな事はないぞ! おおお、俺の目にはサヤしか写ってないから!」


 そんな言い訳が通用する筈もなく、サヤは無情にも叔父さんに報告だと呟いていた······

 俺は果たしてサヤの家族に会った後に五体満足で居られるのだろうか?

 不安を感じつつも、


「おふぁよう~ございましゅ~。師範、サヤしゃん」


 寝惚けながら起きてきた俺そっくりなユウヤに、無病をかけた。


 自分が元の姿に戻った事に気がついてないようだが、まあ良いだろう。

 着替えたフィオナさんが、また台所に入ったのを見てサヤも入っていく。


 俺はユウヤに話しかけた。


「おい、もう目を覚ませよ。今から話があるんだから、ちゃんと聞いてくれ」


「ふぁい、大丈夫ですよ~。昨日はちょっとフィオナとハッスルして二十回戦しただけなんで。いや~、久しぶりっていうのもあったけど、お互いに目に写る姿が違うとあんなに燃えるとは思いませんでしたよ~」


 その言葉を聞いて怒りを覚える俺!

 テメエ! 俺のサヤを抱いた気になってんじゃねぇだろうな!


 俺の殺気を感じたのか、慌てて言うユウヤ。


「師範、目に写る姿が違うだけで、実際に抱きしめたら、フィオナだって事は直ぐに分かりましたよ。体型はそう見せてるだけで、実際には変わってないので」


 テメエ、それは俺のサヤが貧乳(ゲフんゲフん)······


 止めよう。危険な気が台所から漂ってきた。


 因みにサヤは貧乳じゃない。地球でいうところのCはあるから俺的にはちょうど良い美乳だ!

 そう、美乳だ! ここは試験に出るからノートに忘れずにとるように! 先生は大事な事は二度いうからな!


 オフザケはここまでにしておこう。


「ユウヤ、今日の夕方にある場所に俺達と一緒に行ってもらう。そこは、お前の後に召喚されて、同じ様に城を放り出された人を助けている人が居る店だから安心していい」


 俺がそう言うと、ユウヤは

 

「けど師範、僕とフィオナが姿を現すと大騒ぎになりませんか?」


 と聞いてきたので、俺はスキルの話をして見えない状態で行く事を説明した。


「何ですか!? そのトンデモスキルは?」


 ユウヤは驚いているが、俺だって良く分かってないから説明のしようがない。

 そう言うと、ユウヤは恨めしそうな目付きで言った。


「僕なんか高級職で、大したスキルもないんですよ。それなのに師範はそんな凄いスキルを持ってるなんて······」


 俺はそれを聞き流して、ユウヤに質問した。


「職業は何だ? それと、スキルに無回流はあるか?」


 俺の質問にユウヤは答える。


「僕の職業は【刀神】です。スキルには無回流はないですが、刀術がLv.MAXであります」


「それじゃあ、地球で学んだ無回流のままか······ よし、ユウヤ、時間を見て稽古をしよう。今の俺は恐らく先生と同レベル位になってると思うから、先生がお前に伝えられなかった技と術を俺から伝えるから」


「ふぇ? もしかしてスキルに無回流ってあるんですか? まさかぁ~」


「ああ、有るぞ。もうひとつ無鎧流もあるぞ」


「ひぇーー! もう化物ですね、師範!」


 おい、ユウヤよ言い方ってあるだろうが!

 俺だって少しは気にしてるんだから、口に気をつけろや! 


 俺が黙って睨みを効かせると、ユウヤは顔から冷や汗を流しながら、


「ハハハ、腹が減りましたね~。フィオナはまだかな~」


 とビビりか笑いか分かりにくい喋り方で誤魔化していた。


 するとタイミング良く、サヤとフィオナさんが朝食を持って現れる。

 うん? 二人とも少し顔が赤いがどうしたんだろう?

 気になりはしたが、聞いてはいけないオーラを察して聞かない事にする。


 そして、朝食を皆で食べながら、先程ユウヤに伝えた事をフィオナさんにも伝えた。


 二人にはそれまで家から出ない様に言い、フィオナさんのサイズをサヤが図って、着替えを買いに俺とサヤは出かける事にする。

 ユウヤのサイズは適当だ。男だからな。


 出かける前にユウヤに釘を刺しておいた。


 俺達が出掛けた途端に乳繰り合うなよと·······

 言った時のユウヤの目が泳いでいるのを見て、言わなければ、乳繰り合ってたなと確信した。


 しつこくは言わずに出掛けた俺とサヤは、宿屋『豚の箱』の前で掃き掃除をしていたレイちゃんに会った。

 俺がレイちゃんにお早うと声をかけると、顔を真っ赤にしたレイちゃんが、頭も下げずに宿屋に駆け込んだ。

 ショックを受けた俺に少し顔を赤くしたサヤが言った。


「トウジ、玄関口じゃない裏側ならあの二人の声は良く聞こえてたかも······」


 確かにそうだな。裏側は宿の裏側に隣接しているし、宿のダイカンさんやコーランさん、レイちゃんやヤーン君の居住区だった筈。

 すると、昨日の嬌声を俺達二人だとレイちゃんが思ってると言うことか······ そりゃ、サヤも顔を赤くするわな······

 

 俺は、ユウヤに荒稽古折檻が必要だと心に誓う。


 気を取り直しバーム商会に入って、図ったサイズに合う服をサヤが店員に確認しながら購入する。

 俺は適当に選んだユウヤの服を購入した。

 序でに昼飯用に弁当も購入した。


 そのまま家に帰る。


 服を二人に渡すとフィオナさんが、俺達に話があるというので、四人で居間に移動した。



「先ずは改めてお礼を言わせて下さい。ユウヤと私を助けて頂いて、有り難うございます」


 そう言って頭を下げるフィオナさん。そして、その後に続けて喋り出す。


「私はユウヤが召喚された場に立ち会っていました。父と義母は、召喚は国の魔術師達が魔法を使って行っていると思っていますが、それは間違っています。


何らかの人智を超えた存在が介入しているのを私は確信しました。魔術師達以外の魔力、それも強大な魔力を感じたのです。


それが神なのか邪神、はたまた全く関係ない力を持つ存在なのかまでは分かりませんが、何度も繰り返し召喚を行っていると、その存在がこの国に顕現してしまう危険があると考えています。


私は第一王女でした。この国が好きです。出来うるなら、この国に危険な存在いえ、危険かどうかはまだ分かりませんから未知の存在を顕現させて、国民を巻き込んではならないと思っています。


私とユウヤがこの国に戻ってきたのは、力を付けて父と義母をいさめるためでした。今でもそれは変わってません。けれど、今はお二人に依存している身です。そこまでお二人にご迷惑はおかけしたくないのです。なので私とユウヤはここを出て、自分達で今後の事を考えたいと思っています」


 長い、長いよフィオナさん。危うくその心地好い声音に寝てしまうところだったよ。

 

 しかも、真面目だよ。とても昨夜のあの声の人物と一緒···· ゲフん、ゲフん。

 私は何も言ってませんよ、サヤさん。その怖い目は止めて下さいね、ね!?

 

 俺は内心を誤魔化す為に、出てないヨダレを拭いながら二人に言った。


「まあ、話は分かったよ。けど結論を出すのは明日以降にして貰えないかな? さっきも言ったが、エルさんの店で話し合いをしてから決めて貰いたいんだ」


「師範、それでも僕とフィオナの今後の方針は変えるつもりはありませんよ」


「それはそれで構わないさ。只、少しだけ先延ばししてくれって事だ」


 俺がそう言うと、二人が頷いたので取り敢えず今日は夕方までゆっくり過ごして、エルさんの店に行く事に決まった。

 


 


 



 

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