第15話 スキルがヤバい件


 部屋に戻った俺はステータスを見る。


 名前:トウジ

 性別:男

 年齢:三十二

 職業:【無職】神級職

 配偶者:サヤ

 レベル:7

 生命力:1,260 魔法力:710

 体力:620  魔力:310  器用:450  敏捷:390

 攻撃力:1,120(風斬刀ふうざんとう+400)

 防御力:390(上位蜥蜴ハイリザードの革鎧+60)

 スキル:【

 無音むおん:

  (味方)自身や対象者(物)が発するあらゆる音を消す グループを認識して使用可能

   (敵)相手を喋れなくして魔法詠唱を出来なくさせる 詠唱が必要なスキルも同様 また、音を聞こえなくする

 

 無回流むかいりゅうLv.MAX:

  刀を用いる剣術 


 無鎧流むがいりゅうLv.2:(New)

  刀を用いる剣術 鎧も断ち斬る 

 

 無毒むどく:

  (味方)自身や対象者(物)の毒を消す 消せない毒はない

   (敵)自身や対象者(物)から消した毒を無限箱に保管でき、その効力を変化できる 毒を敵の体内に送りこめる

 

 無臭むしゅう:

  (味方)自身や対象者(物)の匂いを消す

   (敵)どんなに嗅覚に優れた者でも、匂いを感じなくさせる

 

 無視むし:(New)

  (味方)自身や対象者(物)を他者から見えなくする

  (敵)二分間、何をしてきても効果が現れなくなる 


 無色むしょく:(New)

  自身や対象者(物)を見えなくする 透明化

かかった者(物)同士は認識可能 無音·無臭·無視と併用すれば、気配察知·魔力感知も無効


 無瑕むか:

  自身や対象者(物)のきずを消せる 但し欠損は対象外になる


 無限箱むげんばこ:(New)(進化)

  形のない箱で、何でも入れる事が可能 容量は無限はてない 内部は自動整理される

 

 無影灯むえいとう:(New)(進化)

  起点を中心に半径三十センチメートル~五十メートルの範囲(選択可能)を照らす影を作らない、尽きない灯り 明るさを調整出来る


 一緒に見ていたサヤは絶句。


「なっ、何コレ!?」


 俺も同じく絶句。


「何だ、コレ!?」


 自分のスキルなのにヤバいのが分かる。

 

 (New)(進化)って、どういう事?

 無限箱って、容量ないの?

 無影灯って、影が出来ないの?


 無視って、アレだよね? イジメでされるヤツだよね?

 無色って、無色透明の無色かな?

 無音·無臭·無視を併用したら誰にも見つからないってどういう事?


 グルグルと脳内を駆け巡る思考。

 しかし、サヤが先に正気に戻った。


「トウジ! 無色を使用して見て!」


「お、おう、分かった」


 言って俺はスキルを発動した。


 サヤは俺の目の前で目を大きく見開いている。


「消えちゃった! ううん、気配はあるからそこに居るのは分かるけど、視認は出来ないわ!」


 サヤの言葉を聞いて、俺はスキルを併用してみた。


「えっ!? 消えた! トウジ、何処?」


 サヤが慌てている。

 俺はスキルを解除して、消える前よりも近い場所に姿を現した。


「キャアッ! ビックリしたー! トウジ、凄いわ! 気配察知と魔力感知にも反応がなかったの!」


「本当にそうなんだな。闇雲に攻撃してくる相手には通用し難いかも知れないけど、そうじゃない相手になら、有効な逃げ手段になるな」


 俺がそう言うと、サヤが


「逃げるだけじゃなくて、攻撃でも有効だよ!」


 と大きな声で言った。


 しかし、俺のスキル【】って、どエライスキルだな。

 コレでレベルが上がったらどんなスキルが出てくるのか······

 楽しみでもあり、恐ろしくも思う俺だったが、大事な人を護る為に使用して行こうと心に誓った。



 そして、今日は、遂に、サヤと一緒にお風呂に入った。

 俺のスキル無音の効果を知っているサヤは、宿の人や他の宿泊者に聞こえないならと、了承してくれたのだ!!


 うおーーーっ! 生きてて良かった! 

 とだけ言っておこう。


 そして、翌朝は早く起きなければいけないので、お風呂場での五回戦で今日は止めておき、二人で仲良く就寝した。



 五つの時間に起きた俺とサヤ。

 さすがに時間が早すぎるので、まだ居ないだろうと思いつつ受付に行くと、コーランさんが既に居た。


「あら、お早うございます。今日は早いですね、トウジさん」


「お早うございます。今日はギルドの用事で早く出ないとダメなので。コーヒーってもう大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫ですよ。どうぞ」


 そう言って二つ出してくれたコーランさん。

 

「もし、出る時に私が居なくても、カウンターに鍵をおいてて下さいね」


 と言ってくれた。

 分かりましたと俺は答えて、コーヒーを持って部屋に戻る。

 そこには身支度を整えて、朝食のパンを出したサヤが待っていた。

 

 俺はサヤにコーヒーを渡して、ゆっくりと咀嚼してパンを食べる。


 そして、食べ終えた俺達は宿を出てギルドに向かった。


 ギルドには六つ半に到着した。

 が、ギルド前に兵士が見える。

 どうやら、打合せの為にギルドに寄ったようだ。

 俺達二人は邪魔にならないように、横に外れて待機する事にした。


 その時だった。ギルドからゼムさんの大声が聞こえてきた。

 

「いくら国に認められている勇者と言えども、やって良い事と悪い事があるぞ!」


 あの温厚なゼムさんの怒鳴り声にハッとする俺達二人。

 

 中からはその後にドタン、バタンと音が響いて、女性の悲鳴が聞こえた。


「キャアーーッ! マスターッ!」


 そこで俺とサヤは昨日検証が済んでいるスキルを発動。

 誰にも気付かれずに中に入る。


 すると、俺と一緒にこちらに召喚された五人の若者が、それぞれ受付嬢を抱き抱えていた。


 ゼムさんは床に倒れている。どうやら気絶しているようだ。


 俺はサヤと頷きあい、若者に近づいてその手を強く叩いて受付嬢を奪い返した。


 若者達は恐慌状態になる。


「うわっ! 痛ぇっ! 何だ、一体!」


「ぎゃっ! 何だ、何だ、何か居るのか?」


「サトル、気配察知しろよ!」


「してるけど何も居ないんだよっ!」


「くそっ! 取り敢えずこんな所は早く出るぞ!」


 そう言って若者五人は慌ててギルドを出て行った。

 幸い、ついてきていた兵士達はマトモだったようで、東門に向かって行った。


 そこで俺とサヤも一旦ギルドから出て、誰も居ないのを確認してから、スキルを解除した。


 何食わぬ顔で再度ギルドに入る。


「お早うございます。うわ、ゼムさん! どうしたんですか? 大丈夫ですか!?」


 そんなジト目で俺を見ないでくれ、サヤ。

 大根なのは俺自身が良く分かっているんだから······

 心の中で泣きつつも演技を続ける俺。


「さあ、ポーションです。飲んで下さい」


 俺はゼムさんを助け起こし、ポーションを飲ませた。


「くそっ! あいつらはどこですか?」


「あいつらって? 俺達は今きたんで事情が良く分からないんですが?」


 俺の言葉にキョロキョロと周りを見るゼムさん。

 そして、受付嬢達が居るのを見てホッとしている。


「良かった、君達も無事だったんだな」


「は、はい。彼らは突然、痛みを訴えて、私達から手を離しました。そして、気味悪そうにしながらギルドを出て行きました」


 一人の受付嬢がそう答えた。

 

 ゼムさんは、

 

「やつらはちゃんと山に向かったんだろうか?」


 と独り言のように言うので、

 

「俺達がギルドに入る前に、東に向かう兵士を見ましたよ」


 と俺は伝えた。


「そうか、それなら山には向かったんだな」


 ゼムさんは安堵してそう言った。


 俺はゼムさんに聞いてみた。


「一体、何があったんですか?」


「あいつらは、依頼を遂行する代償に受付嬢達を差し出せと言ってきたんです。そんな事は出来ないと、突っぱねたんですが、実力行使に出られましてね。腐っても異世界人だな。元とは言えA級冒険者だった私が何も出来ずに殴られて気絶してしまいましたよ」


 そう言って自嘲気味に笑うゼムさん。


 そうしている間に志願者のC級以上の冒険者がギルドに集まってきた。

 俺達二人を入れて総勢二十八名だ。


 気持ちを切り替えたゼムさんから、指示が伝えられた。


「皆、朝早くから有り難う。昨日の募集時にも言ったが、今から山の麓まで行って、兵士達が討ち漏らして、尚且つ町方面に逃げてきた暴力ベアーに対処してもらいたい。よろしく頼む。全体のリーダーとして私も同行するから、落ち着いて対処してほしい。では、出発しよう!」


 そして、俺達は移動を開始した。

 

 


 


 


 


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